メディアグランプリ

巨樹から学んだ、今いる場所で、一生懸命生きる事の大切さ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中野ヤスイチ(ライティング・ゼミ日曜日コース)
 
 
「これが……、生きる姿」
 
僕は社会人3年目になろうとしていた。
まさに、会社を辞める人が多いという時期、人生の迷路に入り込んでいた。
 
何がしたいのか、このままで良いのか、日々、葛藤していた。
仕事が嫌い!? と聞かれたら、そんな事はない。
 
やっと仕事がわかって来てきて、むしろ、無我夢中に仕事に取り組んでいた。
ただ、何かに後ろから刺されたかのように、急に不安が襲ってきた。
 
「お前は、このままで良いのか」と内なる声が僕に向かって、冷たく言ってくる。
 
僕は忘れていた、社会人になる時に、3年間一生懸命働いて、学費を溜めて、
もう一度、大学に戻って、博士課程に進むという想いを……。
 
ただ、3年も実験していないと、自分でも戻る事が難しい事はわかっていた……。
 
そんな状況の中、何を思ったのか、僕は休みの日に、一人で佐賀から博多に向かった。
 
博多に着いて、ぶらぶらと一人で、歩いていると、多くの店が入っているビルが目に入った。
その中に吸い込まれるように入って行って、気がついたら、登山道具を一式買ってしまっていた。
 
買ってしまった理由は、話かけてくれた店員さんが、登山の魅力について語っていて、めちゃくちゃカッコいいじゃん! と思って、山登りに行こうと思ったから。
 
その道具を持って、会社の人と一緒に九重連山に挑戦した。
その経験があまりにも楽しかったので、もっと色々な山にチャレンジしたいという想いが、日に日に増してきて、「屋久島」に挑戦する事にした。
 
なぜ、屋久島なのか、理由は簡単。
 
当近くの本屋さんに行ったら、屋久島特集の雑誌がいくつか置いてあって、自分の目で見てみたいと思ったから。
 
その勢いのまま有給休暇を取得して、鹿児島までの新幹線のチケットを買って、登山道具一式と縦走できるように、食料を積んで、いざ、屋久島に向かった。
 
鹿児島駅について、バスでフェリー乗り場まで行って、フェリーで屋久島に向かった。
 
屋久島に着いた瞬間に自分の計画性のなさに呆れてしまった……。
到着した時間が夕方で、急いで、今日泊まる宿を探さないといけないハメになった。
 
そして、観光案内所のおばちゃんに事情を説明して、空いている宿を聞いた。
 
「あんた、ラッキーだね、よかったよ、空いてた」と笑顔で教えてくれた。
危うく初日から、初めての土地で野宿する所だった。
 
日が暮れると屋久島は真っ暗になった……。
 
次の日に、屋久島の縄文杉を見に行く観光客に混じって、山に入った。
縄文杉までは、頑張って登れば、日帰りで帰る事ができる。
 
多くの観光客に紛れて、縄文杉を見た。
 
見た瞬間に、怒られるかもしれないが……、ショックだった。
生きているとうより、枯れているようにしか見えなかった。
自分の目が曇っていたからだろうか……。
 
屋久島は、良質な杉が育つ環境があり、太い大きな杉が育つ。
昔は縄文杉もその一本だったのだろう。
 
ちょっと残念な想いをしながら、その日は、縄文杉から少し離れた山小屋近くで、テントを貼って寝ることにした。
 
その日の夜は、普段は体験できない感覚だった。
山の中では、人は無力な存在である事を思い知らされる。
生きている気がしなかった。
 
あまりにも静かだった為、遠くの方で鳴く獣の声に驚かされたり、此処で誰かに襲われたら死ぬという恐怖が自分を襲っていた。
 
疲れもあって、いつの間にか、寝てしまった。起きたら、山小屋に泊まっている人はもう出発した後だった。
 
そんな中、木の陰から茶色い毛並みが目に入ってくる。
野生の鹿だ。
こちらに気がついた瞬間に、もうスピードで逃げていく。
 
その鹿が逃げっていた方向に行かなければいけなかった。
鹿の後を追うように、道を進んでいると、左方向に今まで観たことがないくらいの大きな巨樹が目に入ってきた。
 
その巨樹を近くで観たくなり、横の細い道を進んで行っていたが、あまりにも大きくかった為、近いと錯覚を起こしてしまっていたらしい。歩いても、歩いても、着かない。
 
やっと、その巨樹をみた瞬間に、言葉を失った……。
 
あまりにも大きくて、神々しくて、まるで、「俺は此処で、お前が来るのを待っていた」と言わんばかりの迫力があった。
 
映画の中でトトロが一生懸命大きくした木が、まさに、そこに立っているのである。
手で触ってみると、暖かくて、力強さが手に伝わってくる。
 
鳥肌が立ち、生きている事が伝わってきた。
この巨樹は、僕よりも何十年、いや何百年もこの場所で生きて、この森を守ってきた。
 
その巨樹の名前は「大和杉」、屋久島に力強く根を張り、今を生きる巨樹である。
 
こんなに立派な巨樹でも、あまり人に知られていない。
僕はラッキーだった。たまたま、目に入って、見たいと思ったから、会うことができた。
 
僕は屋久島に行き、大和杉に会えた事で、今、居る場所で自分を信じて、一生懸命生きているだけで、良いんだよ。と教えてもらった。
 
人生は偶然の連続、でも、それはすべて必然。
ただ、今いる場所で、一生懸命生きる事が大切である。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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