ひと夏の経験
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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佐藤薫 (ライティング・ゼミ平日コース)
「私、友達がいないんで仲良くしてください」と彼女は言った。
「僕、仕事以外で誰とも交流がないのでお仲間に入れてください」と彼は言った。
この夏、たった1か月だったが、私は不思議な体験をした。
ことの始まりはインターネットを通して仲良くなった人からのお願い。
「仕事や普段の生活以外で話をしたり、飲みに行く仲間を作りませんか? 自分はリーダーとか向いていないので、お願いできませんか?」
正直、なんで私が作らないといけないの? と思ったがその時は軽い感じで了承してしまった。インターネットの某サイトに「一生付き合える本物の仲間を作りませんか?」なんて熱いメッセージを載せたら、あっという間に30人近くの人から連絡がきた。
最初は皆、低姿勢でお仲間に入れてくださいと丁寧なメッセージが送られてくる。
しかし、その先のやり取りは続かず、グループに実際に入った人は12人ほどだった。
そして、この12人で実際にグループを作って、いざ、仲間らしきものを作ろうと始動してからが更に大変だった。
普段の12人の交流はネット上のグループの書き込みで行われた。
私は実生活の友達もインターネットを通じで知り合った人も友達には違いがないと思っていた。しかし、インターネット上で集まった人たちは私が思っていた人たちとかなり異なっていた。最初の時点ではそのことに全く気が付かなかった。
何が違うかというと、基本的に寂しい人たちが多かったということだ。
誰かと関わりたい、友達が欲しいと強く思っている人たちで心の中は寂しいでいっぱいだった。
心の真ん中にぽっかり穴が開いていて、その穴を必死でうめようとしている人たち。
私は関わりたいと近づいてきた人、自分のことを何でも話してくれる人を邪険にできない性格だ。
最初は、知り合って間がない、しかも実際に会ったことがない人が自分の悩みを打ち明けてくることに驚いた。しかし普段のリアルな生活の中で、友達から相談されたら誰もが親身に相談に乗るだろう。私もそれと同じように会ったことがない彼らの相談に乗った。
電話がかかってきて、なかなか話を終わらせることができず最長5時間42分も話を聞いてあげたこともあった。
話終わったあと、元気な声になったと感じて聞いてあげてよかったと心から思った。
そして、初めての顔合わせの飲み会。グループのリーダーの私は皆を盛り上げようと店の予約から場を盛り上げることから、本当によく頑張った。
実際に会ってこれで本当に友達の第一歩、相手も友達だと思ってくれているだろうと私は思っていた。
ところが、そうはいかなかった。
飲み会は盛り上がったが、そのあと些細なことでグループを抜ける人が続出したのだ。
直前までみんなと楽しくグループ上で盛り上がっていたのに、突然、何も言わずに辞めてしまう人。
挨拶をしたのに挨拶を返してくれなかったと怒り出す人。
グループのリーダーだからといって会話の全てには目を通せない。誰かが発信したことの全てを拾うことは不可能なのだが、発信した本人は無視されたと思い込む。
ここらへんで、私も何かおかしいと思っていたのだが、衝撃的な出来事が起きた。
私の行動で気にいらないことがあったらしい一人からいきなり電話が来て怒鳴られた。その時はただ、ビックリして思わず電話を切ってしまった。
翌日、相手も冷静になっているだろうと、連絡をしてみても相手は電話に出ることはなかった。以前、5時間以上かけて親身になって相談に答えていた相手だったから、本当に悲しかった。
本当の仲間を作ろうという呼びかけに集まった寂しい人たちは友達になる前に自分が受け入れられていないと思い込んで関係を断ち切る人たちが多かった。
実生活で友達を作るためには時間をかけて努力するという行為が必要だ。しかし彼らはその手間をすっとばして、相手の懐にいきなり入ってきて嫌なことがあったらすっぱりと切る。
1か月という短い時間で何度もそういう場面にあって、私は自分で作ったグループだけれど、引き継いでくれる人に託してやめてしまった。ただただ、なんでだろう? という思いだけが残った。
この話でインターネットで知り合った人は友達になれないと思わないでほしい。この話にはまだ、続きがある。理解できない人たちは多かったが、そんな中でとても仲良くなった人もいる。その人たちは決して寂しいとは言ってなかったし、多分どこで出会っても友達になれる人のような気がする。今は実際に会って交流する友達になった。
この1か月の体験を通して、私は今いる自分の友達を大切にしようと心から思った。
一生の友達なんてインターネットで募集しようと思っても絶対にできない。何度も会って話して仲良くなって時には言いたいことを言って喧嘩して。長い時間をかけた友達の間には例え嫌なことがあっても簡単には関係を切れない絆ができる気がする。
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