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今日、何食べる?


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記事:遠藤淳史(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「昨日の晩御飯何食べた?」
 
この質問は、いつ聞かれても答えるのに時間を要する。
食べる行為自体が生活に染み込み過ぎて、よほど特別なディナーを食べたような場合でも無い限り、すぐに思い浮かべるのは難しいと感じる。覚えてない。
 
もはや、生きるために食べているようなものだ。
食べなければ死ぬから食べる。人間という一動物としての本能。
歯磨きやトイレに行くのと同じで毎日のルーティンに等しい。
 
けれども私は「「昨日食べた物語」ならすぐに答えられる。
昨日どころか1週間前、1ヶ月月前でも答えられる。
 
最近食べた物語で非常に心に残ったのは「ボヘミアン・ラプソディ」だ。
散々話題にもなっているので知らない方は少ないだろう。クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの人生を描いた作品。誰もが知るスーパースターである彼の挫折と栄光、そして仲間との絆が観る人全ての胸を打つ。未見の方はぜひとも劇場まで足を運んでほしい。
 
さて、つまり物語を食べる=映画を観ることとして解釈したのは、
私にとって映画を観ることが、食べるのにも等しい行為だからだ。
 
食べることは生きること。
と、よく耳にする。確かにその通りだ。
 
炭水化物、脂質、ビタミン、カルシウム、ミネラル……etc。私たちは食べることで毎日身体に必要な栄養を取り込み、健康体を維持できる。
しかし、アンバランスな食事を続けたり、栄養素が偏っていたりすると、身体は不調をきたしたり、疲れが取れにくくなったりする。
 
けれど、最近よく思うのだ。
 
身体的な健康と
精神的な健康は全くの別物ではないかと。
 
生命を維持する上で必要な身体的健康、そのための食事はおそらく誰もが毎日無意識的に
摂取しているだろう。
 
では、精神的健康はどうか。
心の隙間を埋めてくれるもの。拠り所となる場所。
何が精神的な健康をもたらすかは、人の数だけ答えがあり、一概に決められるものではない。
 
私にとってはそれが、映画を観ることなのだ。
映画を観る、つまり物語を食べることで内面の健康を保っている。
 
だが食事と同じように毎日欠かさず鑑賞しているわけではない。
毎週1,2回、映画館へ足を運ぶ程度だ。
 
この映画館というのが肝で、私は毎回1800円払って作品を観る。
高いと思うかもしれない。確かに、いや間違いなく高い。日本の映画料金の高さは世界でもトップクラスだ。アメリカの平均的な料金は6~7ドル、日本円でおよそ700円前後。
そりゃあ人々の映画離れも進むのも納得がいく。
 
けれども私はお構いなしに映画館にお金を貢ぎ続けている。
それは、映画館という空間が特別だからだ。
 
個人的な意見として、映画を楽しめるかどうかは、
「没入感」に大きく依存すると思っている。
 
「没入感」とは、読んで字のごとく、どれだけその作品にのめり込めるかどうか。
スクリーンの向こう側まで自分の意識を持っていけるかどうか。
 
これが大きければ大きいほど、映画は「観る」から「体験する」に変化する。
映画館という環境は、映画を「体験する」フェーズに昇華させるために存在するものだと私は考えている。
 
所詮映画は作り物で、事実を基に制作されていたとしても創作物には変わりはない。
そして日々新しい作品が生まれている。そのためエンターテイメントとして消費されるのは違いない。
しかし、それこそ食事と同じで日々のルーティンとして消化されているのは味気ないと思う。
 
物語があるということは、背景となる時代があって、多様なバックグラウンドを抱えた人物が存在する。フィクションだとしても、その2時間弱の時間だけは確かに生きている。この世の中に存在している人物だ。
 
例えドラマティックな結末や劇的なエンドロールを迎えなかったとしても
生きてさえいればそれぞれの人の中に物語は無数にあるはずで
その中のほんの一雫をこぼれないように、大切に、慎重に掬い上げて
映画という、かたちあるものとして残されたストーリーは
何物にも替えがたい輝きを放っているような気がする。
 
生まれた以上、自分の人生以外は最後まで全うできないけれど
誰かの人生をたった2時間弱でいつでも、何度でも擬似体験できる。
スクリーンを1枚隔てるだけで感動や興奮のドラマが約束されている。
それを目一杯味わえるのは映画館という空間あってこそだと思う。
 
人情や人生の機微に触れる瞬間。
目には見えないけどそういったものを映画の中に見つけた時に、
大きなカタルシスを感じて多幸感に満たされる。それが明日への活力や希望になったりする。
つまり心の栄養となる
だから私は物語を食べることをやめられない。
来週末も私は映画館へ足を運ぶだろう。
 
私にとっては物語を食べることが生きることなのだ。
 
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2018-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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