メディアグランプリ

人を惹きつける「3つの〇〇」という魔法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:井上賢治(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「早く終わらないかな……」
周囲の会話に大きくうなずきながらも、内心ではそうつぶやいていた。
表情はかろうじて笑顔を保っているが、早く時間が過ぎてほしいと心から願っている。
 
第3回ビジネス交流会。
「君はもっと人脈を広げたほうがいい。」
3か月前、上司からの勧めがあってこの交流会に参加することにした。いや、半ば強制的に参加させられたと言うほうが正しいかもしれない。毎月開催されるこの交流会。今日はその3回目だ。
 
前半の1時間は、各界で活躍されている方の講演会。そこは思いのほか楽しい時間でもあった。過去1、2回とも興味深い話が相次ぎ、数多くの気づきや学びを得ることができた。彼らの成功体験を聞くにつけ「いつか自分もこうなりたい!」と純粋に目を輝かせていた。
 
しかし後半の1時間、私はこれが苦痛で仕方なかった。参加者同士の交流会。同じテーブルの方々と互いに自己紹介をしあい、それから歓談の時間へと入っていく。
「印刷会社の営業をしています井上です。よろしくお願いします。」
 
互いの自己紹介を受け、その場はどんどん盛り上がっていく。中には具体的なビジネスの話をしている人たちもいる。
一方の私はというと……。
誰からも声を掛けられない。誰も私に興味を持っていない。そんな感じがした。
数人の輪の中に入って、ただうなずきと相づちを繰り返すだけだった。
 
ところが1か月後、同じ場所で、私の人生を変えるほどの出会いがあった。前半の講演会、その日のテーマはプレゼンテーションだった。スラリとした長身の講師。穏やかなたたずまいながら、メガネの奥には鷲のような鋭いまなざし。その話し方は、冷えきった私の心にも一瞬で火を点けるほどの熱量があった。そこで語られた「ホールパート法」。これこそが私が「3つの〇〇」という魔法を手に入れるきっかけだった。
 
「ホールパート法とは、最初に話の全体像、ポイント(Whole)を伝え、それから話の枝葉部分(Part)を説明する話し方です。伝えるポイントは3つがちょうどいいです。1つ2つでは少なすぎるし、4つ以上あると相手の理解が促進されません。『ポイントは3つあります!』このように伝えてから、それぞれの具体的な説明をしましょう」
 
熱い講演の余韻が残っており、私の気持ちは高ぶったままだった。
「よし! 試してみよう」
交流会が始まる直前。いつもの憂鬱さは不思議となくなっていた。
 
時計回りに自己紹介が始まり、最後、いよいよ私の番だ。そこで早速ホールパート法を試してみた。
「私のアピールポイントは3つです!」
仕事とはまったく関係ないけど大丈夫だろうか? わずかなためらいもあったが、私は自分自身を1分間に凝縮して表現してみせた。
 
「1つ目はチャレンジャーだということ。2つ目は愛犬家だということ。3つ目は杜の都、仙台出身ということです。それでは1つ目のチャレンジャーについてお話しします。私は今年からジョギングを始めましたが、9か月が経過したつい先日、フルマラソンを完走することができました。来年はゴルフにチャレンジしたいと思っています。2つ目の愛犬家についてです。私は仕事に役立つ資格は簿記3級しか持っていませんが、昨年、犬の飼い主検定を取得しました。いまは3匹のトイ・プードルと暮らしています。3つ目。私は杜の都、仙台の出身です。18年間暮らしてきましたので、観光名所やおいしいお店についてもご紹介できます。仙台出張の機会などございましたら、ぜひお声掛けください」
 
「フルマラソンですか。それはすごいですね」
ホッと息をつく暇もなく、隣の方から声を掛けられた。
「私もマラソンが趣味でねぇ……」
「どの大会に出たんですか?」
私を中心に人が集まってきた。過去2回とは明らかに違っていた。
 
「我が家でも犬を飼っていますよ。うちはチワワでね……」
「井上さんは仙台ですか。私は福島なんですよ……」
その場にいた全員がかわるがわる声を掛けてくれた。
あっという間の1時間だった。
 
その後、回を重ねるごとに自然とビジネスの話にもつながるようになった。
その過程で気づいたのが「3つの〇〇」という魔法だった。
 
私は取り立てて大きな特徴があるわけでもなく、決して目立つ存在でもない。それでも人の輪の中心にいることができたのは、3つの自己表現ワードのおかげだと思っている。
フルマラソンを完走した人は、年間に30万人はいると言われている。ペットブームが続く日本では、700万世帯以上で犬が飼われているし、仙台はいまや100万都市だ。ひとつひとつは、なんら特筆すべき話でもない。ところが「3つのポイント」として表現することによって、ひとつひとつの輝きが増していくように感じられるのだった。
 
そして、それは自己紹介だけにとどまらず、ビジネスをも大きく羽ばたかせる効果があった。
「うまい、やすい、はやい」
牛丼チェーン吉野家のキャッチフレーズとしてあまりに有名であるが、確かにこれも1つ2つだけの要素では物足りなく感じられるだろう。多すぎず、少なすぎず、3つであることがこんなにも人を惹きつけ、記憶に残すのだ。
 
「わが社の特徴は3つあります!」
「このサービスの良いところは3つあります!」
今日も「3つの〇〇」という魔法を武器に、充実した時間を過ごしている。
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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