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メディアグランプリ

カフェの無駄時間がない人生なんて!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:匿名(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「コーヒーなんか家で飲んだらいいじゃん。お金がもったいない!」
 
笑いながら冗談とも真剣ともとれない発言をするMちゃん。
彼女はものすごく堅実で節約上手である。そこは尊敬している。わたしとは正反対の倹約家のMちゃんのことは大好きだが、カフェを無駄だとする意見には断固として反対する。
 
「えー。無用の用だよ。家じゃだめなのよ」
 
無駄な様に見える時間の使い方かもしれないが、それこそが人生ではないか!
必死にカフェの必然性を訴えるわたし。
 
いや、無駄って、そもそもなんだ?
わたしの人生から散歩とカフェでボーっとする、いわば無駄な時間を取り除いてしまえば、一体何が残るというのか! せいぜいたっぷりの内臓脂肪だけである。
わたしにとってカフェは人生そのものとさえ言い切れる。
特に。
親友のYちゃんと過ごした20代の時間の多くは大好きなカフェがなければ全然違ったものになっただろう。
 
学生時代、バイト仲間とお気に入りのカフェ談義になった時、絶対気に入ると思うカフェがあるの、と教えてもらったカフェがある。
とある不便な最寄駅から15分くらい歩く、悪い立地。しかもわかりにくくて、あまりに多くの人が迷って道を聞くので、最寄りの派出所には地図が用意されていたほどだ。
薄暗くてお香の香りが充満している店内。インド風だけどインド要素だけでもなくて、お客さんはおしゃれな人が多い。ガラス張りの窓からは小さな庭の木にリンゴがぶら下げられていて、鳥たちがリンゴをついばむ姿を楽しめる。素敵な音楽と見たことのないようなたくさんの種類の紅茶。とびっきり美味しいケーキ。ケーキは美味しいけれど、華美でない武骨さで他にはない魅力がある。
わたしはすぐにこのカフェのとりこになった。
 
それからは最低週1回、多い時は週に6回は通った。
さらに、社会人になって勤め始めた後も、会社からは決して近くはないにもかかわらず毎日のように通っていた。
そのカフェはみるみる大人気店になり、どんどん支店ができた。
そのすべてに足しげく通ったものだ。
一人で行くこともあったしボーイフレンドと行くこともあったが、勤め先の友人Yちゃんとは、気が狂ったように通った。Yちゃんとは他にも共通のお気に入りのカフェが2店あり、それら3つの店にほとんど毎日飽きもせず仕事後に通ったものだ。
どこも午後10時まで空いていたので、仕事が終わってからダッシュし、軽食を食べてはデザートと紅茶三昧。
時にはまだ話し足りなくて、空いている店もないような時間でもふらふらと話しながら歩いては、最終的にはどちらかの家に泊まったりもした。
 
何をそんなに話すことがあったんだろうと思う。
カフェの異空間でわたし達は酔っていたのかもしれない。自分たちの無限に広がる未来、可能性、仕事の大変さや面白さに。
ほとんどはYちゃんと、週末にはボーイフレンドと、多くは漠然とした将来の夢、やりたいこと、好きな音楽やいろいろな好きなものについて熱く語り合った。
美味しいお茶とケーキを食べながら、時には生きる意味や死後の世界についてさえ。
わたしたちにとって、生きるとは何か、死とは何か、自分とは何かという哲学的な問題とファッションやインテリア、音楽や本は同じレベルのフワフワした実態のないものだったように思う。
時空がゆがんだようなお香がかおる薄暗い空間で話している高揚感。時を共有している一体感や幸福感。何かが自分の内側から生まれてくるような期待感。
 
将来のための資格取得やスキルアップという意味では何の役にも立たない無駄な時間とお金の使い方ではある。スマホもパソコンもなく、ひたすら本を読んだり、おしゃべりしたり、ボーっとして過ごした。
 
だけど、その無駄が今も色濃くわたしの人生の一部として存在し続ける。
大切な宝物のようにきらきらと、皮膚にまとわりつくように身体の一部とさえなって。
 
あんなに濃密な時間を過ごせたのはカフェの異空感のせいと多くはYちゃんと過ごした時間だから。それだけは確かだ。わたしたちは何でも話せたし、鼓舞しあえた。大好きな人だった。
 
時が経ち、そのカフェの本店は大幅にリニューアルされた。
おしゃれで美しく明るく清潔感に溢れ……
今も大人気店でさらに支店は増えている。
だけど、
あの時の時空がゆがんだような不思議な怪しい空気は薄められ、何かが生まれそうな混沌とした力は無くなってしまった。
 
何十年ぶりかで立ち寄って、大好きだったチーズタルトとキーマンというお茶を注文してみた。チーズタルトの値段は上がり、大きさは小さくなり、味は落ちていた。
 
大好きだったYちゃんは白血病で若くして逝った。
ボーイフレンドとはその後別れた。
そしてわたしはひとり年を取った。
あの頃と同じものはもう何一つ残っていない。
夢中になって話した夢は何一つ叶っていないし、無限だったはずの未来ははっきりと有限となり、カウントダウンが始まってさえいる。
 
わたしの濃密な若い夢がつまった時間は消えてなくなってしまった。
Yちゃんのまぶしい笑顔もない。
一体どこへ行ってしまったの。
 
だけど、それでも、今もわたしはカフェが好きだ。
カフェがないと生きていけないくらいに。
カフェは大好きな人とあるいは自分と向き合える大切な時間と空間をくれるから。
たとえ100歳になっても、わたしはその時々の未来の夢をカフェで想い、語っていたいとさえ思う。
たとえ周りの人が笑おうとも。究極の無駄であったとしても。
 
人生は、きっと通り過ぎていく愛すべき人との無駄の瞬間の積み重ねなんだ。
 
だから。
さあ、Mちゃん、おススメのカフェに行くよ!
 
 
 
 
***
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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