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事前準備がその後の運命を左右する

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記事:大井さち (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どこにも仕事がない……。」
2011年12月末、私は南オーストラリア州の州都・アデレードで焦っていた。季節は真夏。すでにブドウの収穫時期が来ているにも関わらず、どこにも求人はなかった。
仕事探しの旅に出発したのは11月で、もうかれこれ2か月近くも無職期間を過ごしていた。その時点での移動距離は3700km。旅資金はすでに半分しか残っていなかった。
オーストラリアに来た目的は、オーストラリアならではの仕事を経験しながら、稼いだお金で一人前に生活をすることだった。だが、準備不足が私の首を絞めた。
 
ワーキングホリデービザとは、通称「ワーホリ」と呼ばれる、海外で働くことができるビザで、日本人であればオーストラリア、カナダ、イギリスなどの14か国のビザを申請することができる。中でもオーストラリアは日本との時差も少なく、現地に日系企業も多いため、日本人にとってはメジャーなワーホリ国だ。
 
人々がオーストラリアを渡航場所に選ぶ理由は他にもある。それは時給の高さだ。
オーストラリアの最低賃金は、2019年8月現在、最低時給は19.43ドル(私が渡航した2012年11月から2014年11月は約17ドルだった)。特に、フルーツや野菜の収穫は常に人手不足なので、さらに時給が上がる。マンゴーの収穫など、過酷な作業に至っては時給30ドル~40ドルということも十分にあり得る。
私が何を狙っていたかというと、アデレード付近で行われるブドウの収穫だった。時給は25ドル前後で、木が低いので女性でも収穫ができる。漆の仲間のマンゴーとはちがい、肌がかぶれるなどの健康被害が少ないのも魅力的だった。
と、ここまではしっかり調べていたのだが、肝心なことは知らなかった。それは、農作物はいつ実るかわからないということ。通常なら12月中旬から人を雇い始めるブドウ収穫だったが、2011年~2012年のシーズンは1月になってもブドウの収穫は始まらなかった。
 
私は自分の運のなさとリサーチ不足に憤りを感じた。なぜなら、このブドウの収穫のために最北端の町・ダーウィンから3700kmも移動してきたのだ。思い返してみれば、ダーウィンから南に下る間も、自分のリサーチ不足を感じ、後悔したことが何度もあった。準備不足はその後の運命を左右する。お金が底を尽きる=旅の終わりだったため、このときほど事前準備が大切だと思ったことはない。
一体、私が何をしでかしてしまったのだろう? どうすればよかったのだろうか?
 
①季節があることを知らなかった。
オーストラリアは広い。東西南北、中央部、どこにいるかで気候はまったく異なる。旅のスタート地点、ダーウィンは熱帯地域で、雨季と乾季、2つの季節がある。私がダーウィンに到着した11月はちょうど雨季に入る時期で、仕事の紹介所でさえも長期休暇に入る。ただ、4月からは乾季になるので、ダーウィンには人が集まり、求人も増える。ダーウィンは国立公園に囲まれたリゾート地なので、チャンスがあれば、ぜひ乾季に行くべきだ。労働目的であろうと、旅行目的であろうと。
 
②ハエが人間を襲うことを知らなかった
南オーストラリア州のアデレードに行こうと決めた私は、ダーウィンから南に1420km進んだところにあるエアーズロックに向かった。11月のエアーズロックは真夏だ。日中は50℃を超える日もある。そのことを知らなかった私は、ここでもリサーチ不足に足元をすくわれた。
50℃を超す砂漠には水も食べ物もない。そこで、オーストラリア名物のハエが人にたかる。ツアーガイドいわく、ハエはとにかく水を求めて、人間の目に向かって飛んでくるという。
周りを見ると、ちょうど養蜂家がつける顔カバー付きの帽子をかぶっている人々がいた。暑さを除けば実に快適そうだ。エアーズロック含め、アウトバックと呼ばれるオーストラリアの荒野に行くときはぜひ持っていくべきグッズの一つだろう
 
③エアーズロックの一番の見どころを知らなかった。
そして、情報を知らなかったことに加えてお金をケチったことから私は最大のミスを犯した。それに気づいたのはツアーの数日後だった。
たまたま滞在先の安宿で仲良くなった旅人が「ウルルで一夜を過ごさないなんて、信じられない! あそこに行く目的は、満天の空を見ることだよ」と教えてくれたのだ……。
ウルルは砂漠の中にあるので、夏でも夜は冷える。むしろ、夏はウルルのベストシーズンではないだろうか。偶然にもベストシーズンにウルルにいたのに、私は本当に見るべきものを見逃してしまった。
 
もし今からオーストラリアに旅行する人や働きに行く人がいる場合、しっかり調べた上に潤沢な資金を持って旅に出ることを心から勧める。
その後の私はというと、失敗を生かして留学カウンセラーの仕事を得て、帰国後は編集者としてオーストラリアの生活のノウハウ本を出版し、悔しさや学びを生かすことには成功した。
ただ、もしもう一度オーストラリアに行くチャンスに恵まれたときは、反省を踏まえて、ベストな時期に、ベストな状況で旅をするだろう。
 
 
 
 
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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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