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メディアグランプリ

「君は一人でも生きていけるよね」と言われた私


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:佐藤千恵子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「君は一人で生きていけるよね」
20代の頃、恋人からそう言われて、私は振られてしまった。
 
「一人で生きていけるけど、生きていかれへんもん!」
私はそう叫んだ。心の中で。
 
私が心の中で叫んだ言葉を紐解くとこうなる。
 
「大好きなあなたの手を煩わせないように、一人でも生きていけるくらい自立した女性になろうと思ったんだもん」
「あなたの為に努力していただけで、何でも出来るわけじゃない」「本当は甘えたかった」「あなたがいなくなったら、生きていけないくらい悲しい気持ちなの」
 
そんな気持ちを彼に言えず、言葉を飲み込み、泣く泣くお別れした。
心変わりした人を引き留められるとは思わなかったから。
 
失恋の痛手が時間とともに癒えて、いくつか恋をしたけれど、「君は一人で生きていけるよね」という言葉は、小さな棘のようにいつまでも私の心に刺さっていた。
 
そんな小さな棘を忘れかけていた時、またもや同じ言葉を聞くことになった。
同棲していた恋人に「君は一人で生きていけるよね」と言われてしまったのだ。
今回は、甘え上手な女性に彼を取られてしまうという手痛いオマケまでついてきた。
痛い失恋から10年以上経って、この言葉を聞くとは思いもよらなかった。
 
私の恋人がが好きになった女性は彼の同僚で、私の存在を知りながら、彼に色々な相談を持ちかけ、甘えまくっていた。
私は、彼から彼女の相談内容を聞くたびに、彼女に対して「そんな簡単な事、わざわざ彼に相談しなくても、自分で解決できると思うんだけどな」と思っていました。
彼女に妙な違和感を持ちつつも、「彼は信頼されてるんだなぁ」と思いました。
今、思えば我ながら、おめでたい思考回路だと思う。
彼女が戦力的に彼に甘えていたのか、無意識に甘えていたのかは分からないけれど、甘え上手な彼女に相談される度に彼は彼女に惹かれていったのだ。
私が彼にあまり甘えない分、彼女に頼りにされたのがうれしかったのだろう。
 
「君は1人で生きていけるよね」
「彼女は俺がいないとダメだから」
1番聞きたくない言葉を聞かされた。
 
「どうして、何度もこんな言葉を言われるのだろう?」
「次こそは、そんな事を言われない恋愛をしたい!」
そんなことを思っていた時にある講座を受けた。
 
それは、男性心理と女性心理の違いを学び、コミュニケーションに活かすというもの。
講座で先生の話を聞いて、私は愕然とした。
「私、やらかしてたー!」「私の愛は全然、彼に通じてなかったー!」
その場で地団太を踏んで、叫びたい気持ちになった。
 
先生によると、男性にはヒーロー願望があって、自分をヒーローとして扱ってくれる女性に心惹かれる。自分を頼りにして甘えてくれる女性がそばにいると、自尊心が芽生え、その女性を大切にしようと努力するとのこと。
逆に自分を頼ってくれない女性だと、「自分は彼女の役に立てない」と自信をなくして身を引いたり、自尊心を満たしてくれる女性の所へ行ったりしてしまうそう。
 
私が彼のため「自立しよう」と努力していたことは、彼をヒーローとして扱わない、彼の自信を奪う行動だったのだ。ああ、なんという愛の空回り。
自立するのは大切だけど、私の場合は男性の気持ちを無視した努力だったのだ。
先生の話を聞いて、「君は1人で生きていけるよね」と言って、恋人が去っていった理由がやっとわかった。なんともせつない気持ちになった。
 
それからは心機一転。私は男性に甘える練習をし始めた。
もう二度と「君は一人で生きていけるよね」なんて言葉を聞きたくないもの。
 
人に甘えるのは苦手だけど、小さなことから男性に甘えることにチャレンジしてみた。
今までは、男性が私の持っている重い荷物を運ぼうとしてくれた時に「大丈夫」と断っていたけど、「ありがとう。助かるわ」と言ってみた。
すると、男性はうれしそうに荷物をすいすいと運んでくれた。
「迷惑じゃないかな。悪いな」と心がザワザワしつつも、男性に甘える、頼るという行動をとにかく続けてみた。
そんな行動をし続けた結果、男性は女性に甘えられたり、頼られたりするのが好きだということが腑に落ちてきた。それは友人だけでなく、会社の同僚や上司も同様だった。
 
ある日、DVDを借りにTSUTAYAへ行った。借りたいDVDが高い棚にあったので、脚立を使おうとすると、折り畳みの脚立が硬くて開けなかった。
他の脚立を使おうかと探しかけた時に、隣に50代くらいの男性がいるのが目に入った。
ふと、ある思いが胸をよぎった。
「知人の男性たちは甘えるとうれしそうだったけど、何の関係性もない男性に甘えたら、どんな反応をするんだろう?」
 
「すみません。脚立が上手く開かないので、手伝ってもらえませんか」
ドキドキしながら、隣にいた男性に言ってみた。
その男性はびっくりしつつも、快く脚立を開いてくれた。
「ありがとうございました。助かりました」と満面の笑顔でお礼を言うと、男性は照れくさそうに小さく笑ってくれた。その笑顔がほんの少し誇らしげで可愛らしかった。
なんだ、男性って優しいんだな。変に気を使って遠慮するより、素直に甘えたり頼ったりする方が男性と良い関係性が作れるんだと思った。
ドキドキしたけど、ふと思ったことを実行してみて良かった。
また1つ、男性に甘えることの良さを実感できた出来事だった。
 
最近の私は、「甘え上手」と言われるようになってきた。
「甘える=相手に迷惑をかけること」という思い込みを「甘える=相手に活躍の場をプレゼントすること」と思い直し、甘える練習をし続けた成果が出てきたのだ。
今は、「悪いな」と心がザワザワすることなく、素直に甘えられるようになってきた。
「断られたら、それはそれでいい」「相手にも断る権利がある」という思いもあるから、気軽に甘えられるのだ。
40代後半になった私が甘えても、男性がうれしそうに色々と手伝ってくれるので、素直に甘えることに年齢は関係ないのかもしれない。
大切なのは、男性を信じて頼り、素直に甘えて、感謝の言葉を伝えることなのだ。
一見頼りない男性も、素直に頼って甘えてみると、思わぬ力を発揮してくれることが多々ある。
「男性が弱くなっている」と言われる昨今だけど、女性が男性に甘えることで、弱い男性も頼りがいのあるヒーローに育っていく可能性もある。今の私は、そんな風に思う。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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