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「千葉の台風による断水」とは何だったのか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:長谷川高士(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「千葉がえらいことになってるんです!!」
私が参加するコミュニティーのグループメッセージにこう投稿されたのは、台風の上陸から三日目、九月十一日のことだった。
二〇一九年九月九日未明、台風十五号は関東に上陸し千葉県を中心に大きな被害をもたらした。しかしこの時点での私は事の深刻さを十分にわかってはいなかった。
 
テレビの報道量が少なかった。
いつの間についたクセだろうか。報道量で被害の度合いを無意識に計っていたのだ。
当の十一日も「内閣改造、小泉進次郎初入閣」の話題を各局ワイドショーが取り上げていた。
 
「進次郎、囲み取材とか受けてる場合か!」
「台風で千葉が停電と断水。人命が危ういのにテレビでやらないの、なんなの?」
 
SNSを検索して、ツイートされている言葉と自分の認識のギャップに驚いた。
そして私は戸惑った。
水道のプロだからこそ、違和感を覚えた。
「停電が原因で、これほど断水がひどくなるものか」と。
 
「いったい千葉で何が起きているのか」
行政が発表する情報をできうる限り自力で集めた。
復旧に全力を注いでいる被災地に尋ねるのははばかれた。
時間はかかったが、発災から十日後ようやくその輪郭をつかむことができた。
 
それは、突然病気で倒れ、収入が途絶えた人のようなものだった。
長期間入院することになり、働けなくなった人を想像して欲しい。
彼には毎月の支払いがある。
電気やガスなどの公共料金、家賃、ローンの返済、クレジットカードの支払いなど。
自動引き落としになっているので、普段気に留めることはなかった。
しかし今は収入がない。
多少の貯蓄はあるが、底をついた瞬間、支払いは滞る。
 
働けなくなったことが停電、支払えなくなることが断水をたとえている。
水道には配水池(はいすいち)と呼ばれる大きなタンクがある。
これが貯蓄にあたる。
配水池は、その多くが比較的高い場所につくられ、重力による自然流下で水を送ることができる。つまり「自動引き落とし」だ。
 
収入が途絶え貯蓄が底をついたことで、支払いが滞る。
これが一つ目のパターンの断水だ。
今回の台風被害を大きくした原因の一つが停電の長期化だった。
電柱のみならず鉄塔まで倒れるなど受けた被害は電力会社の想像をはるかに超えていた。当初「二日間で完全に復旧する」と発表された見通しは、二度にわたり訂正され、県南部では最も長いところで「停電期間が三週間に及ぶ」とも言われた。
 
停電による断水は過去にもあったが期間が短いものが多かった。
つまり貯蓄でしのげている間に仕事に復帰できていた。
配水池の大きさには限度がある。つまり今以上に貯蓄を増やすことができない。
停電の長期化には弱い。
 
この「貯蓄が底をつく断水」は周辺地域一帯に及び影響が大きい。
そこで電力の復旧が優先される、あるいは発電機を使用するなどして対処したところもあり、断水の全体からするとその割合は大きくはなかった。
たとえるなら「給与サポート付き医療保険」といったところか。
 
実は多く断水がもう一つのパターンによって起きていた。
「自動引き落とし」ではなく「コンビニ払い」のものがあったのだ。
長期入院している彼は、コンビニに行けない。
いくら貯蓄があっても、その支払いは滞る。
 
「配水池から重力による自然流下で水が送られる」と書いた。
しかし一部例外がある。
電気を使って水を送り出すポンプという装置を、配水池の先にあらためて取り付ける場合があるのだ。
例外になるのは遠い場所、高い場所、あるいはその両方だ。
水が重力として持っている勢いのエネルギーは、水道管の中を進むあいだに少しずつ弱まる。遠い場所や高い場所には届かない。
そこで弱まった場所で一旦タンクに貯めて、ポンプによってもう一度勢いを加えて送り直すということをする。この施設を加圧所と呼ぶ。
 
山間部など地域として水道局によって加圧所が設けられる場合もあれば、マンションやビルなど民間として加圧所を持つこともある。
 
自動引き落としの場合は、貯蓄がある間はしのぐことができるが、コンビニ払いは自分が動けなくなれば即支払いが滞る。
このパターンの断水は、停電したら即だ。そして電気が復旧するまで続いた。
同じ市や町でも一部の地域のみが断水しているケースはほとんどの場合このパターンだ。
 
この台風十五号による断水でわかったこと。
それは行政、住民ともに「自分のことを知らない」ということだった。
「給料の一ヶ月分くらいしか貯蓄がないので、それ以上休んだら実はヤバい」
「給与サポート付きの保険には入っていない」
「コンビニ払いの支払いがあり、それは自動引き落としにはできない」
文字通りの意味ならば知っているはずのこれらのことを、水道のこととなるとあきれるほど私たちは知らない。
 
台風などの風水害は、年々規模が大きくなり、回数が増えている。
自分のことを知り、今できることをやってみてはどうだろうか。
飲料水を備えることは、すぐにでもできる。
 
 
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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