メディアグランプリ

夫婦のあり方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ぼくは君の思うような旦那さんにはなれない」
あの頃はまだ、子供も小さくてテレビや育児書で見るようなステキなファミリーになれるのではないか? と一人で張り切っていた私。
理想のママになりたい。
休みの日には家族で公園に遊びに行くもの。
旦那さんは家事や子育てをてつだってくれるもの。
主人に要求ばかり。
いつも「何でやってくれないの? 子供や家族が大事じゃないの? 他のパパはやってるよ」と彼を責めてばかりいた。
家庭の中はギクシャクというか、今思うと私だけがイライラして不満ばかりだった。
そんな私に主人が言い放ったのが、「ぼくは君の思うような旦那さんにはなれない」
という言葉だった。
「ぼくは僕だから」という主人は結婚して20年以上たつ今もあくまでもマイペース。
最初の内は、それでも少しずつ手伝ってもらうようにすれば、そのうちやってくれるのではないかと淡い期待も抱いていたが、
「雨が降っているけど、洗濯物を入れてくれた?」「気づかなかった」
「今日は帰りが遅くなるけど、適当に冷蔵庫の中にあるものを食べてくれる?」「大丈夫、待ってるから」
わざとやっているのか? こんな感じの旦那にいつしか私は何かを頼むのをやめてしまった。そうっ諦めたのだ。
諦めてしまえば腹は全く立たない。
友達にこの話をすると、ひどい旦那だねと言われることも多いが、決してそうではない。
うちの旦那さんはとても心が広くてとっても優しい。
ただ、人より気づかないだけなのだ。
そして、彼の名言がある「掃除もしないで良いし、ご飯だって作れなければ毎日、お弁当を買ってもいい。それよりも君が笑っていてくれるのが一番だから」
家事を完璧にやりたいと思って毎日イライラしていた私に言った彼の言葉。
この言葉どおり、結婚してから今まで家を片付けろとか、ご飯をちゃんと作れとか、言われたことは一度もない。
それどころか、友達と飲みにいくのも自由、何か習い事をするのも反対しない、私のやることに文句を言ったことが一度もないのだ。
私は彼の言葉にとても気が楽になった。私がただ、笑っていたら家族みんなが幸せなんだと言われ、頑張りすぎるのをやめて疲れたときは家事全部を放棄する。
「私の幸せが家族の幸せ、それって私が太陽ってことだよね」と堂々と手を抜く。何も期待されないのは、とっても気が楽だ。
この話をすると、誰もが「良い旦那さんだね。うらやましい」という。
「結婚生活がうまくいく秘訣は何?」と聞かれたら、
「あきらめること」と私は答える
お互いがお互いのことをあきらめて、何も期待しないということは、それぞれが自分自身のありのままの姿でいられる。
じゃあムカつくことはないの? と言われそうだが、決してそうではない。
私がいないと食べたものは流しにそのまま放置されているし、雨が降っているのに洗濯物は取り込まれていないし、正直、帰ったら「はあ~」とため息が出てしまうこともある。
けれど、この旦那のマイペースさに救われたことも多いから仕方がないなとあきらめる。
例えば、母の病気が深刻で毎日のように入院先へお見舞いに行っていたころの話。看病疲れで家に帰ってきたときでも、決して私を特別扱いしない。あくまでいつも通り。
「お母さん、長くないかもしれない」という私にその時は悲しそうに聞いていても、深刻な顔で下を向く私の横でテレビのお笑い番組を観てガハガハ笑っていたりする。
薄情? いえいえ、これが本当につらい時に助かった。
私にとっては、どんな状況でもマイペースな主人が側にいると安心できて救われた。
子供の喉に大玉の飴が詰まって、どんどん顔が紫色になった時もパニックで固まる私に対して冷静に背中をたたいて吐き出させてくれた。
包丁でざっくりと手を切って、あまりの出血で気絶しそうな私の手を縛って病院へ連れて行ってくれた。
主人がいなかったら今頃どうなっていただろうかという事が多々あるのである。
そんな主人が今年、単身赴任になって平日は家からいなくなり週末だけ帰ってくる。なんだか寂しい。とっても寂しい。
最初は「平日は自由だ」なんて思っていたけど、羽を伸ばす気持ちにはなれない。主人が帰ってくる週末には絶対に予定は入れられない。ごちそうを作って待っている。
ふっと、私は毎日、主人が家に帰ってきて初めて一日が終わったというくつろいだ気持ちになることに気づいた。今は週末にならないとホッとした気持ちになれない。
20年間、あきらめながら家族になっていった私たちは今やかけがいのない存在になったようだ。主人がどう思っているかはわからないが、毎週、きちんと家に帰ってくるところをみると多分、そう思っていると思う。
あきらめるは私たちの一番良い夫婦のあり方、家族としてのあり方だ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/97290
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事