明日、ひとりで生きられますか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:月山ギコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
18の時に家を出た私は、大学時代は親のスネを齧って生きていた。
毎月父の給料日後にゆうちょ銀行の口座にお金が振り込まれるのを心待ちにしている自分を少し情けなく思い、「早く自立しなくちゃな……」と思ったものである。
大学卒業とともに上京、社会人となり、東京には2種類の人間がいることを知った。
実家暮らしをしている人と、そうでない人だ。
“新卒”という特権を利用してどこかの会社に入社して真面目に働く、というキャリアプランがなかった私は、編集や校正など、技術的な仕事を目指していたため、薄給なのは当たり前だった。
最初に入った編集プロダクションの月給は13万円だった。当時の家賃は5万ほどで、その他生活費や食費などで毎月の残高はあっという間にゼロになった。
残業は当たり前、しょっちゅう終電を逃していたため、経費で戻ってくるとはいえタクシー代を出すのもひと苦労で、昼はコンビニの100円パンなんてこともザラだった。
別の会社では、充分な給料が出せないからという理由で実家暮らしの人を優先的に採用していた。「スタート地点から不利なのか」と愕然としたものだ。
自分は好きで上京してきたのだし、実家までは新幹線で4時間近くかかるわけだし、考えてもしかたのないことなのだが、都内で実家暮らしの人が、当たり前のようにすべてを家族に頼り、給料をお小遣いのように使い、「ひとり暮らしってお金かかるし大変だよね」という態度でこられるのは正直辛いものがあった。
と同時に、「何かがおかしい」と感じていた。
ちょうど、『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書・山田昌弘著)という本が出版されてから数年が経ち、大学を卒業して就職しても、そのまま実家で暮らし続ける独身男女の存在が注目されていた頃だった。
本当は、自活するのが当たり前ではないか。若い時に、お金も食事も充分じゃなくて苦労するのは当然じゃないか。なぜこんな惨めな扱いを受けなければいけないのだ。親が建てた家とお金で生活して、今はラクかもしれないけれど、この先困るのは自分だぞ!!
アメリカやヨーロッパの若者はみんな、18で家を出ているぞ(ビバリーヒルズ高校白書とかによると)!!
いつか毎月の家賃なんて痛くも痒くもない給料を貰えるようになってやるぅ~!!
当時はそんな風に思ったものだ。
とはいえ、ひと言で実家暮らしとはいっても人によって事情はさまざまだし、ひとり暮らししているからエライということでもない。ただ、やはり若い時、一度はひとり暮らしを経験すべきだと思う。
その一番の理由は、精神的に自立できるから。ひとりで暮らす、ということは、シンプルに自信につながる。困った時に誰かに相談したくても、誰もいなければ自分で考え、解決していくしかないから、考える力、実行力も自然と身に付いていく。
何より“孤独”というものが何なのかを知っていることは、その後の色々な場面でプラスに働いたように思う。人の痛みを感じられるようになったし、お金の大切さ、美味しいものを食べられる喜びを身に染みて感じた。お金がなくても、友人と家飲みをして朝まで語り合ったこともいい思い出だ。
もうひとつの理由は、親とのほどよい距離感である。家を出て、親を客観的に見ることで、一緒に暮らしていた時とは違う関係性が生まれるのだ。ひとりの人間として向き合えるようになったし、感謝の言葉をきちんと伝えられるようになった。
ひとり暮らしをするだけで、お金のこと、家族のこと、社会のこと、色々なことをてっとり早く学ぶことができるのだ。
結局、私は15年もの間ひとりで暮らしたが、今はこんな風に思っている。これは、「実家暮らしVSひとり暮らし」の話ではなくて、何をもって自立とするかという話なのではないかと。
親や、男や女、自分以外の誰かの恩恵を受けて何かを得たからといって、それは自身の力ではない。
いい会社に勤めている、いい家に住んでいる、ブランドものの高級なバッグを持っている。そんな外側の何かは、ただの箱だ。外側が素晴らしいからといって、自身がエライわけではない。
フォーカスすべきは、自分自身の力が何か、どこまで自立していて、どこまで頼っているか、ということ。自分ですべきところ、人に頼っていいところ。その2つのバランスが大切で、そのバランスを決めるのは自分自身なのだ。
一番怖いのは、人に依存することが当たり前になりすぎて、何か思いもよらないことが起きた時、立ち往生してしまうこと。
この先、また大震災が襲ってくるかもしれない。思いもよらないことが起きて、ある日突然家族を失うかもしれない。
独身だろうと、結婚していようと、子供がいようと、人生は何があるか分からない。そんな時、金銭的、精神的に自立しているということは、自分を助けてくれる。
まだひとり暮らしを経験したことのない人は、もしできる状況なら、期間限定でもいいから、トライしてみてほしい。自立は、人生最大のリスクヘッジになる。きっと、あなたの糧となるはずだから。
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