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英語の発音は訛りのスパイスをひとつまみ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:榊麻代 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「T……g…………a…………」
ちょっと声が小さくて聞こえないなぁ。
「$%&%$#*+」
今度はすごい早口でモゴモゴ言ってる。
 
私はこの春、小さい英会話スクールをオープンした。
英会話サークルにすればよかったと思うぐらい小さな学校だ。
いつものように、事務担当の私は、部屋の角で書類の整理をしていた。
ふと、部屋の反対側で行われているレッスンが気になり、耳をかたむける。
 
あれれ?
先生に質問されて答えている生徒さんたち。
答えは、ばっちり正解だ。
が、答える時は、早口だったり、小さい声だったりがとても多い。
もったいないなぁー。
発音だってあってるのに。
 
これはここだけで見る光景ではないと思う。
日本人が英語で答えなければいけない場面では、ありがちな光景。
 
英語を習いはじめた時の私もそうだった。
自分の英語があってるかどうか以前に、自分の発音が気になるし、恥ずかしいのだ。
留学したことがある友人や、スラングを混ぜて早口で英語を話す人がそばにいると、恥ずかしさはさらに増した。
自分の英語がカタカナで書かれた嘘の英語のように感じるのだ。
 
何かに似てる……
他県から引っ越して来た友人たちが見せるしぐさを思い出した。
ぽろっとでてしまった、いわゆる標準語以外のアクセントが恥ずかしいらしい。
「わ。ごめん。でちゃった」
そう言いながら話す彼女たちの方言は、私にとってはとても魅力的だったのだけれど。
 
標準語とは、NHKのアナウンサーが話すような日本語のことだろうか。
それなら、英語の標準語と言えば、クイーンズイングリッシュ?
クイーンズイングリッシュはクイーンや、ロイヤルファミリーが話される英語、BBCのアナウンサーが話すような正しい発音と文法の英語を指していることが多いと思う。
少なくても私はそう思ってきた。
今まで、何人かのイギリスのネイティブスピーカーに聞いたことがある。
クイーンズイングリッシュって何?
実は、私は1回も答えをもらえなかった。
なぜなら、彼らみんなが、大爆笑するからだ。
 
英語を習いはじめた私は、英語を勉強していくにつれ、BBC英語と、エリザベス女王の話される英語が同じでないことに気づきはじめた。
そして、昨年、Netflixのオリジナルドラマ「ザ・クイーン」を見た私は衝撃を受けた。
想像以上に、全く違う英語だったのだ。
ドラマの中のクイーンは、まず、プリーズを使っていなかった。
「Do sit down」
と、ほとんど命令形である……
一般の国民と違う立場だという一線を見せるためなのか、それは常に上から目線で、想像しているものと全く違った英語だった。
ロイヤルファミリーの英語を私がイギリスで真似して話したら、殴られるのではないかと思うのだけれど。
調べてみると、このドラマに限らず、クイーンなどを演じる役者は、発音から徹底的に練習しなければいけなかったそうだ。
 
例えば、このUKという小さい国。
この国の中にある、ロンドン、エディンバラ、カーディフ、ベルファストなどの一部の地域について考えてみる。
この4つのエリアだけを見ても、独自の全く違う発音が使われている。
そして、どの発音もイギリスの標準語と近いとは言い難い。
イギリス=ロンドンというイメージが強いが、このロンドン英語訛りも、想像を超える強烈さである。
コックニー訛りと言われる発音だ。
私は一度、ヒースロー空港で立ち往生したことがある。はじめて降りたヒースロー空港で、流れたアナウンスがこの強いコックニー訛りだったため、英語とは気がつけず、一瞬、すでにロンドンについているのにもかかわらず、自分が乗り換え地のアムステルダムにいるのだと勘違いして、何が起こっているのかわからなくなり、パニック寸前、通路に立ちつくしたのだ。
イギリスだけでも、たくさんの発音方法があるわけで、ここに、アメリカやら、オーストラリアやらを足すと膨大な数の英語の発音の種類があるわけです。
 
日本にいる、ネイティブスピーカーの英語の先生にも実は、訛りがある。
日本にいる英語の先生訛りだ。
日本人にわかりやすく英語を話しているうちに身につく、英語の発音。
この英語の発音は、英語圏では、評判が悪いと、彼らは嘆いていた。
 
私たち、日本人の発音は?
当然日本語訛りの発音である。
よく言われるのが、フラットな発音で、RとLの区別がつきにくい。などなど。
ご指摘もごもっともである。
でも、それのどこが悪いのだろう。
恥ずかしがる理由などないと思うのだ。
なぜ、ロンドン訛りがよくて、日本訛りが悪いと思ってしまうのだろう。
なぜ、英語訛りの日本語を私たちは許せて、日本語訛りの英語を許せないのだろう。
私たちの話す日本訛りの英語も、英語の中の1つの方言なのに。
 
私がこの日本訛りの英語を愛せるようになったきっかけがある。
ある時、ショッピングの最中に、ネイティブスピーカーの彼女がぽろっと言ったのだ。
「ジャパニーズイングリッシュってかわいいよね」
目から鱗の大衝撃であった。
え? キュートなのか!
英語圏全部の人がそう思っているとは思わないが、そう思う人がいるっていうことは事実である。
 
だから、発音は堂々と、日本的発音でいいと思う。
ネイティブ風発音に見せるために、無理に巻き舌にしなくても、唇を強く噛み締めてFという必要も、流暢に見せる早口も必要もないのだ。
私たちのフラットな発音も、世界中で話される英語の中の、1つの豊かな個性であって、料理にいれる隠し味のスパイスのように、会話をおいしくしてくれるものだと思う。
会話を色とりどり、カラフルにしてくれるスパイス。
スパイスなんだから、堂々と会話にふりいれるべきだよね?
 
話を戻すと、私の作ったこの英会話スクールでも同じ。
みんなが、大きな声で堂々と答えられるようになるといいなぁと思う。
様々な個性のあるスパイスが、複雑に混ぜあった美味しいカレーのような学校、そして、日本になるといいなぁと思うのです。
 
 
 
 
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2019-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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