私を「大人」にした、『アラジン』の重ね着けリング
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記事:Amy(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
ある日、同僚から、メールが届いた。「K様(某ジュエリーショップ)の方が、新商品のご案内にいらっしゃるので、お時間あれば同席しませんか?」。
映画『トイストーリー』にちなんだジュエリーの発売が決まった、という案内を伺ったミーティングの最後、案内をしてくれていた女性が、おもむろに一枚の紙を取り出した。「映画『アラジン』公開記念ジュエリー販売開始のご案内」と書かれている。
なんと、発売日がそのご案内を受けた翌日。しかも、購入できる店舗が自宅から15分も掛からないという好立地。この時、「運命だ……!」と少し早くなった鼓動に、思わず、頬が緩んだ。
正直、私は、ディズニーアニメの大ファンではない。見たことのある映画を数えても、両手で足りるくらいである。『リトルマーメイド』も『美女と野獣』も、未だに見たことがない。でも、『アラジン』には思い出がある。
小学校4年生の時、運動会のダンスの演目で、『アラジン』のテーマソングに合わせて、全員で踊った。かけっこの順位も、他の年のダンスの演目も、応援団をやった時のことさえ、正直もうあまり記憶がない。でも、この『アラジン』のダンスだけは、20年経とうとした今でも、とてもよく覚えている。
『アラジン』の、オリエンタルな雰囲気を出すため、濃いラベンダー色のビニール袋を4枚使って、自分たちで衣装を作った。2枚のビニール袋を筒状にして、貼り付けてズボンを作り、1枚の底とサイドをくり抜き、トップスを作る。そしてもう1枚にカーテンの布を組み合わせて、頭から背中にかけて伸ばすターバンのようなクーフィーヤも。秋晴れの暑い中、屋外で、体操服の上からビニール袋を着込んで、5分踊る。汗だくでイヤな思い出になってもおかしくないのに、とても良い思い出として記憶に刻まれている。
そんな思い入れのある『アラジン』、それをモチーフにしたジュエリー。説明を聞きながら、2枚のリングを重ね着けしている、素敵なモデルさんの写真に私の目は釘付けになっていた。青い大きめのカラーストーンの付いた印象的なリングと、ジャスミンの花の細工がついた、Vラインの女性らしいリング。青いカラーストーンのリングの説明を聞きながら「ジャスミンの頭の!」と、気づいたら口を突いていた。この時、もう「これは買っちゃうやつだ」という予感があった。
とはいえ、私は、あまり煌びやかなタイプではなく、「ジュエリー」を購入した経験はほぼ皆無だった。学生時代にプチプラでチャチなネックレスを購入したのが最後の記憶かも知れない。ジュエリーの相場もわからない。30才という自分の年齢で、どれくらいジュエリーにお金をかけるものなのか、少し悩んだ。
悩んだ私は、Googleで「ファッションリング 30歳」「ファッションリング 値段」などのキーワードで、必死に検索をしながら帰宅した。母に連絡をして、「とても欲しい指輪に出会ってしまったんだけど、お母さんはファッションリングにどれくらいのお金を掛けたことがある?」と聞いて見た。母の答えは「20万円」。「まさか!」と思った。そして「ネックレスなら33万円のを持っているよ」と続いていた。私が購入を迷っていたリングは、2本とも購入しても6万円。なんとなく「買っていいじゃん」という気になった。母は、“お金持ち”というわけではないが、「片方買ってあげるから、気に入ったのなら買いなさい」と言う。この言葉を聞いて、なぜが「いや、私が買う!」と言う気になった。
そして、迎えた翌日、発売日。ジュエリーショップに負けないように、キラキラして見えるような服を意識して選び、お化粧も念入りにし、気合いを入れた。滅多に着けない香水も着けた。「とりあえず見に行くだけ」「とりあえず試着だけ」と呟きながら、お店に向かった。心の中では「見たら買う」「試着したら買う」と、もう自分はそのリングを買うという予想がついていた。はやる気持ちに急かされて、思わず早足になる。開店時間と同時にお店に到着すると、看板を出しに来た店員さんと目が合い声を掛けられた。
「何かお探しですか?」
「『アラジン』のリングを見にきました」
そんなやりとりの後、店内に招き入れてもらった。ジュエリーショップで接客を受けるなんて、婚約指輪を買ってもらった時以来、2度目のこと。しかも、今回はひとりきり。ドキドキしながら試着すると、「なんて可愛いんだ!」と一瞬で心を奪われた。一度はめると、もう外したくない。店員さんと一緒に、いろいろな指にはめてみながら、自分の持っている他の指輪とのバランスを見て、ニヤニヤした。ワンサイズのみの商品だったが、私の両手3本の指にぴったりフィットするサイズ。気分によって、着け替えられる。2本の指輪は、どちらもアームがイエローゴールドで、ジャスミンの花はシルバー。ゴールド系の婚約指輪と、シルバー系の結婚指輪を持っていた
「私のために作られた商品なのでは?」と、少し感動した。
初めて購入した、自分用のジュエリー。何の記念でもなく購入したけれど、少しだけ高価なものを購入したから、「ちゃんとしたものを身に着けている」と思える。こんなに素敵なものを見つけて、「買おう!」と思った翌日に買えるほど大人になったんだな、と感じる。大好きな『アラジン』を感じさせるモチーフの指輪をしているという、気持ちの高まりがある。一晩という短い時間だったけれど、ここ数年のうち一番悩んだのではないかと思えるくらい頭と心を使って悩んだ分、強い愛着も感じる。
そもそも、『アラジン』の一体どこにそれほど惹かれたのか。その答えは、今でも上手く言葉にすることはできない。でも、この時に出会った『アラジン』の指輪は、間違いなく、私を幸せにしてくれる最高のアイテムになった。たかが、2本の指輪。されど、2本の指輪。これまでの私より、少しだけレベルアップできた気持ちになる。「大人になったんだ」と実感させてくれる。ただのアクセサリーとしての指輪ではない、大切なモノに出会えたのだ。
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