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小学生の娘の誕生日プレゼントに「父からの性教育」はアリか? ナシか?


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記事:山本和輝(ライティング・ゼミ平日コース)
 
娘が9歳になる誕生日、私にはある企みがあった。
男性である私が、娘への性教育をやってみようと思ったのだ。
 
日本ではタブー視されがちな子供への性教育。
友人に話を振っても誰もそんなこと考えたこともないと言う。
私は、友人女性が教えてくれた本をてがかりにいろいろ調べ、ある絵本を買うことにした。
 
本のタイトルは「ぼくの話」「わたしの話」、低学年向けの性教育の絵本だ。あらかじめ書評を読んで中身は想像していたのだが、届いた本を開いて目に入ってきたイラストを見て「うわっ!」と思わず声を出してしまった。
 
最初は静かに始まるのだが、後半から赤ちゃんがママの股間から頭をだすところ、男性、女性の性器の仕組みや呼び名、性行為の挿入などが描かれたイラストが子供の絵本らしい線の太い、かわいらしいタッチで描かれてあった。
 
「意外とド直球! こ、これどう話する…? バギナ、ペニスって… 言うのかオレ?」
私は思わず小さく呟いてしまった。
 
本を読み始める前の前振り、伝えたい事の確認、ちょっと恥ずかしくなる場面の話しの持って行き方など、いろいろ考えを巡らせてみたが、なにかしっくりこない。
この絵本は説明の文字数が極端に少ない。9歳の娘には少々情報量が足りないのだ。
 
そして、問題はもう一つあった。
いったいいつ、どんなタイミングでこの話をするのが一番良いのだろうか?
 
唐突に「いまから、赤ちゃんがどうやって生まれてくるか教えまーす!」といって始めるのか?
 
いや、ちょっと違うだろ。
いったいどうしたものか?
 
思い立って本を買ったのが7月頃。
そこまではよかったがその後が続かない。
なんとなくタイミングを逸し、4か月が過ぎようとしていた。
 
そもそも私が娘に性教育をしようと思ったのは、子ども向けのネットの安全教室をやっていることがきっかけだ。子どもたちのネット利用で必ず問題になることの1つが、SNSで知り合った人からの誘い出しや、裸の写真要求、わいせつ行為や性犯罪被害だ。
 
つい最近も、大阪で小6女児がTwitterで35歳の男に呼び出されて栃木県にまで連れ去られる事件があったばかりだ。子どもは、ネットでもリアルでも自分に好意的に接してくれる人なら「きっといい人だ」と簡単に思い込んでしまう。信用している人から体を触られても、相手の悪意に気づけないことがある。
 
また、スマホが使える子どもたちなら、ネットでアダルトコンテンツを見るのも簡単だ。アダルトビデオで描かれる過激な性行為はあくまでフィクションの世界だ。映像を見て、正しい性知識として思い込んでしまう子ども多いのだ。
 
そんな理由もあって、私は自分の娘には小学生のうちから正しい性知識をもってもらいたいと思うようになった。
 
でも、残念ながら娘の小学校では、高学年の女子に対してのみ、生理や妊娠の話しが行われているだけのようなのだ。
 
話を切り出すタイミングについて悩みつつも、絵本だけでは物足りないと思った私は、中学生向けの性教育の本を買って読んでみた。
 
そこには私が求めていたものがあった。
 
「性教育は命の授業」
 
とても心に刺さる言葉があった。
そして、私の中のモヤモヤくすぶる雲を吹き飛ばしてくれた。
 
そうだ。そうなのだ。
私が伝えたい事はまさにこの事だった。
 
パパとママが愛し合って結婚して、子供が欲しいと切に願って、やっと誕生した命。
だから娘のことを誰よりも大切に思っている。
 
人が愛し合うことと、生まれてくるまでの神秘的な仕組み。
そのために、性器やおっぱいがある。
 
とても大切その部分は隠して守らなきゃいけないこと。
気軽に人に見せてはいけないし、触らせてはいけない。命を作り出す大事な部分だから。
 
世の中には、その大切な部分にイタズラをしようとする悪い大人や、いやがらせをする人もいる。
触ってくる人がいたら「イヤだ」とはっきり言うこと、拒絶することが大事。
 
性的なことでからかわれても、何か被害に遭っても恥ずかしがる必要はない。
そんな人は自分の命や体が大切だということを知らないだけだから…
 
パパとママは、愛する娘のことを恥ずかしいなんて思ったりしない。
だから自分に自信を持って、困ったことがあったら相談するんだよ……。
 
話しの流れが自分の中であっという間に組み上がった。
絵本の中の不足していた説明が、全部出そろった。
 
そして、いつ話すべきかも自然に答えがでた。
 
「娘の誕生日こそ、それに相応しい日はないじゃないか!!」
 
12月の初旬、娘の誕生日が来た。
誕生日の夜、お祝いを終え就寝時刻が迫ってきた頃、娘が痺れを切らしてこう言ってきた。
 
「ねえ、大事な話ってなあに?」
 
2日前に、娘に前振りしていたのである。
 
「今日は、おまえが生まれてきた時の事を話そうと思うんだよ」
 
私はそう言って寝室に用意してあった2冊の本を取り出した。
そして私の企みは無事実行に移された。
 
娘はどう受け止めてくれたかだろうか?
性と命はつながっていることを、記憶に留めてくれただろうか?
 
話の途中から妻が一緒に加わってくれた。3人川の字に並んで寝転びながら、娘の誕生日から今日までの事を思い出しながら話をすることができた。期せずして、私の妻への感謝や愛情についても伝える事ができたのはとてもよかったと思っている。
 
そして5年後、10年後も私たち家族3人の記憶にずっとのこる、印象的な誕生日となっていたら嬉しいと思う。
 
 
 
 
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2019-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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