For me はFor youである ~今日から「与える」をやめます~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:伊藤 千里(ライティング・ゼミ日曜コース)
友達が「ちょっと距離を置きたい」と言ってきた。
とても珍しいことだ。ちゃんと言葉で伝えてもらえるのは。
でも、友達が離れていくのは私にとって珍しいことではない。
私にはずっと付き合っている友達がいない。
いじめられていたとか、仲間外れにされていたとかそういうことではない。
仲が良いとか、ちょっと相談事があるときに誘える存在がいないのだ。
ずっといないわけではない。時々はいる。
たまにできた知り合いと、何回か食事や買い物に行くことはある。しかし、いつの間にか連絡がこなくなり、フェードアウトしていくのがお決まりのパターンだ。
だから私にとって、友達が離れていくのは珍しいことではない。
小学生のときから、勉強ができた。運動神経も抜群。
立候補して、クラス委員や学級委員長になった経験多数。
頼まれれば友達の勉強を見てあげたり、一輪車に上手く乗れない子につきっきりでアドバイスしてあげたり、委員としてクラスや学校全体のために働いたり。
大人になってからだって、職場でめんどくさい仕事を進んで引き受けたり、飲み会やイベントではひたすら盛り上げ役にまわったり。
ずっと、誰かの役に立つように、誰かに与えられるような存在でいることを心がけてきた。
私が、こんな風に「与える」生き方をしてきたのには理由がある。
だって、与える側でないと私は愛してもらえないからだ。
私には二つ年上の兄がいる。
兄は、学校の成績も悪かったし、中学の時にはグレて、家族に心配をかけるタイプの人だった。
でも、長男だから、家族はみんなお兄ちゃんが大事だった。
誕生日が近い私たちは、誕生日祝いを合同でするが、ケーキを選ぶ権利があるのはお兄ちゃん。
おばあちゃんは頻繁に、私を一旦お兄ちゃんの名前で呼び間違える。
家族はみんな「お兄ちゃんはどこいった?」という。
お兄ちゃん、お兄ちゃん。
みんなお兄ちゃんばっかりだ。
私は、どうしたらかまってもらえるだろう。
どうしたら、お兄ちゃんより愛してもらえるだろう。
そうか、お兄ちゃんより目立てばいい。
お兄ちゃんより、賢くて、なんでもできる子になればいいんだ。
こうして、
人より優れていないと私は愛されない
与える側でないと価値はないから、人は離れていく
常に誰かの役に立っていないと、私の存在は無駄なんだ
そういう「私」ができあがっていった。
でも、そういう私で生きてきたのに、どうだろう。
得たい結果と現状が全く一致していない。
だって、私の側には誰もいないじゃないか。
こんなにも努力して、
こんなにも人の役に立っていて、
こんなにも与えられる能力があるのに。
そうすればするほど、人は私から離れていく。
誰も私を誘わない。
頑張って盛り上げようとしているのに、私の周りは話が盛り上がらない。
尽くしているのに、好きな人にはいつも振られる。
与えているのに、役に立っているのに、みんな離れていく。
「距離を置きたい」と言ってきた友達は、その後しばらくして「話がしたい」と言ってくれた。
彼女は私と距離を置きたくなった理由を話してくれた。
それは「私といるとどんどん楽しくなくなっていった」ということだった。
私は、彼女の役に立とうとし、彼女にとって価値ある存在であろうとし、彼女に与えることばかり考えていた。
彼女が離れていかないように。
でもそんな私と会うたびに、彼女は私といることが楽しくなくなっていったのだそうだ。
「私のことを信頼してくれていないと感じる」
「テリトリーに踏み込んでこられるみたい」
「私の話を聞いてくれない」
「私のことをどうにかしようとしている(操ろうとしている)と感じる」
彼女は、私に対して思っていることを全部話してくれた。
そうして私は、長年の勘違いにようやく気がつくことができた。
私の「For you(あなたのため)」は、「For me(私のため)」だったのだと。
あなたのために私は役に立っていますよ。だから側にいてください。
私はあなたに与えられる存在ですよ。だから側にいてください。
For youに見せかけた、身勝手なFor meだった。
私に会うたびに、相手はこの意図を察知して離れていったのだ。
私にもう会いたくない、うっとうしい、一緒にいて疲れる、楽しくないと相手に思わせていた。
勘違いの「For you」で、いったい今まで何人の人に辛い思いをさせてきただろう。
こんなに長い間、気が付かなかった。
自分がおそろしく残念な存在だと思った。
さて、彼女が勘違いに気づかせてくれた。
これからどうするか。
反対のことをすればいいのではないだろうか。
もう、For youはやーめた。与えるのも役に立つもやめーた。
これからはFor meで生きてやる。
相手にアドバイスしなくたっていいじゃないか。
ただ、相手を信頼してそっと見守るだけにしよう。
私が場を盛り上げようと、道化にならなくたっていい。
ゆっくり目の前の美味しい料理とお酒を楽しもう。
私がしゃべらなくたって、相手の話をただ黙って聴いていよう。
相手に合わせて嫌なことに付き合わなくたっていい。
自分が好きで楽しいを思えることだけをしよう。
与えるのではなく、受け取ることにしよう。
結局、For meが 一番のFor youになるのかもしれない。
だからもう、For youではなく、For meで生きることを自分に許可しよう。
さて、
勘違いに気づかせてくれた大事な親友に、この話を聴いてもらおう。
私のために。
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