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メディアグランプリ

3歳女子のヒエラルキー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:和田凪(ライティング・ゼミ 秋の集中コース)
 
 
「ズボンなんて、ぜったい、イヤ! スカートはく!」
娘が、毎朝、ズボンをはくのを泣いて嫌がる。
そして、スカートをはかせろと懇願してくる。
 
 
娘が、今の保育園に入園して半年がたつ。
多くの保育園が、“年齢別”保育だが、娘が通う保育園は、“縦割り”保育である。
同じクラスで、0歳から6歳まで、異なる年齢の子供たちが一緒に過ごしている。
 
 
3歳半の娘は、入園してすぐに、月齢や年齢が上のお姉さんたちの影響を受け始めた。
ひらひら・ゆらゆら・キラキラしたものをやたら好むようになった。
特に顕著なのは洋服で、毎朝、チュールのついたスカートしかはかなくなった。
チュールとは、透け感のある生地で、バレリーナが履いているふわふわのスカートと言えばわかりやすいだろうか。正直、保育園で泥んこになって遊ぶには不向きだと思うのだが、頑なにそれしかはかないという。
 
 
なぜ、娘がそんなにこだわるようになったのか、後日わかった。
保育園の部屋で、3・4・5歳の女の子たちがおままごとしている場面に遭遇した時のこと。
3歳の男の子がやってきて、一緒におままごとをしたそうに見つめていた。
ところが、リーダー的存在のAちゃんが「男の子は可愛くないからダメー!」と言ったのだ。
 
 
男の子は、「でも僕、ママには可愛いって言われるんだけどなぁ……」とつぶやきながら、悲しそうに去っていった。
 
 
そうか、男の子は可愛くないからダメなのか。「なかなか排他的な思想だな……」などと思いながら男の子を気の毒に思っていると、今度は別の女の子がやってきた。おままごとに加わりたそうにしている。今度はなんて言われるんだろう。
 
 
すると、またしてもAちゃんが、
「Bちゃんは、女の子だけど、スカートじゃないからダメ!」と言ったのである。
女の子は、ズボンをはいていた。
どうやら、彼女たちのコミュニティでは、“可愛い”か“可愛くないか”ですべてが決まるようだ。
 
 
スカートをはいたうちの娘は、Aちゃんと同じおままごとの輪の中に、嬉々として陣取っている。
ああ、うちの娘が気にしていたのはこれだったのだ。
この、“可愛い至上主義”を掲げる小さな階級社会の中で、なんとか生き抜こうと頑張っていたわけだ。
 
 
しかし娘よ……、それでいいのか。
この差別的な状況に加担している娘をみて、親としてはちょっと複雑な気持ちになる。
 
 
その後もしばらく、娘は“可愛い至上主義”にふりまわされた。
ある時は、100円ショップで大量のキラキラシールを買った。お手紙にペタペタ張り付けて、お友達に渡すためだ。キラッキラのお手紙は、“可愛い”アイテムとして人気を博し、娘はその日1日ちやほやされた。
 
 
ある時は、これまた100円ショップで大量のビーズを買った。ビーズをテグスに通して、ブレスレットを作り、じゃらじゃらと腕につけて保育園へ行った。Aちゃんに「なにそれ、可愛いじゃん」と褒められた娘は、ご満悦だった。小さな階級社会における娘の地位は、確立していったかに見えた。
 
 
ところが、季節が変わり、状況が変わった。
スカート一枚で過ごすには、寒くなってきたある日。
娘と仲の良い女の子Cちゃん(いつもとびきりおしゃれなワンピースを着ている、アイドル的存在)が、突如として、ズボンをはいてきたのである。しかも、茶色いズボンだ。その上に、ベージュのTシャツとベージュのカーディガンという、Cちゃんらしからぬ地味なコーディネートである。きっと急に寒くなったのを心配して、母親が着せてくれたのだろう。
 
 
案の定、リーダーのAちゃんが言った。
「Cちゃんは、ズボンだから仲間にいれてあげない! ここは可愛い人しか入れないの」と。
一夜にして、アイドル的存在から転落したCちゃんは、涙をうかべて抗議した。
「私だって、Aちゃんとは遊ばないもん! Aちゃんなんて大嫌い!」
 
 
私は、娘がどうでるのか、注目していた。
“可愛い至上主義”のルールにのっとれば、今日もチュールのスカートをはいている娘は、Cちゃんを置いてけぼりにして、おままごとの輪に入ることが可能だ。今なら階層の上位にくい込める。
 
 

娘は、しばらく困った顔をしていたが、こう言った。
「えー、そんなこと言うなら……、わたしは……、わたしは……、えーと……、Cちゃんと遊ぶ!」
迷って迷って迷いぬいた挙句、いつもそばにいる友達と遊ぶことを選んだ。
それまで涙を浮かべていたCちゃんも、娘に信頼のまなざしをむけて微笑んだ。
離れて観ていた私は、ちょっと感動してしまった。
 
 
女の子のコミュニティは、時として、可愛いかどうかで優劣が決まる、厳しい階級社会だ。
 
 
一度は、その“可愛い至上主義”の洗礼をうけた娘だったが、「可愛いことが、必ずしも正義ではない」ということに、どうやら気づいたようだ。
 
 

これからもきっと、理不尽な階級社会に迷い込んでしまうことがあるだろう。小学校、中学校、高校、大学……、社会人になってもカーストのようなものは必ず存在する。ママになったって、ママカーストがあったりする。容姿、学歴、職業、お金、子ども……。何かを持っているか持っていないかで、判断されてしまうことがあるだろう。
 
 

でも、できれば娘には、階級社会の上を見てうらやみ、下を見て安心するような人にはなってほしくない。その格差を生んでいる価値観が、本当に大事なものかどうか、疑う人になってほしい。
 
 
娘は、あいかわらず、ひらひら・ゆらゆら・キラキラしたものが大好きだ。
毎日、チュールのスカートをはいて保育園に行く。
けれど、ズボンをはいたお友達とも泥んこになって遊ぶようになってきた。
汚れたスカートを洗うのは大変だけれど、彼女の成長を見守りたい。

 
 
 
 
***
 
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2019-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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