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身の程知らずは得をする


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記事:YUKA(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どうしてもアメリカに行ってみたいんです!」
 
大学2年の夏休み、十代最後の夏、私はアメリカ、シアトルに1か月半の短期留学をした。留学をしてどうなりたいとか大きな志があったわけではない。
ただ、私はアメリカでの学生生活というものに憧れていた。
将来なりたい職業は「保育士」。特に語学の堪能さが問われる職業でもなく、資格を取るために語学を学ぶ大学に入る必要もなかった。けれど、私はどこかでずっと「アメリカに行きたい」と思っていたのだ。それも、ただ旅行などで行くのではなく、学生生活を送ってみたかった。
 
私の海外ドラマ好きは小学校の頃に見ていたアメリカのドラマ、「フルハウス」に始まった。そして、中学生、高校生になってドハマりした海外ドラマが「ビバリーヒルズ高校白書」「ビバリーヒルズ青春白書」だったのである。ビバリーヒルズの華やかな高校生活、パーティ、プロム、めくるめく恋模様。
ドラマの登場人物たちは自分よりも少し年上ではあったが、田舎の中学生、高校生であった私は「アメリカの高校生ってなんて楽しそうなんだろう。いいなぁ」と憧れをもってみていたのだった。
アメリカ学生生活を送ってみたかった不純な動機である。
 
大学生になり、大学の国際交流センターで見つけた一枚のポスター。夏休み期間の短期留学の募集。
語学留学ではなく、アメリカの大学のサマースクール(市民講座のようなもので学生も学生ではない人も参加できる)で、好きな科目を選んで学ぶことができ、成績に応じて留学費用を大学が負担してくれるというのだ。しかも、滞在中はその大学の学生寮で生活をする。
 
これは、アメリカで学生生活を体験するまたとないチャンス!
 
私にとっては願ったり叶ったりの内容だった。
 
大学が費用を負担してくれることもあり、選抜試験や面接もあったが、アメリカに行きたい割に英語が得意でもなかった私は、付け焼刃ではあったが猛勉強して試験をパス、面接も冒頭のセリフで(何も具体性はないものの)熱意でパスし、無事、短期留学へと旅立った。
 
どんな学生生活が待ってるんだろう? 外国人の友達(とあわよくば金髪イケメン彼氏)できるかなぁ? ワクワクしてアメリカへ行ったのだったが……。
 
甘かった。
 
とにかく英語がわからなかった。
そして、私はなぜか「社会学」の授業を受講していた。
内容は「アメリカの社会問題」。「銃問題」や「ホームレスについて」「大学生の学力低下について」等々。
一応勉強してから来たとはいえ、もともと日常会話もままならないというのに、専門用語は出てくるし、週に1冊課題図書があって本を読まなければいけなし、毎週末にはテストがあった。しかも、ジャック・バウアー似の講師の先生は素敵で優しかったけれど、書く字のクセが強くて板書がなかなか読めなかった。
 
とにかくついていくのに必死で、授業は1日1時間程度だったが、その他の時間はとにかく大学の図書館へ行って、勉強、勉強、勉強……時々昼寝、勉強。
パーティ三昧の憧れの学生生活とはかけ離れていた。
 
授業がわからな過ぎて、でも授業中にトンチンカンな質問をするのも恥ずかしかったので、授業終わりにジャック・バウアー先生のもとにこっそり聞きに行く、という毎日。
高校も大学も推薦でまともに受験をしてこともなかったので、人生で一番勉強した日々だったと言える。
 
英語がわからないのに英語でアメリカの社会学を勉強しようというのは、なかなか無謀であり、身の程知らずだった。
まずは語学学校にいって英語を学ぶことから始めればよかったのかもしれない。
 
でも、今になって思うのは、身の程知らずだったからこそできた無謀なチャレンジだった。今までにないくらい必死に何かに取り組む経験だったし、語学学校で学ぶよりも「アメリカの社会問題」を通してアメリカのことを知ることができた。
また、語学に関しても「何かを学ぶために必要だから英語を学ぶ」と「英語を学ぶこと」はその通過点になるので、見る視点も変わった。
 
今、また同じ経験をしろと言われたら、大変さがわかるからこそ二の足を踏むかもしれない。
 
身の程知らず、というと否定的に使うことが多い言葉だが、私は身の程知らずだったからこそ気軽にチャレンジし、大きな学びと経験を得ることができた。
自分の身の程を知り、チャレンジをセーブするよりも、ずっと得るものは大きい。可能性が広がるのだ。
 
何か新しいチャレンジをしようとしてに踏みとどまりそうなときは、この経験を思い出す。
自分に言ってあげるのだ。
 
「身の程知らずでもいいんだよ」と。
 
 
 
 
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2019-08-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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