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防災意識はおじいちゃんの遺産だった


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記事:池田和秀(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私の妻は、防災に対する感覚が強い。
夜寝ているときに地震の揺れを感じると、どんな真夜中でも目を覚まして「地震だ!」と声をあげる。
そして「あなた!ドアを開けて!」と声がかかる。
私は寝ぼけ眼で起きあがり、ぼーっとした頭で寝室の入り口を開ける。
 
妻と暮らし始めた頃は、眠たさが妻の声を上回り、布団から体が動くことはなかった。
そんな私を、妻は「信じらんない!」とあきれ、「意識が低い」と諭してきた。
 
正直なところ、私は内心で、「うるさいなあ、神経質だなあ、ちょっとした地震で起こすなよ」と思い続けていたのだが、今では、地震の揺れを感じると、片足は眠りの世界に居ながらも、反射的に体が動くようになった。
妻に長年にわたって躾けられた賜物だ。
 
なぜこれほどまでに妻は防災に意識が向かっているのか、その理由を最近まで私は知らなかった。
 
妻は、地域で福祉の仕事に携わっている。
その中で地域防災の取り組みをしたり、学校の総合学習で震災教育を担当したりしてきた。専門家の人たちと発災時にどう行動すべきかを訓練するワークショップに取り組んでいたことも知っていた。
3.11の時には、所属団体からの派遣で、被災直後の福島県に入り、2週間にわたって支援活動をしていた。
 
だから、妻は防災の知識が豊富だし、その知識をもとに家でも行動しているのだろうと思っていた。
妻の災害への意識は、仕事の中で身につけた職業意識だと思っていたのだ。
 
けれども、実はそうではないらしい。
妻の防災意識の根っこにあるのは、おじいちゃんが繰り返し語ってくれた言葉だというのだ。
 
妻のおじいちゃんは明治生まれの偏屈な職人で、一緒に暮らしていたにもかかわらず、会話をした記憶がないくらい愛想のない人だったらしい。
 
だが、このおじいちゃんから、妻は震災の備えだけは叩き込まれた。
まだ幼かった妻に、おじいちゃんは何度もこう言ってくれた。
 
「箪笥が倒れても大丈夫なところに頭(枕)を置いて寝ろ!」
 
「枕元に次の日に着るものを置いておけ!わかったか!」
 
おじいちゃんは自分自身が関東大震災を経験していて、「うちの家と隣の家がぶつかるようだった」と、その恐怖を語ってくれたそうだ。
 
妻にとっては、これが小さいときから繰り返し聞かされてきた日常だったのだ。
けれど、しばらくして、「これはどこの家庭でも同じではないのだ、こんなことばかり言われるのは我が家が変わっていたのだ」と気づいたという。
 
妻の防災意識は、この「変わった」おじいちゃんのおかげだったのだ。
 
おじいちゃんの言葉を守る妻の行動によって、私の家では、家具の配置は震災を想定したものになっている。
「ここにこの棚を置けたら便利だなあ」と私が思っても、妻によって「地震で倒れてきたら部屋の入り口が塞がれる。その案はダメ」と却下される。
 
もちろん、寝室には、寝ている自分たちに倒れてくるような家具は一切置かれていない。
居間でテーブルを囲んで座る場所も、地震が起きたときにどうなるかを想定して、家具が倒れてくるだろう場所には誰も座らないようにしている。
 
妻にとって、地震への意識は、おじいちゃんによって身体に叩き込まれたものなのだが、それだけに、まわりの人たちの無防備さに驚くという。
仕事上、地域で高齢者の居宅訪問をしていても、家具に取り囲まれた部屋の中で寝ていたりして、地震のことを考えない暮らし方をしている人があまりに多いらしい。
 
結婚当初の私自身もその一人だったと振り返って思う。
今では、妻のおかげで、多少なりとも「もし大地震が来たら」と意識することができるようになった。
 
我が家では転倒防止器具を使っているが、それだけでは十分ではないことも、今では知っている。大地震が来たときには、倒れるまでの時間稼ぎをしてくれるものにすぎないからだ。
できれば、家具の配置や自分たちが過ごす場所を「地震が起きたら」という想定で、シミュレーションし、レイアウトしてみる。
窓ガラスも割れることを前提にする。破片が降り注ぐところにだれか寝ていないだろうか。
また、避難するときに玄関までの道をふさぐものが置いていないだろうか。
大地震が夜中に起きたときに、暗闇の中で逃げることができるだろうか。
このように頭の中でチェックすることが、自分と家族の命を守ることにつながる。
 
妻は言う。
「おじいちゃんが遺してくれた防災の知識は愛そのものだと思う。だってそれは『生き残れ』ということだから」
 
あなたの家族や愛する人の生命を守るにはどうすべきか、「もし大地震が来たら」と頭をめぐらせてみていただければと思う。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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