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日本にある私だけの世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:石田武志 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私は精神疾患を持っていて、ハンディ(障害)のある方々と一緒に就労している。
 
仕事内容は事業所内の部署に郵便物、宅配物の配布、
 
部署から依頼があれば、チラシや物等を仕分け、各支店に発送する。
 
私達の仕事はポケモンの旅のようなものだ。
 
ポケモンはモンスターをゲットし育て、
 
主人公と共に、
 
成長して行き様々な地方を旅して、
 
道中で新たなモンスターやトレーナーと急に出会う。
 
私達の仕事も、ポストを開けるまではどのような郵便物が入っているか分からない、宅配業者がどのような宅配物を持ってくるか分からない、
 
突発的に来た部署からの依頼があれば支店に発送する、
 
様々な場所(部署)に行き声を掛ける、
 
そしてチラシや物を詰めて、支店に発送する。
 
毎日何が起こり、どのような仕事になるか分からないので、これらのことからポケモンでいう旅に似ていると考える。
 
しかしこの仕事は、ポケモンの旅のように楽しく進める訳ではない。
 
事業所内には部署が約50カ所あり、1部署辺り10人で約500人が働いている。
 
私は仕事を始めた当時、
 
人の多さに圧倒され郵便物や宅配物を配布するのが嫌だった。
 
それは私自身も精神疾患を持っているから、
 
出来なくても仕方ないという、
 
かき氷のシロップのように甘い考えが私の身体に染み付いていた。
 
未だに人の多さに圧倒されて声を掛けるのは緊張してしまうが……
 
郵便物や宅配物を配布出来るようになり、
 
以前よりは積極的に動けるようになり自分でも成長を感じる。
 
積極的に動けるようになったきっかけは、
 
たまたま取った一冊の本「未来を変えるイチロー262Nextメッセージ」に
 
やってみて「ダメだ」とわかったことと、はじめから「ダメだ」といわれたことは、ちがいます。
 
という言葉が載っていた。
 
この言葉に影響を受けて、
 
自分の頭の中で一旦考え、
 
「今の自分って何も挑戦していない、ここで逃げて人任せにしたらあかん」。
 
人任せにするのではなく、挑戦しようという想いになれた。
 
イチローは私に取っての架空のカウセンラーになってくれ、
 
精神科医に相談しても解決出来なかった不安を取り除いてくれた。
 
架空のカウセンラーイチローの考えを取り入れて、
 
自分の視野が広がるようになってきたこと、
 
また、仕事を教えて下さる方々の丁寧な指導により、
 
物の見方や考え方も変わった。
 
仕事にも慣れて来たことで、
 
今度は教えて貰う立場から教えて挙げる立場になって欲しいと会社から提案があった。
 
ハンディ(軽度知的障害)ある方が入って来られるという情報を聞いていたので、
 
私は教えられるか物凄く不安だった。
 
不安は的中して、
 
知恵の輪を解く並みに教えるのが難しいと感じた。
 
仕事は郵便、荷物の配布だけでなく、
 
突発的の対応も多くて業者の対応、各部署からの依頼で各支店に物を発送するので、
 
対人関係のコミュニケーションや自分から発信することも重要になってくる。
 
対人関係が苦手、物を扱うのが不器用、字が書くのが苦手、自ら考えて動くのが、
 
苦手という点があるので配慮して上げてねと会社側から伝えられた。
 
「難しいことでも挑戦! よし! 頑張ろう」
 
と自分に言い聞かせて仕事を教えることがスタート。
 
最初に聞かれたのは、「基本的には皆さんの指示通り動いたら良いでしょうか」?と聞かれて、私は「はい! 指示するので大丈夫ですよ」。と答えた。
 
今思うと「はい! 指示するので大丈夫ですよ」。というこの言葉、
 
ハンディがあるから、遠慮してあげないと、
 
と思っていたのは猛反省である。
 
本当に必要なのは、配慮である。
 
配慮しながら教えていたが、
 
決まった仕事はこなすことが出来るのだが、
 
半年経ってもなかなか仕事を覚えることが出来ない、
 
覚える為にメモを書いていても、
 
自分で書いた字が分からず、「この字は何って書いてあるのでしょうか」?と質問される。
 
私はどう教えて挙げれば良いか、野球の監督で言うとこの選手を伸ばすには、
 
どうしたら良いかとてつもなく困った。
 
一人で解決出来ない時は誰かに頼ろうと考え、
 
ハンディ(軽度知的障害)に付いておられる指導員の方を呼び出して、
 
会社に来てもらい面談をしてもらうことに。
 
指導員の方にはメモの件や今後どのように仕事を教えて挙げると良いか質問をした。
 
以下が指導員の言葉である。
 
「メモの件ですが○○君は、自分で書いたメモで何を書いているか分からない、
簡単に説明すると彼には彼だけの世界があり私達と観ている世界感が違います」。
 
「なので私達が彼の世界観にどのように合わせてあげるかが、重要になってきます」。
 
私はこの話を聞いて、日本という国に住んでいるけど、
 
1人1人観ている世界観が違い、
 
観えている景色や考え方も違う、
 
そう考えると日本には住んではいるが、
 
皆、別世界に住んでいるのだなと感じた。
 
そして、相手の世界観に合わせてあげるという事は
 
漫画ワンピースの主人公ルフィーと一緒に冒険する感覚に近いのではと思う。
 
ルフィーは独特の世界観を持っていて、
 
仲間がルフィーの世界観に合わせて行くという場面が多々ある。
 
仲間がルフィーの世界観に合わせているからこそ、
 
主人公も仲間もお互い輝けて活躍出来る。
 
日本という国に住んではいるが、
 
皆実は、自分だけの別世界に住んでいるということを頭の片隅に入れておいて、
 
相手の世界観に合わせてあげることにより、
 
ハンディ(障害)があろうがなかろうが、
 
たくさん出来ることがあるということに気付ける。
 
そして最後に私が書いた記事を皆さんは自分の世界で読んでいる。
 
読んでいる時間、景色、パソコンの種類、場所等
 
全ての事柄において1人1人違うのだから。
 
私は今後もこの自分の世界を大切にしたい。
 
 
 
 
***
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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