「いつか」というおとぎ話
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記事:丸山ゆり(ライティング・ゼミ平日コース)
「むか~し、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に……」
という語りではじまる、おなじみの昔話。
遠い昔、周りの大人がよく読んでくれたものだ。
私は、物語の入り口に、一歩足を踏み入れると、途端にワクワクし始めたものだ。
そして、耳に届く語りの声とは別のところで、こんなことを考えていた。
「むかしって、どれくらい前のことなんだろう」
「どんなおじいさん、おばあさんだったんだろう」
こうやって、頭の中で、さまざまなイメージを膨らませて、どんどんストーリーに引き込まれていったものだ。
「電気もないくらいのむかしのことなのかな?」
「おじいさん、おばあさんの髪の毛は真っ白かな?」
子どもの想像力は、とどまるところを知らない。
それと同じように、特定されていない時間で、未来を表すことばに、「いつか」がある。
この言葉は、私たちは日常どれだけ無意識に使っているかしれない。
私自身のかつての口癖がこうだった。
「いつか時間ができたら、またバレエをやりたいのよね」
どうやら、何度もこの言葉を言っていたようだった。
学生時代に習っていたバレエ。
別に上達したいわけでもなかったが、そのお稽古が楽しくてしょうがなかったのだ。
ところが、就職、結婚、子育てと目まぐるしい日々に、いつしか遠のいていたお稽古ごとだった。
何度もこの言葉を聞かされていた親友は、ある時、こう言った。
「いつかやりたいって、それ、ずっと言ってるね、あんた。私、何度も聞いているよ。それでもまだやっていないってことは、本当にバレエをまたやりたいの?」
私はその言葉で、頭を打たれたほどの衝撃を受けた。
まずは、そんなに同じ話を繰り返し言っていたんだ、という驚いた。
何度も発していた言葉だったのに、私自身が自覚していなかったのだ。
そして、バレエが本当にやりたいのか?
そう言われて、あらためてその時の自分に問い直してみた。
すると、すぐさま、「やりたい」と心が叫んだ。
親友の言葉が強く心に響いたこともあって、そこから私はバレエのお稽古を再開した。
もう20年ほど前の話だが、今でも鮮明に覚えている。
実はこの「いつか」という言葉ほど、便利なものはない。
なぜならば、その瞬間に時期を特定しなくていいからだ。
さらには、その「いつか」という時期は、いくらでも更新できるのだ。
例えば、「3ヵ月後」と特定したら、必ずその日はやってくる。
仮に今日が6月1日だったら、9月1日だ。
けれども、「いつか」と言っていて、3ヵ月が過ぎたころに、また「いつか」と言えば、その時期はまた未来へと走っていってしまうのだ。
「いつか」は、永遠にやってこないのだ。
つまり、時期をずっと先送りできる、とても便利な言葉でもある。
「いつか、英語をしっかりと勉強して、しゃべれるようになりたい」
「いつか、ジムに通ってダイエットしたい」
私は「いつか」と言って、何かを宣言した人で、それを達成した人を知らない。
もちろん、それをやりたいという思いに、ウソはないのだということはよくわかる。
ところが、なんとなく、ぼんやり夢や希望を語るかのように言うものだから、そんな未来はやってこないのだ。
「いつか」という言葉が出たときは、ある意味チャンスでもある。
本当に、それがやりたいことなのか。
そして、いつ、やり始めるのか。
それを自分に問い直すことで、動きだせるはずだ。
もちろん、やりたいことでないとわかれば、妄想だったんだと思えばいいだけである。
そこから先は、「いつかやりたいこと」リストから、そのカテゴリーは削除されるであろう。
そして、やりたいと思うことであったなら、いつから始めるかをその時に決めることをおススメする。
「いつか」という特定されない未来ほど、あてにならないものはない。
本当にやりたいことであるならば、できれば「今」、スタートすることをさらにおススメする。
私たちが、自分で扱うことができる時間は、今だけだから。
残念ながら、未来のことは誰にもわからないから。
そう、「いつか」というのは、まるでおとぎ話の世界の時間のようなもの。
それが本当にあるのか、ないのか、それさえもわからない。
あまりにもフワフワしていて、つかみどころのない世界。
どこまでも、頭の中だけで描く想像だけのものだ。
「いつか、神戸牛の美味いステーキを食べたい……」
「いつか、世界一周旅行に行ってみたい……」
あなたは、無意識にそう言っていないだろうか?
以前の私のように。
あの親友の言葉に衝撃を受けて以来、私は物事には期限をつけて考えるようになった。
そう、私は紛れもなく、「今」という時間を生きているのだから。
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