スマホを渡しただけなのに
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:和田のりあき(ライティング・ゼミ日曜コース)
「パパも放っておいて悪かった。正直よくわからんかったから。でもアカンことはアカンねん」中学2年生のとき、娘がLINEでのトラブルに加担した。そのときの説教の冒頭。自分でも意外だったけど、娘を説教しようとして始めたのに、口からでたのは娘への謝罪からだった。
娘がスマホをほしいといいだしたのは、中学校に上がって間もなく。クラスや部活での友人関係が増えて、友だちのスマホ普及率があがっているときだった。「だって、みんなもってるで!」「みんなって誰や?」ありがちなやりとりだ。今のティーンにとって、スマホがどれほど必要なものかも理解しているつもりだった。同時に多くの保護者同様、私たち夫妻にも不安があった。スマホを与えたことによる悪影響だ。1年半、親はさんざん抵抗した。
結局娘にスマホを与えたのは中学2年生の夏。きっかけは娘のいちばんの親友がスマホを持ったこと。結局、親も子も周りに影響されるのだ。それまで真に受けなかった「みんなもってる」を親も追認した形だ。すっかり会話の減った思春期長女との会話を、スマホというプレゼントをきっかけに取り戻したいという欲が自分にまったくなかったかと言えば嘘になる。
娘にスマホを与えるに当たって、3つだけルールを決めた。中学生用のフィルタリングをすること。ロック画面のパスワードをパパママに教えておくこと。使うのはリビングのみで自分の部屋には持ち込まないこと。そして3つのルールに違反したらスマホを没収すること。親子で定めた3つだけのルールだけどそれを娘が守ることには正直、あまり期待はしていなかった。おそらくすぐに破って没収することになるだろう。それをきっかけにまた娘と対話ができる。没収すると言っても一時的なもので、しばらくしたら(3日後とか1週間後に)お説教と供にまた返してやることになるだろうと思っていた。特に使用場所については守れず自分の部屋に持ち込むだろうと思っていた。
ところが、娘はそれから半年間、ルールをよく守った。長女が自分の部屋にいるときは、スマホは必ずリビングの充電器のところにあった。だから、スマホについてとやかく言うこともなく、半年間が経過した。娘にしてみれば、2年近くねだったスマホがやっと手に入った。これを没収されたくはない。うざいパパからとやかく言われるよりは素直に従っておいたほがいい、という判断だったのかもしれない。LINEもママやママ友とつながってもパパとは直接つながらなかった。それどころか、朝のおはように対しても生返事だし、何を聞いても「ふつー」と答えるようになった。アテは外れた。
事件が起こったのはスマホを与えた半年後のことだった。LINEによるトラブルだ。それは中学校の多くの生徒を巻き込んで、担任の先生から各保護者に電話がかかるという事態になるほどの大事件だった。和田家も担任の先生とお話させていただいた。保護者として子どもがトラブルに加担したことを謝罪した。その夜、久々に娘に説教をした。思春期特有の反応でパパとほとんど会話をしていなかった娘。私もそれをいいことに、娘との対話をさぼっていた。話せばお互いに腹が立つ。娘はパパと話すのが面倒くさいしうざい。私は娘の反応が薄かったり無視したりすると腹が立つ。じょじょに薄まっていた関係性。そんな中で久々に娘と膝詰めで話す機会。そして始めた説教の最初の言葉が「パパも放っておいて悪かった」だった。そのあと今回のトラブルの経過を娘から聞き出し、それが巻き起こした影響をこんこんと説いた。私が怒ったのは娘が軽い気持ちでやったことが、他人の傷を広げたこと。それを興味本位でやってしまった点についてだった。
スマホ、SNSのトラブルは複雑だ。自分もSNSをしていて、危ういと感じたことがあるし、それを他人に指摘いただいたこともある。その複雑さ故に子どものスマホ使用方法に踏み込むことに及び腰になることもある。でも「アカンことはアカン」とはっきり伝えた。娘は神妙に聞いているようだった。中学2年生は自分のやったことのアカン部分を自分で理解している。でも友達関係のノリでやってしまうこともある。それも含めてスマホを使いながら自律する力を身につけてほしい。そんなことを伝えて説教は終わった。
説教の後、娘と私の関係性はほんのちょっと近くなった。朝晩の挨拶に返事があるようになったし、パパ好みのテレビ番組があるときは教えてくれるようになった。口調はつっけんどんだけど、説教をした真剣さが伝わったのかもしれない。もはやスマホを使わない生活には戻れない。パパママもどっぷりとスマホを使って生活している。パパと娘の間をつないでくれたスマホに感謝……とは言わないけれど、スマホのおかげてがっつりと話せたことも確かだ。
1年後の現在、娘は受験生。知らない間にスマホを部屋に持ち込むようになっていた。大丈夫か? 娘。とパパは心配していると言うことだけは伝え続けようと思っている。たとえどれだけウザがられようとも。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/62637
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。