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ウェルカム迷惑!!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋 共子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「お母さんは家で見る。お父さんなら大丈夫だから」
 
母が倒れて1ヶ月。
意識は徐々に朦朧としていき、私たち家族のこともわからなくなった。
ついには歩けなくなり、立てなくなり、トイレも行けず、栄養は管から摂るようになった。
 
それでも父は、最後まで譲らなかった。
 
「大丈夫だよ。これ以上の入院はお金もかかるし。これ以上みんなに迷惑かけられんよ。料理だって洗濯だってお父さんできるんだから、お母さんだって家で面倒みられるさ」
 
いやいや待て待て。
母は要介護5。
完全な寝たきり状態だ。どう考えても無理でしょう。
 
ただでさえ父ももう70になって、持病もある。
体力だって相当落ちているのに。
お父さんも一緒に共倒れになるよ。
頼むから勘弁して。
 
「大丈夫だ、大丈夫だから」
 
苗字が変わって嫁に行った娘二人だからこそ、余計な心配をかけたくないという気持ちもあったのだろう。
 
これまで数十年間、母の具合が日に日に悪化していく中で、どんな状況でも投げ出すことなく、離婚という最後の切札も切ることなく、夫婦連れ添ってここまできたのだ。
最後まで病院や施設のお世話になるのではなく、自分の手でお世話したいという気持ちも想像にかたくない。
 
しかし、それでも頑なに譲らない父を見て、
 
「周りの人に頼らない、迷惑をかけない、って頑なに譲らないのって、周囲を不安で辛い気持ちにさせるんだな」と感じたのだった。
 
「人に迷惑をかけてはいけません」
 
先生にこう習ったのはいつだったろう。
小学校、いや、幼稚園だろうか。
 
子のいる親御さんに話を聴くのが仕事の一部である私は、「どんなお子さんに育って欲しいですか」とインタビューする機会も多い。
すると一定確率で返ってくるのもこの答えだ。
 
「人に迷惑をかけないような子になってくれれば」
 
でも、ここで考えたい。
そもそも「人に迷惑」って、どこからが迷惑なんだ?
 
まぁ「人に迷惑をかけたいですか」と質問して「はい」という人はなかなかいないだろう。
「人に迷惑をかけられたいですか」と訊かれて「ぜひ」という人も、たぶんとても少ない。
 
「人に迷惑をかけ続ける人生」
うん、なんだか字面だけで辛くなってくる。
 
だけど、そもそも「はい、ここからが迷惑ですよ」って一体、誰が決めることなんだろうか。
 
例えば今日の私の出来事でいうと、駅からの帰宅途中に自転車を漕いでた私の1メートル前で、これまた自転車に乗ったオッサンから発せられていた、喫煙タバコ臭。
あれは地球がひっくり返っても私にとっては迷惑でしかなかった。
だって、煙たいんだもの。喉が苦しいんだもの。
わざわざ自転車に乗って、後方に煙撒き散らしてまで吸う必要のあるタバコなんてない。
明らかに迷惑。そしてたぶんこれは世の過半数以上の「迷惑ボーダー」賛同を得られる気はする。
 
でも、例えばこんなのはどうだろう。
 
友達が大好きな彼氏に振られた。
悲しすぎて孤独で辛くてとにかく一人になりたくなくて、「今日家に泊めてほしい」と泣きながら電話してきた。
 
自分の友達が本気で辛い思いをしていてこんな風に頼まれたら、私は迷惑だって感じない。もちろんこちらの家庭の状況や忙しさによっては物理的に無理な時もあるかもしれない。
でもむしろ、「一番辛い時にこうして頼ってくるなんて、私のこと信頼してくれてるんだな。嬉しいな」とさえ思う気がする。
 
「明日も朝早いのに迷惑かけてごめんね」と親友は言うかもしれないし、そもそも電話すら「迷惑だからやめておこう」としてこない可能性だってある。
そんなとき私は間違いなくこう言うはずだ。
 
「迷惑だなんて思ってない、むしろそういうときのための友達でしょ。どんどん頼ってこい!」と。
 
迷惑ってなんだ。
誰が決めるんだ。
確かに相手が迷惑と思ったら迷惑だ。
でも、それがタバコのおっさんみたいに過半数以上の人にとって苦痛なものでなければ、最後は勇気を出して相手にぶつけてみなければ、迷惑かどうかなどわからないのではないか。
 
「わかった。お母さんは施設に預けよう。お前たちにも心配かけたくないもんな」
 
医師、看護師、私たち姉妹総出で説得にかかった結果、父は最終的には折れた。
少し寂しそうな表情を浮かべながら。
 
ところがいざ施設に入ってみると、結果的に母の体調は心身ともにみるみる快復して行った。
半年経った今では、つかまり立ちができるようになり、少しずつ固形物も食べられるようになり、私たちとも元気に会話できるまでになったのだ。
 
今はコロナで会えていないが、「お母様、とっても元気になられましたよ」と介護従事者さんから嬉しい連絡をもらった。
 
毎日のように母の面会に行く父も、今では母の喜びそうな差し入れを持って行って楽しそうだ。
一人暮らしの寂しさもありながらも、24時間の絶え間ない母の世話から解放されて、ぐっすり眠れるようになったらしい。
 
周囲の人の胸を借り、頼るということは、時として「迷惑」どころか、相手への「信頼」にさえ繋がる。
 
辛いとき、苦しいとき、困ったとき。
誰もが長い人生の中で訪れるそのシーンで、少しだけ周りの人を頼ってみることができたら。
そこに生まれるのは、「迷惑だ」という煩わしさではなく、今まで見えなかった「安心」「つながり」かもしれない。
そしてその後には自然と、「ありがたい」という気持ちが湧いてくるに違いない。
 
将来もし私に子供ができたら、こう言ってあげよう。
 
「一度周りの人に頼ってみると、いいことあるかもよ。ウェルカム迷惑!!」
 
 
 
 
***

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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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