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メディアグランプリ

貧困による死は想像力の欠如から生まれる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中島大樹(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「くそったれ!」
嫌な夢を見た。最低な気分だ。
のそのそとダンボールから這い出ると、周りのホームレスはすでに居なくなっていた。
おそらく空き缶拾いにでも行ったのだろう。
こんな所で寝ているから昔のことが夢に出てくるのかもしれない。
 
俺は動く気になれず再びダンボールにくるまった。
 
今でこそ俺はホームレスだが、昔は裕福だった。
父親が会社の社長だったのだ。
そこそこの規模の飲食業を中心の会社だった。
小学生の時は同級生も皆みすぼらしく見えていたし、ホームレスや貧困に陥る人など理解不能だった。
 
「おい、何でそんなきたねー格好してんだよ」
「なんとか言えよ!」
今俺の生活の中心になっている河川敷で小学生の時の俺はあろうことかホームレスのおっちゃん達を同級生数名で虐めていたのだ。
殴っても蹴っても小学生相手にすら何も言い返してこないホームレスをいたぶるのは快感だった。
今思うと吐き気がする。
 
しかし新型コロナウイルスという未知のウイルスの襲来により、飲食業の業績はたちまち悪くなった。
何とかしようと父親も必死だったが、徐々に閉店するお店が増えてきて、リストラもした。
その頃から自宅の電話は頻繁に鳴るようになった。
父親は電話に出なくていいと言ったが、頻繁に鳴る電話に母親は怯えているようだった。
たまに自宅に怒鳴り込んでくる人もいて、子どもながらに良くないことが起こっていることは感じていた。
しかし、今まで裕福に育ってきた俺は、それでも何とかなるだろうと楽観的な自分もいた。
 
ある日、学校から帰ってくると家の中が真っ暗だった。
いつもだったら母親が居て出迎えてくれるのに、おかしい。
何だか嫌な予感がして、急いで靴を脱いでリビングに向かった。
 
嫌な予感は…的中してしまった。
 
その日のうちに後を追うように父親も仕事帰りに車を走らせている時に事故を起こして亡くなった。
 
その時のことはよく覚えていない。
おそらく状況が理解できなかったのだと思う。
気づいた時には児童養護施設というところに入っていた。
施設に入ってからは、生きる気力を失い、学校も不登校の状態だった。
それでも施設のスタッフさんたちはすごく良くしてくれたと思う。
不登校ながらも高校は通信制の高校に行き、何とか卒業をすることは出来た。
 
その後施設を出て、ひとり暮らしをはじめた。
仕事もしていたが、長くは続かず…いくつか転々と仕事をしたものの最終的には借りていた部屋を追い出されてしまい、今に至っている。
 
この河川敷でホームレスをするようになったのはこの辺ではホームレスが集まって生活しているのはここだけで、自分以外にもホームレスがいることに安心した。
 
ある日のよるホームレスのおっちゃんたちが集まって焚き火をしながら談笑していた。
「おめぇ久しぶりだな! どこ行ってたんだよ?」
「いやぁ福祉の人に保護されて施設に入って、それから就職もしたんだけども怪我して働けなくなってな」
「結局またホームレスしてるよ」
 
誰かが出戻りで戻ってきたららしい。
様子を見ようと思い、ダンボールの中から顔を出すと…驚愕した。
 
「君はどっかで会ったかな?」
「まぁいいから君もこっちにきて一杯やらないか?」
 
言われるがままにダンボールから出て一緒に焚き火にあたった。
俺は言葉が出てこなかった。
「お兄ちゃん若いのに大変だったんやね」
そのおっちゃんは静かにそう言った。
俺は自然に涙が溢れ、今までのことを色々話した。
おっちゃんも黙ってそれを聞いてくれた。
俺の人生の中で一番心休まる夜だったのではないかと思うほど、心地よかった。
 
しかし、そんなことを感じるだなんて無責任で最低なヤツだとも思う。
 
翌朝、やはりおっちゃんにはあの時のことをちゃんと謝罪しなければと思い立ち、おっちゃんが横になっていると思われるビニールテントのところへ行った。
テントの外から声をかけたが反応はない。
留守なのかとも思ったが、嫌な予感がした。
 
俺の予感は当たるらしい。
おっちゃんはテントの中で血を流して倒れていた。
「おっちゃん!」
俺は叫んでいた。
「大丈夫だから、君は何かを伝えてに来たんだろう?」
おっちゃんは優しく静かにそう言った。
誰かに暴行されたのだろうか全身に殴打の痕があり、とても大丈夫そうには見えなかった。
「いいから、早く言いなさい」
そう促され、小学生の時に暴行したのは自分であることを白状した。
「知っていたよ」
「でも君も現実を知ったんじゃないか?」
そう言いながらおっちゃんは吐血した。
「救急車呼んでくるから!」
そう言い残し、ぼくは近くの人に助けを求めた。
 
おっちゃんは搬送先で亡くなった。
 
俺はこのままでは駄目だ。
いつか同じように知らない誰かに暴行されて死んでしまうのではないかという恐怖に襲われた。
 
その後俺は生活保護施設に入り、生活保護を受給。
職業訓練を受けて、就職。
働きながら、ホームレスの支援にも力を入れている。
 
もうあんな悲劇が起こらずに済むように…。
 
貧困は誰のもとにも忍び寄る可能性がある。
新型コロナウイルスによってそれを身近に感じた人も多いはずだ。
 
だから想像しよう。
 
想像せずに発したあなたの心無い発言は貧困に陥った人たちや生活保護を受けている人たちを苦しめている。
 
だから想像しよう。
 
貧困に陥った人たちを苦しめることは、あなた自身の首を絞めることだ。
 
だから想像しよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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