メディアグランプリ

夫婦円満のコツ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菅原ともえ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
他人なんてそこらへんに落ちてる石と同じだよ。
 
夫の名言である。
 
私は昔から友達が多かった。転勤族のため転校を繰り返していたせいか、友達づくりは上手いほうだったと思う。
しかし八方美人のため、友人関係で悩むことも多かった。誰からも好かれたい、みんなと仲良くしたい、ひとりになりたくない。寂しいやつだと思われたくない、ノリが悪いと言われたくない、空気が読めないと責められたくない……。
 
その、「誰からも好かれたい」が、いつのまにか「誰からも嫌われたくない」に変わりきった頃には、私はもうすでに社会人になっていた。新入社員の頃から上司や先輩のために気を回して、うっかりミスをしようものなら激しく落ち込んだものだ。
 
使えないやつだと思われたらどうしよう。影で調子に乗ってると言われていたらどうしよう。
仕事ができないやつだ、辞めちまえと言われたら、嫌われたらどうしよう。
 
そうやって毎度ぐるぐる落ち込む私を、当時彼氏だった夫はこう言い励ました。
 
「他人なんて、そこらへんにある石と同じでしょ。
何か喚いてようが、別にどうでもよくない? 所詮、視界の隅にあるただの石だよ」
 
家族と好きなひと。
それ以外はすべて他人であり、もはや石っころなのだという。
落ちてようが目にも留めないし、まるで興味が沸かない。
だからたかが会社の人間に嫌われようが責められようが、まったく気にならない。と、そういう意味らしい。
 
いや、「他人」の幅が広すぎる。
 
嫌いなひとにすら嫌われたくない私にとって、その言葉はあまりにも衝撃だった。
 
ああこいつと私は一生わかりあうことはないだろう。
しかし同時に、こんな風に思えるひとになれたら、と心から思ったのだ。
 
私たち夫婦は磁石のようだ。
私はかなりのずぼらで運動音痴、完全な文系で、計算は苦手だが漢字は割と得意だ。
夫は潔癖で運動神経抜群、根っからの理系で、暗算が得意だが漢字が読めない。
私は多趣味でいろいろなことに手を出す。料理も、漫画も、音楽もいろんなジャンルを聴くし、自分の知らない世界を覗くのが楽しい。
夫は野球と、Mr.Childrenにしか興味がない。ほぼ無趣味だ。
 
周りの目を気にしてしまう私と、好かれようが嫌われようがどうでもいい夫。
共通点がなくなった友達を必死に繋ぎ止めようと連絡を絶やせない私と、
「クラス替えしたらもう友達じゃない」というあまりにも淡々とした対人関係を貫いている夫。
 
共通する点はほぼないと言ってもいい。
そんな正反対のふたりが、互いに引き寄せられて、同じ時を過ごしている。
同棲を合わせると一緒に暮らし始めて7年になるが、夫と暮らす日々は楽しく、新鮮だ。
 
どうしたらケンカもせず、そこまで仲良くいられるのかと聞かれることがある。
もちろん、感謝を忘れないとか、相手を労るとか、当たり前のことは心掛けているつもりだ。
 
それに加えて思い当たることと言えば、石ころ発言もそうだが、私は正反対の考えを持つ夫がほんとうに「おもしろい」のである。
 
ワイシャツのボタンを外さずに洗濯機に入れるので叱れば、「ボタンを外す時間を換算すると人生で何時間も無駄にすることになる」と真顔で説得してくるし、
公共交通機関が嫌いで「むしろ電車がおれに合わせてほしい」と無茶を言っている。
 
自分では絶対に考えつかない発想と、どこから弾き出したのかわからない言動、妙に満ち溢れている自信が、心底おかしく、自分が怒っていても思わず笑ってしまうのだ。
おもしろいと笑いながら、心のどこかで「私もこうなれたら」と、羨ましくも感じる。
それは、尊敬に近いかもしれない。
 
夫のようなひとに今まで出会ったことがないし、これからも出会うことはないだろう。
そう思ったからこのひとと結婚したいと、一緒に暮らしたいと思えたのだ。
 
もちろん夫も完璧な人間ではない。
取りこぼした何か、埋められない何かを、拾い上げて補うのが私の役目でもあると思っている。
 
相手は自分とは違うから、分かり合えないこともある。
何を考えているのか理解できない時もある。
そんな時に、相手の考えを「おもしろい」と笑えるか、尊敬できるか、自分もそうなりたいと思えるか。
 
もしかしたらそれが、夫婦円満のコツなのではないだろうか。
 
 
 
 
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2019-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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