更年期はピクニック
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:平本智佳(ライティング・ゼミ平日コース)
いつそんな噴射ボタンが設置されたんだ?
といいたいほど、ヤツは突然やってくる。ヤツとは、発汗ダラダラである。
蛭子能収のマンガに出てくる人のように、顔にダラダラと汗をかきながら私はうろたえる。若いときから冷え性で、サウナに入っても絞り出せなかったほど汗とは無縁だった私なのに。
今は真冬の12月、顔はもちろん、背中や首筋にも汗が筋を作って流れ落ちていくのがわかる。
42.195kmのマラソンを完走したわけでも、スタジオで1時間エアロビクスのレッスンを受けたわけでもない。辛さ10倍カレーに挑戦しているわけでもないし、トムヤムクンを飲み干したわけでもない。
つまり全く身に覚えのない、理由のない汗なのである。
と自分では思うのだが、実は理由はあるらしい。
いわく、更年期に入ると女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れ、体温の調節機能が狂うことによって起こる発汗らしい。
しかし、家でのんびりと寝そべって猫と遊んでいるときには、ヤツは来ない。むしろ、「え、いま?」とか「こんな人前に立った瞬間に!」という実に意地の悪いタイミングでやってくる。
たとえば、歯医者で「大丈夫ですか。治療続けられますか?」と心配されたり、美容院でドライヤーの冷風をあてられたりしてきた。どちらも固定された椅子の上、逃げ場がない、動けないというシチュエーションで、ナーバスになることが引き金になっていたようである。
ものの10分もすればおさまるのである。その10分をやりすごせばまた普通の状態に戻る。しかしヤツが来ている間は、瞬間的に全身がボン!と火山が噴火したように熱くなり、内側から暑さが皮膚をぐいっと押し上げてくるような感覚がある。
そしてマグマの代わりに吹き出す汗。そんなに水分取っていましたっけ? といいたくなるほど大量である。軽く“夕立の中を走ってきた人“のできあがりである。
とりあえず顔の汗を拭かねばなるまい。しかし、ハンカチは一度で使い物にならなくなるので、何枚も用意するとカバンの中でかさばる。それにハンカチを握りしめている中年女というのも、なんだか一昔前っぽくてイカさないではないか。
かといって、ティッシュペーパーでは拭くはしから、ティッシュペーパーが破けて、モロモロとした白いカスが額に張りついて残るのである。吸水性が良くて、悪目立ちしない拭くモノなにか!!と心が叫んだとき、ふと思いついたのがキッチンペーパーであった。吸水性は抜群、そしてティッシュペーパーより丈夫。家で試してみるとこれはイケるとわかった。ただ唯一の難点は白くて厚みがあるので人前で使用するにはちょっと美観が悪いということである。ここをなんとか、と悪あがきをしているうちにひらめいたのがペーパーナプキンである。
キッチンペーパーの機能性がありながら、色柄、模様が豊富で、たためばハンカチよりも小ぶりで手のひらに収まる。軽い。よっしゃこれだ。キッチンペーパーよりコストはかかるが、コントロールを失った自分の体に疲れて、気分も暗くなりがちな更年期、気にいった柄のペーパーナプキンを日替わりで持って歩いてウキウキしたっていいではないか。
もう一つ、大汗の後に問題になるのは、背中びっしょり問題である。
大手量販店の発熱アンダーウェアで対処できると思っていた。が、これが吸水性はいいのだがあまりに大量の汗のため、冷えた後はなかなか乾かずに、今度はその冷たさで震えがくる。その悪循環で、私には合わなかった。それで湿っても冷えないものはないかとたどり着いたのが山登り用のアンダーウェアだ。
登山では汗で体が冷えれば、低体温症などを引き起こし遭難につながることもある。そのため、昔から綿ではなくウール素材などのアンダーウェアが使われてきた。ウールでは洗濯に気をつかうしチクチクすることもあるが、今時はナイロンやポリエステルで、吸湿性に優れているが、肌面はサラサラで、濡れた感じを与えない素材が開発されていた。すばらしい。それに毎日着替えられない登山者に配慮して防臭、抗菌効果も盛りこまれている。なんと私にジャストフィットした商品なのだろうか。
こちらの難点は、色の選択肢が黒、薄茶、オレンジの3択しかなかったことである。狭い山小屋で雑魚寝という環境で、着替えをして人目に触れても下着感を出さないためだと思うのだが、なぜオレンジ? せめて、白を出してほしいところではある。
しかし、このアンダーウェアを見つけてから、外での急な発汗がやってきても、必要以上にダメージを受けることがなくなった。ヤツが来ている10分間だけ、かわいいペーパーナプキンで立ち向かえば、ボディは山用アンダーウェアが鉄壁の守りを見せてくれるのである。ナイロンの下着が私にとっては“勇者のころも”である。
ペーパーナプキンと登山用アンダーウェアなんて、まるでピクニックアイテムではないか。これで装備はばっちり、ピクニック気分で出かけよう。ピクニックだって陽気がよくて、坂道を歩けば汗もかく。更年期はピクニック。日常が軽くアドベンチャー。そう思えばちょっと楽しく過ごせそうだ。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/102023
天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。