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人を励ます人「太宰治」【池口ノート】〜ライターズ倶楽部フィードバック担当として〜


 戦中に発表された小説『津軽』の最後を、太宰治はこう締めくくっています。

 「さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行かう。絶望するな。では、失敬」

 刊行された1944年といえば、終戦の前年。一読者としては、そうした社会情勢が太宰を故郷へ向かわせる動機となったのではないかと思ってみたり、開戦後すぐに書かれた『十二月八日』の最後、妻子に対して「僕には、信仰があるから、夜道もなお白昼の如しだね。ついて来い」と威勢よく放った一言と対比させたりと、さまざまな思いを巡らせるわけです。

 そういえば、私は大学時代、毎年6月の桜桃忌になると、三鷹にある禅林寺に……というように、ファンなりの楽しみ方を語れば切りがありません。ただ、私が今回お伝えしたいことは、太宰文学の楽しみ方ではなく、文字には人を励ます力があるということです。

 冒頭の言葉がその好例で、当時の世情であったり、小説の内容とはまったく関係なしに、発表後80年近くにわたって、多くの読者を励ましてきたのではないでしょうか。

 これは何も小説に限った話ではなく、ノンフィクション、あるいは映画やドラマのあらすじは記憶にないけれど、鮮明な記憶として残っている一節というのが、多かれ少なかれ誰にでもきっとあるはずです。

 私は「言葉」というのは、それを生み出した作者すら意図しない場面、思いもよらないタイミングで、見ず知らずの人を元気づけることがあると思っています。

 もちろん、それは簡単なことではなく、「他人の眼差し」とでも言うべき視点から、ストーリーを組み立てる必要があるわけですが、そうしたチャレンジは、職業作家だけの専売特許ではありません。

 糾弾、批判、告発、反論等々、言葉の効用は、人を鼓舞すること以外にもあります。それでもまずは、言葉を紡ぐ最初のステップとして、自らの経験をベースに、人々をはっとさせ、あるいは勇気付けるような文章が、天狼院書店のライターズ倶楽部から1つでも多く生まれてほしい。そうすることで、書き手の人生だけでなく、読み手の人生に、少しだけかもしれませんが、よい影響を与えることになるのではないか。そういう気持ちをもって、私は講評を担当しています。

【プロフィール】池口祥司(いけぐち・しょうじ)
1984年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。
2008年、株式会社PHP研究所入所。第一普及本部東京普及一部(書店営業)、企画部、特販普及部を経験後、ビジネス出版部にて7年間累計100冊以上のビジネス書の編集に携わる。2018年、天狼院書店に参画。
担当した書籍に『経営者になるためのノート』(柳井正著)、『YKKの流儀』(吉田忠裕著、出町譲取材・構成)、『アマゾンが描く2022年の世界』(田中道昭著)、『大人はもっと遊びなさい』(成毛眞著)、『挫折力——一流になれる50の思考・行動術』(冨山和彦著)、『史上最強のメンタル・タフネス』(棚橋弘至著)などがある。


 

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