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餃子作りは半径1mの外交だ


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記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「今日は餃子にしよう!」そういう気分の時がある。
 
餃子は大好きだし、キンキンに冷えたビールがその横にあったら至福だ。
私の場合、こんな気分の時は大抵「手作り餃子」を指している。
 
美味しい餃子が食べられるお店は山ほどある。冷凍餃子にしてもレベルが高い。
一方、自宅では材料を買ったり調理したり手間暇かかるものだ。100個作ろうとしたら結構大変だ。正直面倒な時だってある。
 
でも、私にとっての「餃子作り」は美味しさだけではない重要な意図がある。
何故なら、餃子作りを通して身近な人と交渉しようとするのだから。交渉というと下心などを連想されるかもしれないがそれはちょっと違う。一方的に説得するのではなく本音を探り意見が合意するところまですり合わせていく。そういう意味では「外交」なのかもしれない。
 
「餃子作りは外交だ」
 
その原点は私の子供の頃に遡る。
当時料理好きの母はよく餃子を作ってくれた。
餃子のタネになるキャベツやニラなどの野菜をみじん切りにする母の背中を
ワクワクしながら見ていたものだ。黙々と刻み続ける姿はとても格好良かった。
 
ある時のことだ。母の背中の気配がいつもと違っていた。
理由は分からないけれど「何か怒っている?」「イライラしている?」
根拠のない子供なりの直感かもしれない。
決して強い感情を出さない母だけれど、その時の野菜を刻む背中は逃げ場のない感情を野菜にぶつけているようだった。
 
トントン、トントン……台所に響く規則的な音の中、
「今は話しかけちゃいけない」
子供ながらにそれを感じ、静かに母の背中を見つめるだけだった。
 
そんな私も大人になって餃子を作るようになった。
特に強い感情が湧き上がる時、手作り餃子はよく登場する。
 
仕事で失敗した。失恋した。友達と喧嘩した。理不尽な目にあった。
泣きたくなってしまう気分の時、無心で野菜を刻み続けると心が軽くなる。
いつの間にか暴走している「脳内の声」が大人しくなっていく不思議な感覚。
 
きっと当時の母は自分を整えていたのだ。そういえば餃子が食卓に上る頃には、母はいつもの静かな母に戻っていた。私は母の背中の意味が少しだけ分かったような気がした。
 
そして、餃子作りを通して新しい発見もあった。これは私にとって大きな収穫かもしれない。
 
だいぶ以前のこと、餃子を包む工程を家人達に手伝ってもらった。
包み方を簡単に伝え後は淡々と作業を進めるだけのこと。
100個近い餃子を包むとなると時間もかかる。そこで私は、餃子を包みながら最近気づいたこと、問題に感じていることを手を動かしつつ何気に呟いた。
 
ちょっと帰り遅いと思うよ
飲み過ぎじゃない? 体に毒だよ
お小遣いの値上げの件、正直難しいな
最近誰と遊んでいるの?
 
他所からみたら他愛のない日常会話だ。
一見小言のような呟きだけれど、餃子を包みながらの会話はとても柔らかく
穏やかに時間が過ぎていく。家庭内の言葉のやり取りは、つい一方的になりがちだけれど、この場では交渉がちゃんと成り立っている。ある意味食卓を囲む半径1mの外交ともいえるかもしれない。
 
餃子を包みながら本音をぼそぼそ呟く。それを聞く他の家人は云々と手を動かしながら頷いている。お互いが「それもそうだけどね……」と妥協点を探ろうとしている。
 
餃子のタネを囲むテーブルはとても静かだ。
誰も激高して包んだ餃子をひっくり返すことはない。席を立つこともない。
 
これに関しては、相手の目を見ないで、手をチマチマと規則的に動かし続けることによって「争う熱量」が分散されるのかもしれない。巷の喧嘩話ではガン見が発端になるらしいと聞いたりする。「相手の目をみてきちんと話をしましょう」と学校では教えてくれる。でも本音や言い難い事は面と向かっては難しいものだ。つい言い過ぎたり熱がこもり過ぎたり本音とは違う所へ問題は発展ししまう。
 
そのような理由付けをしなくても、何故だか餃子作りは人を冷静にさせてしまう不思議な力があるかもしれない。それに加え、夕食に上るはずの大好きな餃子を自ら包んでいる。やはり破壊したり、啖呵を切って退出したりは出来ないようだ。
 
その事に気づいてから、私にとっての「手作り餃子」の位置づけがランクアップしたのは言うまでもない。単なるストレス解消から、交渉に使えるツールとなった訳だから。
 
この「餃子マジック」実は私の周囲には話していない。
そんなことを伝えたら、「今夜は餃子にしよう!」と誘った途端身構えられてしまうかもしれないからだ。
 
言い難いことやじっくり本音を聞きたい時、やはり餃子は度々登場する。
人間フードプロセッサーばりに大量の野菜を刻みながら自らの心を整え、穏やかに交渉の場に向かっていく。
 
声高らかにプレゼンするのではなく、お互いの落としどころを静かに探るような半径1mの外交術だ。
 
「今夜は餃子にしよう!」
私がこう宣言する時は、餃子でなくてはいけないのだ。
 
静かな外交戦術は、野菜を刻む音からスタートする。
そして交渉が無事まとまった後の「餃子とビール!」
 
「カンパーイ!」
こんな祝杯は美味しいに決まっている。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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