メディアグランプリ

恐ろしいボードゲーム


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記事:男泣きのゆうこ(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「次の休みに帰ってくるのを楽しみにしています。一緒にカタンをしよう」
私の帰省を心待ちにしている父からのメッセージを見て、「また付き合わされるのか」と苦笑してしまった。
カタンとは、「カタンの開拓者たち」という大ヒットボードゲームのことである。各プレイヤーの領土からサイコロの目の数によって採れる資源を駆使して、自分の新しい領土を広げていくゲームだ。
運と戦略のバランスが絶妙で、面白い。世界で2000万個売れているだけある。1プレイ1時間はかかるこのゲームにハマってしまったが最後、廃人化は免れない。
この恐ろしいボードゲームに、私の父と母はハマってしまっているのだ。
普段は2人で暮らしているので、私と弟が帰ってきて4人でプレイできるチャンスを心待ちにしている。
 
 
そもそも、この恐ろしいゲームを家に持ち込んでしまったのは、この私だった。
 
 
弟の大学入学祝いに、下宿に遊びにきた友達と遊べるようにと、世界中で大人気だというこのゲームをプレゼントしたのだった。
弟は、この恐ろしいゲームの面白さに気づいてしまった。
ほどなくして、神戸の実家にも導入されたのだ。
 
 
「カタン」は、人数が増えれば増えるほど難易度があがる。人が攻めていない領土をいかにとりにいくかが勝負だからだ。
だから、4人という人数でやるのが一番面白い。私の家族は4人家族なので、ピッタリなのである。
 
 
「カタン」は戦略だけじゃなく、サイコロの目という運の要素もゲームに大きく絡んでくる。戦略だけで決まってしまうゲームだと、強い人が毎回勝ってしまったり、途中で大きく差がついてしまったりするので、途中で白けてしまうものだ。
でも、「カタン」は最後まで中々勝負がつかず、運でも勝ててしまうから毎回サプライズがあって面白いのだ。
これもまた、私の家族にピッタリの特徴であった。
 
 
最初ゲームをした時、すでに頭の回転が遅くなってきている父と母は、たまに運良く勝てることもあるものの、ほとんど子ども達に惨敗であった。
特に弟は、理系で頭がキレるタイプなので、こういう戦略的な思考が試されるゲームがお得意である。
私はあまり勝ち負けに拘らないタイプなので、「楽しければいっか!」と思いながら気楽にゲームに参加していた。
父と母は大事な局面でお間抜けなミスをしてしまうため、策士である弟に負かされてばかりだった。2人は悔しがっていたが、弟は「こんなやつ相手にならん」と思っているのか、涼しい顔をしていた。
 
 
そして、私と弟が帰ったあと、父と母は2人で夜な夜な特訓をしていたのだ。
夜遅くまでやりすぎて、次の日寝不足で仕事に集中できないこともあったらしい。いつの間にか、休みの日の前日しかやらないというルールが出来ていた。
 
 
そして、どっちが勝った、どっちが弱いとかいう、心底どうでも良い報告を、よくメッセージで送ってくるようになった。
 
 
私は正直びっくりした。
私の記憶の中では、父と母はあまり仲が良くなかったのだ。
 
 
私が家を離れ、弟が家を離れる時、母は父と2人だけの生活になることを嫌がっていた。
泣かれたこともあった。
 
 
だから、2人きりになった親が上手くやっていけるのかどうか、不安に思うこともあった。
母のことを可哀想だと思うこともあった。
 
 
そんな2人が、仲良く遊んで楽しんでいるなんて。
でも、所詮仲良くしているのは、ゲームをしている時だけだろうと思っていた。
 
 
しばらくして久しぶりに帰省した時、私はまたびっくりした。
前よりも、父が母に優しくなっていた。
「こうしてあげないと、お母さんが可哀想じゃないか」そんな父の言葉を聞いたとき、絶句しそうだった。
父が母に味方したことなんて、今まで何回あっただろうか。
 
 
勿論、この恐ろしいボードゲームが全ての要因ではないだろう。
久しぶりに2人きりで過ごす生活となり、お互いのことを思いやるようになったのかもしれない。
ただ、きっといくらかは、この恐ろしいボードゲームのおかげだったのではないかと思うのだ。
やはり、世界の大ベストセラーなだけある。
 
 
今では、「カタン」以外にも、色々なボードゲームが実家に導入されている。
帰省する度に、何か新しいものが増えていっている気がするのは気のせいか。
 
 
ただ、毎回絶対に、他のゲームはそこそこに、「カタン」に熱中してしまうのは、このゲームに何かしらの中毒性と思い入れがあるからに違いない。
 
 
これを読んでいるみなさんに、「カタンの開拓者たち」を是非オススメしたい。
 
 
ただ、まんまとハマって夜な夜な遊び、あなたの生活が廃人化してしまったとしても、私は責任はとれませんのでご注意を。

 
 
 
 
 

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2019-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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