メディアグランプリ

パスポートはいらない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:太田智絵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なぁ! 今度、コリアンタウン行こうや!」
「コリアンタウン? どこにあんのん?」
11月の終わり、紅葉の深まる頃、同い年の同僚に突然に誘われた。これまでの人生でコリアンタウンに行ったことはない。テレビでなんとなく東京の新大久保ってところにコリアンタウンがあるくらいしかわからない。でも、ここは京都。いくらなんでも東京ではないだろう。
「鶴橋や!」
「鶴橋?」
「大阪環状線のとこや!」
「ああ、鶴橋って駅あったなぁ」
確か、鶴橋ならば就職活動中に通った記憶がうっすらある。でも、コリアンタウンとかあったっけ?
 
私は休みの日のたびに、京都市内の寺社仏閣および美術館や博物館をせわしなく歩いている。特に秋深まる11月の半ばならば、紅葉の綺麗な庭のある寺や神社に行きたいと思った。
でも、こんな風に誘ってもらわないと、コリアンタウンに行くことが無いかもしれない。
せっかくだから行ってみようか。
「嫌やったら、ええねんで」
「行く!」
「ほしたら、明日10時な!」
 
いつもなら、どこかに行く時にはスマホで検索して前情報を仕入れる。けど、今回はあえて調べないで新鮮な感じでいきたいと思った。
 
鶴橋についた。
やはり、就活の時に数回通ったのか、うっすらと駅の記憶はある。
 
「こっちやで!」
ボーっとしてる暇はなかった。
 
駅から出てすぐにアーケードに覆われた商店街に入る。道幅はやたら狭い。
そして、キムチの匂いがする。
 
高架下にもお店がびっちり並び、やや暗いけど、中にいる人たちは明るい。
「オネーサン、これ見て〜!」
「これ食べて〜!」
こんなJRの駅すぐ出て、この異世界感はなんだろう。
 
大抵の商店街は道が碁盤のようになってるけど、ここは、なんだかナナメにも道が繋がってる。
いろいろ見渡してると友人に
「こっち行くで〜!」とすぐ置いてかれる。
巨大な迷路に置いてかれるような感覚がした。
 
「ここ見るわ!」
靴下屋さんだった。
店の中は「7足1000円」の張り紙だらけだった。
「すごいなぁ! 7足やって!」と声をもらすと、お店のマダムが手に何かメモを持っている。
 
「これ。これ」
マダムは「8足1000円」と書いたメモをチラチラ見せてすぐにしまった。
 
「?」私は固まっていたが、友人は
「隣の店も靴下さんやもんな!」
マダムは「戦争になる」と小声で呟いた。
 
なるほど。ようやく理解した。
 
鶴橋商店街の細い道をよくみると「3班」とか「11班」とか書かれている。「班」という単位が独特だなと思った。
店の看板も日本語もあれば、ハングルの文字も出ている。
キムチ屋以外にも、肉、野菜、微妙にどこかで見たような有名ブランドっぽい衣服、ドラッグストアがみっちり並んでいる。
 
「ここはパスポートがいらん韓国やしな!」
「ほんまやな! 韓国行ったことないけど、こんなんなんやなぁ〜!」
その雰囲気に圧倒された。
 
「ほな、コリアンタウン行くで!」
まだ、コリアンタウンじゃなかったのか?! 驚いたが、立ち止まるとまた置いてかれるので必死について行った。
 
コリアンタウンはアーケードが無いので、真昼の空が見えて明るかった。
 
商店街とは異なり、韓流アイドルのお店やドラッグストア、レストランが多い。
結果的に若者や女性が多い。
特にドラッグストアは所狭しと女性だらけである。
 
私はなんとなくで「韓流コスメはパックとかが人気なんやろ?」
「今はこれや! これっ!」
友人が1本のコンシーラーを差し出してきた。
 
「うん。でも、コンシーラーやったら、シャネルとかディオールとかあるやん?」
「塗ってみ?」
 
手の甲に塗ってみた。
「……。あれ? これ、ホクロ消えた?」
「これで500円」
衝撃だった。たった500円でホクロが消えるとは。
友人と一緒にレジに並んだ。
 
お昼はコリアンタウンにて、
チーズダッカルビ定食を食べた。チーズダッカルビに、ご飯とキムチとスープとナムルとデザートとお茶で900円だった。
「すごっ! 安くない?」
「お得やろ~! インスタあげよ〜」
 
わたあめが乗ったドリンクを持つ女の子達がいる。
これもSNS映えしそうだ。
 
スーパーも覗いてみると、赤いパッケージの辛そうなラーメンが1棚どーんとある。
串になったジャンクフードの屋台もたくさん出ている。建物もよく見ると異国情緒あふれている。
 
平日でさえ、祭のように、こんなに混んでるのだから、週末はもっと賑わうだろう。最初はそれほど乗り気でもなかった。韓流ドラマも音楽も聴かない京都マニアでも楽しめるのだろうかと。それは無駄な心配だった。
 
「はじめてやったけど、すっごい面白かった!」
「やろ!」
気づけば、2人とも買い物袋をたくさん抱えていた。
 
日本にいながら、こんなにディープな韓国にパスポート無しで、飛行機にも乗らずに行けるとは!
近くて、遠い。
遠くて、近い。
鶴橋コリアンタウンへ
また行ってみようと思う。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/event/103274
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事