ある朝、口が開かなくなった
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記事:横田初見(ライティング・ゼミ日曜コース)
息子が3歳になってすぐ、保育園に預けて仕事を始めた。
毎日、子供を預けてフルタイムの仕事。急いで帰宅すると、食事の用意や子供の世話をして、
何とか早く布団に入れると、それから仕事関係の勉強。
久しぶりの仕事復帰、それも仕事関係の資格を取得してから初めての仕事復帰で、頑張らなくちゃという気持ちで毎日突っ走っていた。
まだ気力と体力、そして今よりも若さがあったからなんとかなっていたけれど、それが崩れるのは意外と早かった。
3か月ほどして、区立の保育園に入園が決まって、私の仕事もほんの少しだけ慣れてきたことを感じていた4月のある朝の事だった。
朝起きたら、私の口が開かなくなった。
顎が開かない。
後から顎関節症という名前を知ることになったのだが、朝ご飯の納豆も、大きな口が開けられないので食べられない状況。
仕方なく、苦手な歯医者に行くことにした。
初めて行く近所の歯医者は、ご夫婦で診療しているようで、まず男性の先生が診療してくれたのだが、その後、奥様の女性の先生が来て、何か最近変わりがなかったか聞かれた。
私が子供を預けて仕事を始めたことなどを話すと、
「大変だけれど、掃除なんてしなくても生きていけるから」
と言われ、なんで今、そんな話をするんだろう、完璧主義だった私は、仕事も掃除もきちんとしないなんて無理だなあ、とか思いながら、その女性の先生の話を聞いていたのを覚えている。
診断は顎関節症。
自己催眠のような自律訓練法というのを教えてくれたが、特に何か変化したわけでもなく診療は終了。
その日をきっかけに、私の健康オタクの日々が始まった。
結局、顎は時間が解決するしかなかったのだが、常になんとなく痛いというのが続き、
他の歯科医院では顎の痛いところにレーザーを照射され、
骨盤と顎関節で人間はバランスを取っているという整体では骨盤矯正、
接骨院では手袋をした接骨院の先生が口の中に手を入れて顎の位置を無理やり動かしたり、顎をヘッドホンのような器具で固定する健康グッズなんて物も買ってみたり、
もちろんマウスピースも持っていたし、とにかく顎が楽になると聞くといろいろと試してみることにした。
口は開くようになっていたし、顎の痛みもなくなりつつあったが、それよりも夜、歯を食いしばって寝ているようで、朝起きてもスッキリした目覚めではなくだるさが残り、くいしばりから、肩こり、そして、たびたび頭痛に悩まされていたのである。
だるさが続くので、近所の内科で甲状腺の診断をしてもらったが、結果は何も悪くなく、先生に、「そのだるさは、鬱病ではないですか? 」と言われた。
その先生の言葉は、原因が物理的なものと思っていた私にはメンタルが関係しているという新たな攻略を考えなければならないことが発覚したわけで、すこし複雑だった。
それまで法律関係の勉強しかしてこなかった私だったが、新しい視点を持てたことで、自己啓発の本を読み、コーチングとか心理学、産業カウンセリングなど、ひとの心の事に興味を持つようになっていった。
産業カウンセラーの研修の中で、人の体に触れすこしだけ揺らすことや、タッピングをする、というものがあった。家族以外の体を触ったことなどない、事務系サラリーマンの自分には、それはとても新鮮な出来事で、身体が緩むと心も緩む、という新たな発見をすることになった。
そして、身体を自分で緩めていく方法として、ヨガをやったり、気功を習ったり、呼吸法、最後にアクセスバーズを生活に取り入れるようになって気がつくと、だるさや頭痛もほとんど感じることは無く、喘息でひ弱な子供時代から比べても、一番体力があるのではというほど、この歳にしてからだが楽になっている。
そしてなにより一番感じているのは心の軽さ。
いろいろ回り道をして症状がよくなった後だったが、家庭用の医学の本にこんな内容の事が載っていた。
「頭痛、腰痛、肩こり、便秘下痢、その他、診療所や病院で見てもらっても原因のわからないそれらの症状はストレスからくるもの……」
それを見た時、私の症状はまさにそこだったんだ、と納得した。頑張りすぎていた。完璧主義の性格で、常に緊張状態を創り出し、そして、それを無視していた。
そして身体の悪いところを切り張りして良くしようとしていたが、原因に目を向けないので、身体が一生懸命教えてくれていたのかもしれない。
ビタミン剤とエナジードリンクのダブル飲みは、残業続きの新入社員のころ、会社の近所の薬局でオススメされてから、忙しい時期の必須アイテムだったし、頭痛の鎮痛剤は一週間単位で飲んでいたし、必ず化粧ポーチに薬一日分を常備していた。
今は、それもなくなったし、たまに鎮痛剤のお世話になることはあっても、連日飲むこともなく、もちろん薬を持ち歩くことはしていない。
こういう話は私の周りではよく聞く話で、どこにいっても治らなかった不調が「よく笑う、よく食べる、よく寝る」という当たり前のことをしたら、元気になったとか、深い呼吸を習慣にしたら元気になった、とか。
よくある、病気自慢のおばちゃん話ではなく、健康になった自慢話ができるって幸せだなってつくづく感じる。
最近はお医者さんも予防医学に力を入れている先生もいるし、本人が納得してどんな治療をするか説明を丁寧にしてくれる医者もいる。そして言葉で病気を辞めさせるコーチもいる。
病気をどう治すか、それと同時に、病気にならない方法、そのために自分が無理をしていないか、過度なストレスや緊張が続いていないか、自分自身に目を向けるのは健康でいる心構えだと感じている。
乳がんになった友人が言っていた、「病気になる前と同じようにしていたらまた同じように病気を創り出すから、考え方や行動を、いろいろ変えることにしたの」
ある朝口が開かなくなったことで、人生が変わるほどのいろいろな気づきを得ることができた。
そう、掃除なんかしなくても人は生きていけるって言われたことが、今なら良くわかる。
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