メディアグランプリ

トイレは「アイデアの聖地」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岩井聡史(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ちょっとお行儀の悪いお話をするがご勘弁頂きたい。
きっとトイレに対する見方が良くなるので。
 
僕はトイレできばるとき、スマホを持っていく習慣があった。
なぜなら、やることがないからである。
正確に言えば、やることはたった一つはっきりとしている。きばることだ。
しかし、きばる以外にやることがない。それなのに手は空いている。
これぞ究極の手持ち無沙汰だ。
僕はそんな暇な時間に耐えられなくなって、ついスマホをトイレに持ち込んでしまっていた。
 
僕のように、スマホをトイレに持ち込む人は案外多いらしい。
やはり、皆さんトイレの時間に退屈しているのだろう。
確かに、あの身動きの取れない閉鎖空間で楽しむ方が難しい。
 
ある日のこと。
僕はいつも通りトイレに向かったが、スマホを充電器に挿したまま来てしまった。
仕方ないと思い、トイレに座って数分。
案の定、退屈で仕方なかった。いつもならスマホが僕の相手をしてくれるのだが、そんなスマホも今は休憩中(充電中)。
「君がトイレに行ってる間くらい休憩させてくれよ。」
スマホにそんなことを言われた気がした。
 
しかし退屈し始めると、次第に思考が色々なところに飛び始めた。
「今日の仕事は確か派遣会社のアポだから、業務委託の会社の事例も合わせて持って行ってもいいな。」
「次に、どこでお寺のPR動画を撮ろうか考えていたけど、そういえばまだ比叡山は撮影してないし、候補に入れてもいいかも。」
「今週末友達と飲み会するけど、誰もお店の予約しなさそうなメンバーだから、僕が予約してお釣りは頂戴するかな。」
思考は色々なところに飛んで、そしてまとまり始めた。
今、思い浮かんだアイデアが頭の中から流れ出ていかないように、さっさと用を足して出ていく。
 
違う日も、トイレにスマホを持たずに入っていくと、こうしてアイデアが思い浮かんできた。または、ぼんやりしていたアイデアが形になっていった。
 
明らかにトイレでアイデアが湧いてくる、または考えがまとまることに気づいた。
僕はなぜか考え、そして一つの結論に辿り着いた。
トイレできばる以外に人間が唯一できることが考えること、だからだ。
きばるのは、もはや自然にというか、何の労力もなくできる。
ただし、便秘の人は大変な労力が必要だろうからぜひ用を足すことに集中して欲しい。
 
しかし普段からスマホを使って生活に暇な時間がない人間が、トイレという究極に暇な時間を与えられたときに耐えることができない。
暇に耐えられない人間は、退屈を紛らわせようと頭を結構なスピードで回転させ出す。
そうするとアイデアが思い浮かんだり、考えがまとまっていくのだ。
 
この現象はお風呂に浸かっているときも起きる。
お風呂に浸かっていたら、リラックスする以外に何もすることがないし、何もできない(お風呂にテレビがあったり、スマホを防水ケースに入れてお風呂に入る人は別だが)。
何もできないと、人間は頭を動かすしかない。
頭を動かすことは場所や場面を問わずできる、人間の特権であり、究極の暇つぶしといえよう。
 
こうして、トイレは僕のアイデアの聖地となった。
もちろんアイデアが湧かないときもあるし、考えがまとまりきらないときもある。
それでも少なくとも退屈はしないから、全く問題はない。
今思えば、トイレでスマホをいじっているときも、暇つぶしだからと大した情報なんて見ていなかった。
 
よくよく考えれば、今の生活において頭の中の考えをまとめる時間なんてそうない。
電車で移動しているときや暇な時間にはとにかく、スマホを見てしまう。
しかもそんなときに見るものは決まって、SNS、ニュースアプリなどのインプットが多い。
つまり僕は暇な時間に、無意識に必要でない情報までインプットし続けていたのだ。
そう考えると、トイレやお風呂の何もできない時間が何だか貴重なものに思えてくる。
 
トイレやお風呂にスマホを持つ習慣がある人。
最近インプットが多くて、頭の中でアイデアが渦を巻いている人。
やることが多くて、頭がパンクしそうな人。
 
そんな人たちにこそ、ぜひトイレやお風呂でゆっくりして、何もできない時間に身を任せて欲しい。
 
特にトイレだと、きばっている場合じゃないという焦りや、きばるしかないという諦めが頭の思考を加速させる。
なぜなら焦っているときほど人間は時間を無駄にすることを嫌うからだ。
それでいて、きばるしかないのなら必然脳をフル回転させるしか、生産性のある時間を生み出すことはできない。
スマホを見なければならない状態で便意が来たら、それはトイレに持ち込んだ方がいいのかもしれないが。
 
お行儀の悪い話をしてしまい申し訳ない。
ただ僕は、トイレという場所が、いかにアイデアの聖地であるかを知って欲しかった。
願わくば、皆さんにもトイレでどんどんとアイデアを生み出して欲しい。
 
ちなみに、この体験を書いてみようと思ったのも、もちろんトイレなのである。
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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