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インディー・ジョーンズ、理想のレンタルルームを探しに行こう!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:林沙都(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
『講座の開催リクエスト、ありがとうございます! 』
ポチポチとスマホを操作しながら、お礼の文面を書いて送信ボタンを押す。
 
“メールを送信しました”
その表示を見ながら、私はちょっと頭を抱えていた。
 
相手は、私の講座を受けたいと言ってくれている。
本来であれば、飛び上がって喜んでも良いはずなのに。
でも、ある問題に直面していた私は、正直少し困っていた。
 
私は数年前から、占い師として起業をしている。
占いと言っても、色々な占術がある。
タロットカードを使った占いや、オラクルカード、手相、四柱推命、色々な分野がある。
 
その中で、私はルノルマンカードと言う、マニアックな占いを扱っている。
 
ルノルマンカードは、ここ数年日本で注目を集めてきてはいるけれど、正直まだ一般の人には浸透していない占術だ。
 
一般的な人には浸透していない……とは言うものの占い好きな人ほど、マニアックな占術に興味を持つもので、ありがたい事に一定の人には需要があった。
 
ルノルマンカードは、その名前から解るようにトランプ位の大きさのカードを使う占いだ。
 
カードを使った占いをする利点として【店舗を持たずに鑑定が出来る】と言う所がある。
カードひとつあれば、カフェやホテルのラウンジでお茶を飲みながら鑑定をする事が出来るのだ。
それに、最近ではSNSが普及しているおかげでZOOMやLINEといったものを使って、鑑定する事も出来る。決まった店舗が無くても、私がいる所が鑑定場所になるのだ。
 
ただ、それは『鑑定』や『お茶会』の時に通じる手だ。
 
これがセミナーとなるとそうはいかない。
一回で数時間かかるセミナーを、カフェやホテルのラウンジで開催するのは難しい。
 
『店舗を持っていない』事が、セミナーを開催する際にはネックになるのだ。
講座を開催する機会が増える度に、私はこの問題に直面する事になっていた。
 
一番初めに借りたのは、とにかく可愛いレンタルスペースだった。
白基調の内装でシャンデリアまであるその場所は、女性の方が多く参加するセミナーを開催するには最高の場所だった。
 
ただ残念な事に、このレンタルスペースは時間貸しをしていなかった。指定の枠は3時間と決まっていた。私の講座は3時間。準備や片付けを入れると4時間は必要だったのだ。その為には2枠を借りるしか選択が無く、合わせると結構ホットなお値段になった。
 
この事がネックになり、私のセミナー会場を探す旅が始まったのだ。
まるでインディー・ジョーンズがアーク(聖櫃)を探しに行くかの様に。
 
次に借りたのは、難波のレンタルスペース。
 
駅から徒歩1分。利便性は最高!
20人近くは入れるスペースで、広さも十分だった。
 
ただ残念な事に、このレンタルスペースは上階にあるフィットネスクラブのロッカーが立ち並ぶ奥にあった。ドアを開ける度に、そこはかとなく汗の臭いが漂ってきた。
難波と言うだけあって、ホットなお値段もネックになった。
 
インディー、ここに私のアークは無かった……
 
次に借りたのは、心斎橋に近いレンタルスペース。
 
心斎橋から歩いて5分程。利便性は最高!
レンタル料金も、心斎橋駅にあるとは思えない位、良心的なお値段だった。
 
ただ残念な事に、このレンタルルームは若者に人気のエリアの中にあった。若者……と言っても、ちょっとやんちゃな人達が集まるエリアだ。その為、周辺も入っている建物も、アウトローな雰囲気満点だった。
 
インディー、ここに私のアークは無かった……
 
次に借りたのは、梅田のレンタルルーム。
グランフロント大阪の側にあり、立地は最高! お値段も良心的だった。
 
ただ残念な事に、このレンタルルームにはエレベーターが無かった。
4階にあるレンタルルームまで、階段で上がるしか方法がない。
しかも、1階のラーメン店が仕込むとんこつの臭いが、階段に充満していた。
 
講座の為に持ってきたカードや参考本、お客様に提供するお茶で重くなったスーツケースをズルズル引きずりながら、階段で4階を目指す。滴る汗が、朝から気合いを入れて巻いた髪と化粧を落としていった。
 
インディー、ここに私のアークは無かった……
 
さまよえる私が、次に借りたのが中津駅から1分。梅田からも徒歩圏内にあるレンタルルームだった。
 
これだけ、個性的なレンタルルームが続いたのだから、いっそのこと色々借りてブログのネタにしよう。諦めモード全開で、借りた部屋だった。
 
今回はどうだ!
 
ドキドキしながら、ドアノブに手を掛ける。
 
ガチャ キィィィ
 
透明なガラスに『うめきた会議室』と大きく書かれた扉が、ゆっくりと開いていく。
 
最初に目に飛び込んできたのは真っ白な壁だ。
4帖半程の小さな部屋は、四方を白い壁で囲まれていた。
 
入り口右手の壁にはホワイトボード、反対の壁には小さな黒い時計がひとつ備え付けられていた。
 
そして部屋の中央には白い会議テーブルが2台と黒い椅子6脚が置かれていた。
 
一歩、二歩……。部屋の中に入ってみる。
抱えていた荷物をテーブルの上に置くと、私は目を閉じて深呼吸をする。
始めは小さく。次は大きくゆっくりと息を吸う。
そこに、汗の臭いもとんこつの臭いも漂ってはいなかった。
 
あぁ……!!! やっと、やっと見付けた!
吐き出す息と共に、感動がじわじわと湧き上がってくる。
 
インディー、やったわ! 私のアークを見つけたわ!
立地やコスパ、諸々の難敵をなぎ倒して、理想のレンタルルームを見つけ出したのよ!
 
小さくて、シンプルで、清潔な空間。
その中央で小さくガッツポーズを決めて、私のレンタルルームを探す旅は終わりを告げた。
 
でも……
私は知っている。
 
きっと近いうちに、このレンタルルームは手狭になる。
その時にまた、新たなレンタルルームを探す旅が始まるのだ。
今度は、どんな旅になるのだろう。
 
 
 
 
***
 
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2019-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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