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「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」と思わないために


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記事:佐藤 純平 (ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」
というフレーズだけを聞いてピンッとくる人は少ないかもしれない。
 
2002年7月11日に発売されたプレイステーション2用のゲームソフト『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』に出てくるセリフだ。
ぼくのなつやすみ、通称『ぼくなつ』は、小学3年生の主人公「ボクくん」の夏休みを仮想体験できるアドベンチャーゲームである。
虫相撲や魚釣り、海水浴など誰しもが体験したことがある夏休みの出来事を、ゲームの中で自由に満喫することができる。
 
初めてこのゲームをプレイしたのは、ぼくが小学生から中学生になるぐらいの頃だった。
母親に無理を言って買ってもらったプレステ2。
その時に一緒に買ってもらったのがこのソフトだった。
 
当時ぼくは野球クラブに入っていて、夏休みも野球漬けの毎日を送っていた。
めちゃくちゃ野球が好きってわけでもないのに、友達に誘われたからという理由でクラブに入部していた。
本当は「もう辞めたい」って思っていたけれど、監督も怖いし、友達の目も気になるし。
臆病者のぼくは「辞めたい」という一言をなかなか言い出せずに、我慢して野球をやっていた。
 
そんなこともあって、現実世界の夏休みはそんなに楽しくなかった。
野球の練習が休みの日には、仮想世界の夏休みに逃げ込んでいたのだった。
 
プレステ2をはじめてプレイしたときには、これが「ゲームなのか!!」と思えるぐらい画像が綺麗で衝撃を受けたのを覚えている。
思わぬ出費を食らってしまった母親を呼びつけては、「見て! めっちゃ綺麗!!」と無理やり『ぼくなつ』をプレイしてるところを見せていた。
自分で呼んだくせに母親の感想など全く聞かず、ぼくは夢中で『ぼくなつ』をプレイしたのだった。
 
『ぼくなつ』の主人公ボクくんは、毎日絵日記をつける。
「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」
特に大したイベントを起こせず一日を過ごしてしまうと、ボクくんは絵日記にこのように書く。
この絵日記の内容によって、『ぼくなつ』のエンディングは変わってくる。
もちろん「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」はなるべく出ない方がいい。
 
ぼくは「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」を出さないために『ぼくなつ』を必死にプレイしていた。
少しでもボクくんの夏休みが充実するように努力した。
それでも「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」をボクくんが絵日記に記すことはあった。
その瞬間時計に目をやると、「あ、もうこんな時間か」と気づく。
そして、しばらくした後にさらに気づく。
「あれ? 今日ぼく、『ぼくなつ』以外になんかしたっけ??」
 
今思い返すと、あのときぼくは、仮想世界に逃げ込んでいて、現実世界に目を向けることができていなかった。
ゲームの世界で何かを起こそうと必死になっていて、現実世界で何かを起こそうとしなかった。
だからゲームの世界と一緒で、「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」としか思わない日々を過ごしてしまっていた。
 
「なんにもない」なんて日はどんな日だとしてもないのだとは思う。
「なにか」は必ず起こっているし、感じているし、考えている。
でも、ゲームの世界にばかり目を向けていて、現実を見ようとしないと、それに気づくこともできない。
「なんにもない日だった」としか思えない。
 
別に特別なことをする必要はない。
ありふれてると思える日常にだって、色々なことが起こっているんだ。
 
日々を重ねる中で、きっと、「きょうはなんにもない一日だった」と思ってしまうこともある。
野球に真剣に向き合えず、せっかくの夏休みを楽しむこともできず、ゲームの世界に逃げ込んでいたあの日のように。
そんなときにでも、本当にそうだろうか? と立ち止まって考えてみるといい。
何かしらは必ず起こっている。感じている。考えている。
それに気づけるかどうかは自分次第だ。
 
小学生の頃の自分に言ってやりたいのは、、ゲームの世界だって面白いけど、現実世界だって面白いってこと。
現実世界が面白くないからって、仮想世界にばかり目を向けていたら、さらに現実世界が面白いと感じなくなるってこと。
『ぼくなつ』と一緒で、現実世界だって自分が行動を起こさなければ、何もイベントは発生しないってこと。
 
いまのぼくは、「ボクくん」じゃなくて、「ぼく」が「きょうはなんにもないすばらしい一日だった」と思わないために、日々を必死に生きているよ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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