お荷物社員だった私が、ライターに転身した話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:けんもつ(ライティング・ゼミ土曜コース)
「勉強ができることと仕事ができることは別物だからな」
新卒で入った会社の上司から言われ、学生時代からずっと信じてきたものが壊れた。
初めて配属された日のことをよく覚えている。
4つの課が一緒に入ったフロアには、30名近くの人がいた。
1人ひとりの顔を見渡しながら、「色々覚えて、早く皆さんのお役に立てるようになりたいです」と挨拶した。
1年目までは、先輩のMさんがメンターをしてくれた。
Mさんは入社7年目の女性。子育てしながら働く、いわゆるワーママだ。仕事のスピード・気遣い・効率・提案力……何を取っても優秀だった。上司はいつも「Mさんの働き方をお手本にするように」と言っていた。
Mさんは明るくて、人柄も抜群だった。一緒に焼肉ランチに行って事務所に戻ると、私に「ファブリーズかけて」と言いながら、わざとセクシーな素振りで上着を脱いで見せた。私はケラケラ笑いながら、Mさんに向かってファブリーズをした。
入社して1年が経ち、2度目の4月がやってきた。Mさんは旦那さんの転勤の都合で、東京から遠く離れた地方へ引っ越すことになった。
大勢の人に惜しまれ、Mさんは退職していった。
Mさんと一緒にやった仕事を、今度から1人で行うことになる。Mさんの仕事も引き継いだ。
私はケアレスミスが多いので、データ入力にいつも間違いがあった。忘れっぽいので、やるべき業務の抜け漏れがあり、後日発覚してトラブルになったこともある。
自分のミス自体もつらいが、周りから白い目で見られている気がするのが1番つらかった。
トラブルが発生すると、「どうせまたあの子じゃないの?」と、他部署の先輩がコソコソ話す声が聞こえた。
私はMさんみたいになれなかった。
職場であまり口を利かなくなった。日常生活でもミスが多くなり、その度に自分を責めた。1番ひどい時期は、買い物でレジに物を置いた後、支払いをしないまま店を出ようとした。料理をしていて野菜がうまく切れないと、台所にうずくまって号泣した。
このままではマズイと思い、上司との個人面談を希望した。
個室に通されたものの、何を話せば良いか分からず、ただ泣きながら「どうして採用されたか分からないです」と告げた。
上司は呆れたように、「勉強ができることと仕事ができることは別物だからな」と言った。
良い大学に行き、良い会社に入れば、将来は安泰だと思っていた。だから頑張って勉強して、自分が納得できるレベルの大学に入ることができた。だけど新卒で入った大手企業では、私はまるで使い物にならない。
どうして? 学生のうちは、テストの点数が高いこと・成績が優秀なことが良しとされたのに、社会人になったらそれが全く通用しない。
じゃあ学校に通う意味って、勉強を頑張る意味って、なに?
こっそり精神科へ通い、抗不安剤を飲みながら働いた。職場の人はもちろん、両親や友達、当時の恋人にも相談しなかった。「仕事が全然できない無能社員」と、人にバレるのが怖かったから。そんな生活を続けて8ヶ月、勤務中に涙が止まらなくなり、休職を余儀なくされる。
働くことや人生に自問自答する日々。
私は何ができる? 何になれる? 何をしたらいい? どうして大学で学ぼうと思ったんだっけ? そもそも、大好きだった絵を描くことを、どうして諦めたんだっけ?
「私なんかどこに行ってもお荷物社員だ」と思い、ずいぶん長いあいだ転職に踏み出せずにいた。だけど、今は職場を変え、学生たちの進路をサポートする仕事に就いた。上司に助けられ、同期と協力し合い、なんとか働いている。
不思議なことに、あれだけ怖かったミスは「あーまたやっちゃった」で済ませられるようになった。
そして、社会人になってから初めて、周囲から自分の仕事を認めてもらえる経験をした。社内ホームページに掲載する文章を書いたとき、多くの人から反応があったのだ。
嬉しくて、学生のころ習慣にしていたブログを再開した。いくつかのライティングゼミに通い、ライターコミュニティにも参加した。文章が書きたい! とSNSで主張していたら、ご縁でライティングのお仕事を頂き、自分の文章でお金を稼げるようになった。
今、次のライターの仕事を探しているのだが、ついつい「長期的なスキルが身につくか?」「無数にいるライターの中で生き残ることができるか?」ということを基準に考えてしまう。
でも「自分が素直でいられるか・仕事を楽しめるか」を、何よりも大事にしなくちゃいけない。(私の師匠的存在の方の受け売りだが)
大企業かどうかなんて、得られるスキルがどうかなんて、そんなこと、楽しく健康に働けさえすればどうだっていいじゃないか。
私は病気になるまでこのことに気が付けなかった。せめてこの記事を読んでくださった方だけでも、「楽しく働けるかどうかを、もっと大切にしても良いんだ」と思ってもらえたら嬉しい。
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