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歩き方で性格が変わる?!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:野村明子(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「皆さんの思う、良い姿勢をしてください……はい。ありがとうございます! そう、そういう姿勢になりますよね。でも、ちょっとだけ違うんですよ」
 
その、ウォーキングのクラスは、地域のコミュニティ主催のものだった。平日の午後、役所の上の鏡のついた部屋で、2時間程度、15人位の単発の講座。2時間で、何かが変わるとも思っていなかったし、他と比べて多少割高に見えた受講料に、特別な期待をした訳でもなかった。なんとなく、参加した。
 
講義は、姿勢をよくすることから始まった。先生に、良い姿勢をしてください、と言われて、皆、ぐっと胸をはって、やや顎を引いて、背筋を伸ばす。
 
しかし、これが、違うのだそうだ。
 
言われてみると、確かに、いわゆる胸をはった良い姿勢らしき姿勢は、長く続けると、疲れる。体に負担がかかっているということだ。正しい姿勢というのは、背骨がまっすぐな状態なのだそうだ。壁の前にかかとをつけて立った時に、背中に手が入る隙間がないくらい、背中がぴったり壁につく、姿勢だ。
 
コツを言葉にすると「骨盤を立てる」ということになるという。最初は、なかなか背中が壁につかないが、しばらくやっているとわかってくる。骨盤を立てる、というのも、少しずつ感覚がつかめてくる。誰もがすぐできるわけではない。エレベータに乗った時なんかに、壁を背中につけて練習してみてくださいという。
 
その、しゃんとした正しい姿勢というのが、なんと慣れてくると、力を抜いて背中を丸めているより、楽なのだ。背骨がちゃんと体を支えてくれているという、感じだ。教わるまでは、軽く猫背でちょっと気だるそうな感じが自分らしいと思っていた私が、背筋を伸ばすようになったことで、性格まで颯爽としたような変な気持ちだった。
 
正しい姿勢の次は、左右のバランスを整えるストレッチだった。当日の持ち物は、手ぬぐい1枚。先生に言われて、皆バッグから手ぬぐいを出して、スタンバイする。
 
足を肩幅に開き、手ぬぐいを肩幅に持ち、バンザイするように上にあげる。爪先立ちでまっすぐな姿勢をたもち、120数える。このストレッチのために、鏡のある部屋が選ばれたのだ。
 
これがまた、簡単そうで、意外と難しい。皆、トトトっと右に左によろめきながら、なんとか120数える。結構、きつい。できるだけ高く、そしてできるだけ力をかけて手ぬぐいを左右に引っ張りつつ。肩のストレッチ、なのだろうか。
 
終わって、皆、息をついている。しかし、鏡をみて驚く。店舗で、証明写真を撮るたび、肩の高さの左右差を何度も直され、肩の高さが合ったかと思うと、顔が傾いていた私の、何度も試みたものの、結局左肩でしか鞄を持てないために左肩の方が高い私の、肩の高さが、たった120カウントで、揃った。
 
一晩寝れば、また元に戻ってしまうだろうと思っていた。次の日の朝、シャワーを浴びたあと、洗面台の鏡をみて、再び驚くことになるとは思いもよらず。なんと、左右の肩の高さは、揃ったままだった。
 
良い姿勢、左右差を整えるストレッチ、ときて、いよいよウォーキングだった。かかとから踏み込み、足の外側を後ろから前に体重移動することで、膝をしっかり伸ばしきってから、次の一歩を出す。
 
しかし、最も重要なのは、そこではない。足の置き方、だった。モデルのウォーキングってどのようなものかと聞かれた時、「一本の線の上を歩くように」というのは、思い当たる人も多いだろう。しかし、もう一つポイントがある。そこが、最も重要なのだけれど、それまで、雑誌の記事などでも、言及しているのを見かけたことがなかった。公然の秘密なのだろうか。
 
それは、つま先は外に向けること、だった。
 
一本の線の上を動いているのは、かかとだけだ。つま先を外に向ける、と聞くと、ガニ股を思い浮かべるかもしれないが、立って全身写真のポーズをとる時のことを思い浮かべて欲しい。つま先を外に向け、片足を半分ほど引く。そうすると、膝の隙間もできず、脚がまっすぐできれいに見える。その状態を、歩いている間、ずっと保てるということだ。膝の内側を少しこするようにしながら、次の一歩を出す、というと分かりやすいだろうか。かかとが一本の線上を離れないことも、重要だ。離れてしまうと、まさにガニ股。逆に、男性は、そのようにつま先を外に向けて、かかとを少し離すくらいの足幅で歩くと、力強く見えてよい、というわけだ。
 
しかし、それまで、つま先をまっすぐ前に向けて歩いていた私にも、つま先を外に向けることは、少し意識するだけで簡単にできたので、内股気味の方でも、大丈夫だと思う。ぜひ試して欲しい。つま先をまっすぐ前に向けたままで、一直線上を歩くのは、トレーニングをつまないと難しいようで、逆にかかとが離れてしまい、実はそこまで美しくない。また、つま先を外に向けて踏み出す歩き方は、まっすぐよりバランスも取りやすいので、姿勢をまっすぐ保つのも、苦にならない。ハイヒールでも同じだ。
 
それから10年。この文章を書きながら、今一度、鏡の前に立ってみる。左右の肩の高さは同じまま。今も、バッグは左肩にしか持てないのに。当時、講座のあと、数回試しただけなのに。驚異の肩ストレッチだ。
 
楽しくなくても、笑顔を作ることで、気持ちもつられて楽しくなる、と聞いたことがあるけれど、姿勢も同じだ。背筋を伸ばして、廊下を颯爽と歩く。姿勢の良さを、何人もがほめてくれた。姿勢がいいだけで、正々堂々としていられる。歩いているだけで、気分がよくなってくるので、軽く微笑みさえ浮かぶ。さわやかで、清らかな自分、を自然と保てる。
 
そうして、名実ともにまっすぐ歩く人生は、とても気分がいい。
 
 
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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