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そのペンいつまで使っているの?


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記事:廣瀬 昌代(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あ、これ小学校の時の?」
懐かしいデザインのペンが、友達のうちのテーブルに置いてあった。
 
「うん、よく覚えているね」
友達がペンを手に取った。
 
「買い換えないの?」
小学生と言ったらかなり昔の話だ。
文房具が好きな私はまだ使っているのが不思議でならなかった。
 
「家で使うだけだし、まだ使えるからいいかなって」
近くにあったメモ帳にサラサラと書き始めた。
 
「もったいない!」
私は思わず声を張り上げる。
「ペンって色々な種類があるし、自分に合うものを使わないともったいないよ。それにこれはインクが手につきやすいタイプだよ」
 
「確かに……」
友達は少しだけインクが付いてしまった手を見て言った。
 
私は少し遠くの鞄を引き寄せた。
中からペンを取り出し、友達に渡す。
「これが手につきにくいやつ。インクがもっとサラサラしているの」
 
「あ。ほんとだ。全然違うね」
メモ帳にくるくると書いている。
 
「あとこれが消えるやつ」
私はもう一本だした。
 
「あ! テレビで見たことある」
「そうそう。ボールペン革命のやつ」
2007年に発売して大ヒットしたボールペンだ。
テレビにも取り上げられていた。
 
またメモ帳にくるくると書き、そして後ろの消しゴムで消した。
「わっ。本当に消える」
楽しそうに笑っている
 
「そして最後はこれ」
取り出した後、自分のノートに挟んで渡した。
 
「これは挟む所がクリップになっているから、ノートとか生地の厚い洋服とかでも楽々挟めるよ」
 
「へー便利だね」
友達がノートからペンを取り、ジーンズのポケットに挟んでみせた。
 
「ペンってどれも一緒だと思っていた。でも全然違うのね」
先ほど渡した3本のペンをまじまじと見ながら言った。
 
「そういえば、どうしてペンが好きになったの?」
 
そういえばどうしてだろう?
いつから好きになった?
色々思い返してみた。
 
「あっあの時だ」
 
小学5年生の時だった。
 
「これ、あげるよ」
親戚のお兄さんが、製図用のシャープペンシルをくれた。
建築の仕事で使っているものだった。
 
「いいの? ありがとう!!!」
ずっと憧れていたシャープペンシル。
まさか貰えるなんて、夢のようだった。
 
「建築士になったみたい……!」
 
黒い金属製のシャープペンシルで、持ってみるとずっしりと重かった。
 
家に帰るとすぐさま机に向かった。
「さあ、書くぞ」
わくわくしながら、ノートに線をひいてみる。
 
「え? 全然違う」
 
書き味がまったく違ったのだ。
ぴたりと思った方向に線がひける。
製図用なだけあって、精度がすごく高かった。
 
「今まで使っていたシャープペンシルって、おもちゃだったの?」と、思わずにはいられなかった。
 
小学生の私でも分かるくらい、明らかに違ったのだ。
 
「他の物はどうなのだろう?」
気になって、近所の大きな文具店に出かけた。
 
店内に入ると、すぐペンコーナーに向かう。
 
「こんなにあるのか!」
 
あらためて見ると沢山の種類のシャープペンシル、ボールペン、サインペン、万年筆が、ずらりと並んでいた。
 
「もらったのと同じのあるかな?」
探してみると、すぐに見つかった。
 
「1000円もするの?!」
使っていた100円シャーペンの10倍の値段である。
高いだけあると、納得してしまった。
 
「こっちは2000円だ!」
持ってみると軽かった。
 
「値段が高くなるほど、重くなるわけじゃないのか」
 
どれどれと、試し書きコーナーで書いてみる。
書き味は軽いが、ぴたっと正確に書ける気がした。
 
「コレはもらったのと似ている。でも500円だ」
見た目は黒くてカッコよかったが、書いてみるとぴたっとした精密な感じはなかった。
 
最後に100円の物も試してみたが、精密とは程遠かった。
 
「ペンって面白い」
 
それ以来、すっかりペンのとりこになってしまった。
 
「へー。それで好きになったのか」
友達は納得したような顔をしている。
 
「うん。同じに見えて全然違うって知ってからだね」
 
「私も聞くまで同じだと思っていたよ!」
友達は小学生の頃から使っているペンを見て言った。
 
「ところでさ、そのペンいつまで使っているの?」
私は思わず、言ってしまった。
 
「確かに……」
 
「どういうペンが欲しい?」
友達にはどれが合うだろう?
色々なペンを思い浮かべた。
 
「ペンコンシェルジュだ」
クスクスと笑う。
 
「手が汚れないタイプが欲しいな。あと絵が描きやすいやつ」
なるほど。頭の中でいくつか候補がでた。
 
「あまり高いのは嫌だ」
じゃあ200円以上はダメかな。
 
「キャップがあるのは面倒くさい」
キャップはダメか……。じゃあこれだ。
 
「ぴったりなのがあるよ!」
「じゃあこれから買いに行こう」
 
あれから数日後、また友達の家に遊びに来ていた。
テーブルの上には、この間買った新しいペンが置いてあった。
 
 
 
 
***
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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