自動車のエンジンはロケットエンジンより作るのが難しい?技術力の不思議
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記事:木原正希(ライティング・ゼミ 秋の集中コース)
「自動車のエンジンとロケットのエンジンだったらどっちが作るのが難しいと思う?」
「ロケットのエンジンでしょう。町中を走り周っている自動車のエンジンと人を宇宙まで運べるロケットのエンジンなら比べるまでもないでしょう。」
私の出身地は、三重県の四日市市。社会の教科書に出てくる公害病の「四日市ぜんそく」でおなじみの地域です。
この四日市というのはおもしろい地域です。なぜなら、お隣の鈴鹿市にホンダが誇る「鈴鹿サーキット」があり、電車で30分の距離に愛知県があるので、トヨタがあるからです。つまり、自動車産業が盛んな地域なのです。
小学校のクラスでも30人中20人以上がホンダかトヨタ系列の会社に勤めているという自動車産業に生かされている町です。
最初の質問は、私が工場でアルバイトをしているときに聞かれた質問です。
「実はロケットのエンジンよりも、自動車のエンジンの方が作るのはずっと難しいんだよ」とちょっと自慢げに語るおじさん。
「え?ウソでしょう?自分たちが自動車のエンジンの部品を作っているからそう思いたいだけでしょう」
と思わず本音を漏らしてしまいました。失礼ながら、自動車って、中古だったら15万円とかで買えるじゃん。
15万円くらいで買える製品のエンジンが何億円もするロケットのエンジンよりも作るのが難しいわけないでしょ。
そんな風に思っていました。
でも、おじさんの話を聞いて、価値観がガラリと変わってしまいました。
「いや、絶対にロケットのエンジンを作るよりも、自動車のエンジンを作る方が難しいよ」とちょっと得意げに話すおじさん。
「そんなにドヤ顔するなら早く答えを教えてくれよ」と少しイライラしてくる自分。
「じゃ、教えてやるよ。ロケットのエンジンって10基〜30基くらい作って、一番品質が良い物を間引くんだ。当然だな。ロケットって1つ飛ばすのに成功すればいいから、1つ品質がいいエンジンあればいい」
「間引くのは知らなかったですけど、まぁ、ロケットのエンジンが何百基も必要ってことはまだないですよ。でも、なんで、自動車のエンジンの方が作るのが難しいってことになるんですか?」
「鈍いな、まだわからないのか?自動車のエンジンって間引けないだろ?10万個作ったら10万個全部が正常に作動しなければいけない。しかも、10年以上の間だぞ」
「あ!そうか」そう言われて、自動車のエンジンを作る大変さに気づきました。
「自動車のエンジンって、1トンの鉄の塊を動かすだけのパワーがあるから、トラブルがあったら、映画のシーンみたいに爆発するリスクだってあるんだ。ある意味危険なものなんだよ」
たしかに、アクション映画では自動車が爆発するシーンを見たことがある。でも、現実世界で何万台と走っている自動車が爆発したことは見たことがない。
「『自動車のエンジンは、10万個作っているから、1個くらい爆発しても許してください』とはお客様には言えないんだよ。」
「製造者からしたら、10万個中の1個のエンジンですけど、その1個のエンジンに当たった人からしたらたまったもんじゃないですもんね (苦笑)」
「『宇宙産業ってカッコいい』『ロケット作っているなんてすごい』と言われるけど、自動車産業って宇宙産業と同じかそれ以上の品質で部品を作っているわけだ。しかも、その部品一個の価格は、豆腐より安いんだよ」
言われてみれば、自動車のエンジンの部品って数百以上の部品の集合体なので、1個の部品は1個の豆腐より安いです。
でも、数百以上ある部品のどれか1つでも問題があれば、そのエンジンは動かなくなってしまいます。
そう思うと、窓の外を走る自動車に感動を覚えました。
「日本の時代は終わった」「中国製品の方が性能がいい」と言われる時代ですが、やはり日本の自動車は、品質が高く、故障率が低いです。
「トヨタの自動車はメンテナンスをしなくても故障しないので、アメリカ人がびっくりした」という逸話がありますが、10万個以上のエンジンを作っても、10万個のすべてが機能する日本の技術力には感動します。
飲み会の場で、「仕事はロケットのエンジンを作っていんだ!」というと、「すごい仕事をしていますね」と言われるでしょう。
それに対して、「仕事は自動車のエンジンを作っています」と言っても、残念ながら、ロケットのエンジンほどの反響は得られないでしょう。
しかし、お伝えしてきたように、自動車のエンジンを作るということは、ある意味ロケットのエンジンを作る以上に大変な仕事です。
仕事をしていると「プロでも失敗する」「イチローだって3割しか成功しない」とか言う人がいますが、正直プロとしてはどうかと思います。
もちろん、完璧完全に仕事を行うことは難しいでしょう。でも、「10万個のエンジンを作って、その10万個が10年以上は故障せずに機能する」という高い基準を持って日々の仕事をしていきたいと思っています。
少なくとも、自動車業界の人が、そう思ってくれたおかげで、エンジンの故障の心配をせずに私たちは自動車を利用できるのですから。
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