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【在宅医療とは生活を整えること】


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:谷やん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
11月8日は二十四節気の立冬でした。
 
暦の上では、立冬から立春の前日である節分までが冬になるらしい。
 
この季節になると、服も冬物になり、冷房器具から暖房器具に代わり、寝具も温かなものに衣替えになります。
 
生活が冬物に整えられていくのです。
 
そういうふうに冬は冬なりに夏は夏なりに生活を整えていかないと、つい風邪をひいたり、体調を崩したりします。
 
そうなのです。生活を整えること。
 
それは我々にとってはあたりまえかもしれないけれど、在宅医療を受けている患者さんには当たり前のことができていないのです。
 
だから、在宅生活を支える往診医として、医療をみる以外に患者さんの生活を支えるという仕事が重要な役目になってきます。
 
先日はそんなことを実感した一日でした。
 
その患者さんは77才の男性、引きこもりの息子さんがいますが、6畳一間のワンルームで独居で生活されていました。
 
以前から病気のオンパレードで、脳梗塞、心筋梗塞、てんかん、高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈、前立腺肥大、うつ病などなどで治療してきました。
 
その方が2ヶ月前に、口から物が食べられなくなったという事で急に救急病院に入院されました。
 
おそらく、そのまま施設入所になるだろうと思っていたら、どうしても自宅に帰りたいということで、無理やり昨日退院されてきたのです。
 
本来、在宅での生活は難しいと思っていたので、私もケアマネージャーも訪問看護師も頭を抱えていたのですが、現実に家に帰ってこられると、サポートする介護者が本当に大変になります。
 
以前なら、こういう方を見てくれる病院もあったのですが、最近、病院はどんどん慢性疾患の患者さんには冷たくなっていて、特に介護を必要とする人を入院させてくれません。
 
だからといって老健施設も限りがあるから、自然とあぶれた方は自宅ケアになります。
 
特にこの方のように、生活保護で、介護者も頼りにならない、経済的にも厳しい、自分で普通の食事も食べられない、おしっこの管が入っている、寝たきりとなると本当に大変です。
 
昨日訪問して、先ずやったことは何か、それは生活を整えることです。
 
まずは食事の手配から考えました。
 
「 Sさん、普通の食事が食べられないのなら、とろみ食を宅配してもらわなければならないけど、1日の食費はいくらまで出せる?」
 
「1000円から2000円までかなぁ」
 
「2000円となると、月に6万円かかるけど、貯金はいくらかあります?」
 
「貯金はある」
 
彼は、自信ありげに通帳を探して、中の数字を見た。
 
「いくらあるの?」
 
「全財産で34万円、これだけあったら、しばらく食べていけるやろう」
 
「1日2000円使うとすると、月に6万円、そうすると6ヶ月で貯金が底を尽きてしまうよ」
 
彼はいきなり無言になった。
 
ケアマネージャーさんと相談して、安価なとろみ食の宅配を探してもらうことにした。
 
「ところで Sさん、冷蔵庫が壊れているけど、食べ物の保管どうするの?」
 
「通販で冷蔵庫買った」
 
「どこにあるの?」
 
「ベランダに置いてある」
 
ベランダを見ると、真新しくダンボールに包まれて発泡スチロールで覆われた冷蔵庫があった。
 
「これ、いつ出すつもり?」
 
「いつか、やろうと思っていた。でも、一人ではできん」
 
「……」
 
「仕方ないなぁ、人手がある今セッティングしようか」
 
ということで、ケアマネージャーさんと訪問看護師さんに部屋を掃除してもらって冷蔵庫のスペースを作ってもらい、私が梱包を開けて、重い冷蔵庫をベランダから台所に運んだ」
 
「 Sさん、往診に来て引越しの手伝いしたのは初めてや」
 
「すいません。ありがとう」
 
この時はじめて、学生時代に引っ越し屋のアルバイトをしていて良かったと思った。
 
このように在宅の方を支えるとういうのは、患者さんの生活を支えること。
 
私の開業している地域には、こういうお年寄りが大勢いらっしゃる。
 
頼れる身内もなく、独り暮らしで、経済的な余裕もなく、生活自体が荒れ果てる。
 
生活保護の方も増えている。その方々が、年々高齢化し働けなくなって、身体を壊される。
 
病気になる以前に生活が破たんし、家がごみダメのようになり、食べるものも食べられず、衣服も乱れ、トイレにもまともに行けなくなる。
 
そして歩けなくなり寝たきり生活になる。
 
だから、在宅医療では、患者さんの病気を治す前に、まず生活を改善させることが先決になってくる。
 
在宅医療に関わる医療や介護に従事する者は、このように泥臭く大変な中を日夜悪戦苦闘して頑張っているのだ。
 
これが在宅医療、これが生活医療。
 
病気より、この人がきちんと食べて、風呂に入れて、寝ることができるように、生活を整えていくことがはじめの一歩だ。
 
これから益々少子高齢化社会になり、こんな方が増えていくのだろうか。
 
これからの日本の現状、これからの日本の現実を肌で感じながら、今日も自転車を走らせている。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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