メディアグランプリ

サンティアゴ巡礼,得られたものは山ほどの笑顔!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:葉田さつき(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あなたの姿に感動しました。写真を一緒に撮ってください」
「あなたにインスパイア―されました。素晴らしい」
 
そんな感動させるようなことをしていないのに、何人に言われだろう?
私、ただ、山道を一生懸命歩いているだけなのに。
ただ必死に一生懸命歩いた。
歩いただけ。
 
今年の10月始め、スペインの北西部にあるキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラをめざす巡礼路を歩いていた。この時期、この地方は雨期らしく、毎日雨。しかも寒い。長袖の上に念のため持ってきた薄いダウンジャケットをきて、腰にはカイロを貼り、リュックを背負って上からポンチョを着て歩いた。5日間で100km以上歩くと巡礼証明書が出るというので最初の4日間で20km~30kmを歩き、最後の1日は12時からのミサに間に合うように10km歩いていた。
 
巡礼路のほとんどは、ぬかるんでいる舗装していない山道。
栗の実や枯れ葉が積もっていた。
滑らないように、また、踏まれてつぶれている栗を横目で、
踏まないように注意しながら進む。必死に進むだけ。
意外なところに、ひょこっと顔を出ている石につまづかないよう、
ゆっくりと気を付けながら歩いていた。
 
いや ゆっくりとではない。一所懸命早く歩いているのにゆっくりしか歩けない。
足の悪い私にとって、舗装していない上り坂の山道は歩きにくい。
 
雨が降っているのがつらい。
風が吹くと合羽代わりのポンチョの帽子が飛んでしまって、濡れるとつらい。
 
ポンチョの帽子を直していると、また声をかけられて ハグされた。
「あなたの姿に感動しました」
「そんな足で素晴らしい」
 
すごいことをしていない。ただ一生懸命歩いているだけ。
 
そう、みんなが持っているのはウォーキング用のスティック。
スティックは歩くリズムをとるためのもの
私が持っているのは、明らかに形が違う足が悪い人用の杖。
しっかり杖に重心をかけて歩いた。
足だけでなく、重心をかけていたためか両腕も痛くなった。
 
私は足が悪い。ひきづってしか歩けない。
日常的にも杖がないと歩けない。
なのに、112km以上ある巡礼路をみんなと一緒に、
いや、みんなからかなり遅れながらも
ひょこっひょこと一歩ずつ歩いている。
そんな姿がみんなを感動させてのだろうか?
 
ズボンの下は脚の皮膚が出ていないぐらいしっかり貼った湿布薬。
痛み止めも上限まで飲んだ。
夜は足のマッサージを続けた。
 
なぜ、私、こんなこと、しているのだろう?
足が悪いのにどうして112km歩いてるんだろう?
 
友人のサチコに誘われたから?
そうだけど、断ることもできた。
世界遺産を歩くこと? 宗教的雰囲気? 足が悪い私が112km歩くという達成感?
いろいろ考えながらスペインに来たけど、始まってみれば考える余裕はなかった。
ただ一所懸命歩いただけ。
 
歩いてみたかっただけ? なのか?
 
サチコも足の手術をして歩くのに自信がなかったという。
最初の日に一緒に歩いたが、あまりに私が遅いので、
「自分のペースで歩けないとつらい」と
次の日からサチコは一人で先に歩くことになった。
 
朝8時にホテルを出て、サチコは3時、私は夜の7時半に次の目的地のホテルに着いた。
私は歩くのに精いっぱいで、彼女は雨でぐちゅぐちゅに濡れた靴等を乾かしてくれたり、細かなことをいろいろやってくれた。サチコには迷惑をかけっぱなしだった。
 
脚が悪くなる前はマラソンランナーだった私。
足が悪い私が112km歩くという達成感? そういうつもりではなかったが歩きたかった。
なんかいろんなことが思った通りうまくいかなくて、見つめなおすというか振り返りたかった。
 
でもそんなことを考えている余裕はなく歩いただけ。
一生懸命歩いた姿は、おこがましくも他の人に感動を与えたらしい。
 
私もみんなから得られたものはいっぱいあった。
見つめなおしたことではなく振り返ったことでもない。
サチコのやさしさはいうまでもない。
 
得られた最大のものは 山ほどの笑顔!
 
梅雨の季節なのに、何人も何人も列をなして歩いている巡礼者。
人にすれ違ったり、目があったり、ぬかしたりするときは、
必ず笑顔で「こんにちは(Hola!)」や「よい道を! (Buen camino!) 」と
声をかけてくれる。笑顔、笑顔、笑顔、笑顔!
心から湧き出てくるような笑顔!
 
笑顔最高!
いろんな笑顔がある。
世界中から巡礼者が集まってくるので、人種もさまざま。
人種の差より、一人ずつ各々の笑顔が素敵!
みんな違って、でもみんな心から挨拶してくれる!
笑顔最高!
挨拶のたびに、一人一人の笑顔をスクリーンショットのように、写真に撮って
忘れないように頭の中に叩き込んでいった。
 
私は歩くのが遅かったので、ぬかされた人の数も多く、得られた笑顔の数も多い!
 
最終日も雨だった。サンティアゴ・デ・コンポステーラの教会のミサに出席し、巡礼証明書をもらった後、声をかけられた。山道で「一緒に写真を撮ってください」と声をかけてくれたいおじさんだった。また、一緒に写真を撮った後、ミサの話の内容を教えてくれた。
 
「よい道を! (Buen camino!) 」の道(camino)は単なる道だけではなく、人生の道です。笑顔で満ちた人生にしましょう!
 
巡礼路での笑顔は、自然に出てくる笑顔だった。私も自然に笑顔が出てくることを積み重ねていきたい。
 
 
 
 
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2019-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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