メディアグランプリ

キャンプとは宇宙ステーションのように


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:伊藤 剛 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
突然ですが、あなたはキャンプが好きですか?
念のためですが、タイトルのキャンプとは「巨人軍のキャンプ」といったものではなく、
テント泊や焚き火などを自然の中で楽しむものと定義しておきます。
 
もし今、あなたが生き方に迷ってしまったり、何らかの原因でストレスを溜め込んでしまっているのなら、キャンプは打って付けだ。仕事の疲れや、周囲との人間関係のいざこざなどは、整体院に通うことや華金の飲み会で愚痴を吐くような誤魔化しではいつまでたっても改善しない。
そんな時は、一度全てのことを忘れて自然の中に身を置くことで、自分自身と深く向き合ったり、心をリフレッシュする時間が必要かもしれません。
 
僕にとって、キャンプとは宇宙ステーションだ。
それは、何をするわけでもなくただ「ぼーっと」焚き火の炎を見ているように、自然の中に身を任せること自体が宇宙の無重力を彷彿させるということもあるけれど、これにはもう少し別の意味があります。
 
最近では、働き方改革やIT化などにより職場や周囲の環境に様々な変化が起こってきました。
僕たちはインターネットの恩恵により常に情報を欲しがるようになり、人の顔よりもスマートフォンの画面を見ている時間が長くなっている。
さらに、終身雇用の崩壊や高齢化による社会保障制度の限界が浮き彫りになり、将来の不安を抱えている人はとても多いように思います。
今日までの常識が明日は当たり前でなくなるように、時代はあまりにも急速に変わり続けていて、その変化の速さに戸惑ったり、付いて行けずに心を病んでしまう。
次第に他人と比較することでしか自分を誇示することができなくなり、ニュースを観ていても学校や職場でのいじめは後を絶たないですね。
 
日本は2018年の経済大国ランキングでアメリカ、中国に次いで第3位であるにも関わらず、幸福度ランキングでは58位という状況で毎年順位は下がる一方。経済先進国でありながら死因が事故死よりも自殺が多いのは日本のみというデータがあります。
僕がこれを最初に知った時は、「マジかよ」と思わず声が漏れました。
だってこれだけ生活水準が高くモノが溢れているんだから、「この国は豊かなんじゃないのかよ」と思うのは当然ですよね。
時代は今後も待ったなしで変わっていくわけで、その中で、僕たちが今一番大切にするべきものは仕事やお金なんだろうか……それとも、自分の心を満たすことだろうか。
 
僕が初めてキャンプに行ったのは、10年前くらいだったと思います。
その日はよく晴れていて、初めての焚き火で鳥の姿焼きをしたあの焦げ臭さや、満天の星空を見上げて「黒い宇宙の部分より白い星の部分の方が多いやん!」などと話していたことを今だに覚えています。
焚き火を囲って仲間と話していると、普段話さないような将来の夢の話など、自然と深い話ができるのもキャンプの醍醐味です。時折会話が途切れるのだけど、決してその時間も嫌じゃない。
時々「パチパチッ」と音を立てながら、まるで生き物のようにゆらゆらと形を変える炎を見ていると、とても心が落ち着くんですよね。
 
朝はテントの中で、森から聞こえる鳥や虫の鳴き声で目が覚める。普段ならケータイの目覚ましが耳元で鳴り響き、「うるせー!」と言って嫌々起き上がるところ。
外に出れば少し冷んやりした空気を身体で感じ、草木の匂いは自宅や都会のそれとは全く違い、如何にも”清々しい朝”という雰囲気を駆り立ててくれます。このタイミングで豆を挽いて淹れるブラックコーヒーの味はもはや説明不要ですね。
 
僕はキャンプの虜になり、今だに隙をみては仲間と山へ出掛けています。
でも、始めた当初の友人達はほとんど一緒に行くことがなくなっていきました。みんな子育てや仕事が忙しいと言って、誘っても断られることが増えていったからです。今は本当にキャンプが好きな仲間と一緒にいて、そこに「自分もしたい」といって新たな仲間が加わってきたという状態。共通の趣味があるというのはそれだけで素晴らしい。
誰かと比較したり、他人の目を伺って自分を自由に表現できないなんてことがなく、ただ同じ時間を共有することで日頃の人間関係のいざこざすらも忘れさせてくれる。
 
キャンプをする中でも、特に僕は星空を見上げることが好きです。
ある時、ふと思ったんです。きっとあの暗闇のどこかに宇宙ステーションがあって、そこで生活する宇宙飛行士は僕と同じ気持ちなんじゃないかって。
僕が日常や都会の喧騒から脱出して、自然の中に身を委ね、ただ「ぼーっと」夜空を観ているように、宇宙でも無重力に身を任せて、地球の美しさを眺めているに違いない。きっと宇宙飛行士は「人類のため」なんて大義名分よりも、ただ単純に宇宙が大好きで、地上からロケットで脱出したんだ。僕のキャンプ仲間のように、そこにまた新たな仲間がドッキングして一つの空間を作り上げている。キャンプでも宇宙ステーションでも「しまった! 忘れ物をした」なんてことがあったら大変です。そこにあるものでなんとか対処しなければならない。なんだか似ているなって思ったんです。
 
どれだけお金や地位や権力を手にしても、自然の前では人は無力ですよね。
大自然に囲まれていると、自分の悩みがどれほどちっぽけなものかを感じ、自分にとって何が本当に大切なのかがわかるような気がして、少しずつ心が満たされていく。
自然は時に恐ろしく、理不尽で、美しく、壮大。物事には必ず対となる面があって、生きていると楽しいことばかりではなく、辛いこともたくさんある。だからこそ、この変化の速い時代に飲み込まれるのではなく、一度立ち止まって脳をリセットし、自分自身と深く向き合う時間が必要なんじゃないだろうか。
キャンプは僕に様々なことを教えてくれた。
 
きっと宇宙でも同じことを感じているんだろうな。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/102023
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事