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仕事のできる大人になるための秘密の鍵は目の前にあった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:木内文昭(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「自分らしく、やりたいように生きろ!」
大学5年生の3月、約半年間のリクルート社でのアルバイトを終えた自分に、
課長のIさんが色紙に書いてくださった言葉が、これから就職活動する自分に勇気をくれた。
 
大学4年生の初夏に、1年留年することが決まった。
自分の親に「自分で学費と生活費を稼ぐので、浪人させてください」
とお願いをしたからには、自分で学費を工面しなきゃいけない。
社会人になったら少しずつ返すタイプの奨学金を申し込んだものの、
当時一人暮らしをしていた自分には全然お金が足りなかった。
 
知り合いのつてを辿ってリクルート社の面接を受け、
夏から就職情報誌の繁忙期対策の学生アルバイトとして、雇ってもらった。
朝9時に出社し、18時から19時くらいまで、毎日出社して仕事をする。
当時新橋にオフィスがあり、朝から満員電車に揺られて出社した。
 
それまで、毎日朝から晩までアルバイトをしたことがなかった。
ダルそうな顔をした、ぐったりしたサラリーマンや電車でよだれを垂らしながら
爆睡している大人達を電車で見るたび、「あんな大人にはなりたくない」と思っていた。
 
が、毎日同じ時間に出社し、仕事をするというのはこんなにも大変なことなのか。
自分の小ささと了見の狭さを思い知った21歳の夏だった。
 
仕事内容は企業から集まった就職情報誌に掲載する企業の様々な情報の
誤字脱字のチェックをしたり、社員のおつかいを頼まれたりするような内容だった。
つまり、誰でも良いとは言わないけれど、自分じゃなくてもできる仕事ではあった。
 
そして、同じフロアには企業に就職情報誌掲載の提案をし、仕事をとってくる
営業担当の社員さんがたくさんいた。
 
そこには、活き活きと仕事をする、かっこいい大人がたくさんいた。
その中でも、某大手通信会社に年間何億円もの提案をして、
大型受注の記録を塗り替え続けるトップ営業のIさんが存在感を放っていた。
 
この人たちは、自分が満員電車で見るぐったりしたサラリーマンとは別の人種なのかもしれない。
次第に僕はそう思うようになっていた。
 
どうしたらこの人たちのように、活き活きと仕事ができるようになるのだろう。
 
社員さん達はとても元気で、よく飲みに行っていた。
次第に、仕事に慣れてきて遅くまで残ってたりすると、
「お前も行くか?」と飲み会に誘ってもらえることもあった。
 
そのほとんどは仕事の話で、学生の僕には難しすぎてわからないことが多かったけれど、
とにかく真剣に、クライアントを、世の中を、少しでもより良くしようとしている人たち、
ということがよくわかった。
 
どうしたらこの人たちのように、活き活きと仕事ができるようになるのだろう。
そこにかっこいい大人になるための秘密の鍵があると思った。
 
いても経ってもいられなくなった僕はある日、Iさんに「飲みに連れて行ってください」と思い切ってお願いをしてみた。
トップ営業マン独特のオーラがあり、メガネの奥の鋭い眼光で一瞥したのちに、
「うーん、今は忙しいからまた今度な」とあっさり断られた。
 
リクルートでも1、2位を争うほど忙しいIさんにとって、
僕と飲みにいくメリットは恐らく1ミリもない。断られて当然だった。
 
しかし僕は諦めが悪かった。
2回目は少し工夫をして、Iさんに頼まれたおつかいの報告をしがてら質問をしてみた。
 
「なぜリクルートの人は皆さん一様に活き活きと仕事をしているのでしょうか?」
「そうだなー、なんでだろうなー」
「ぜひ、飲みながら、教えてください!」と再び思いきってお願いをした。
するとIさんは苦笑しながらも「いいよ、いつ行く?」と時間をとってくれた。
 
Iさんとの飲みの日はどんなことを質問しようかと、びっしりと書いたメモ帳を片手に、
ワクワクしてビアバーに連れて行ってもらった。
 
Iさんの話は本当に面白く、勉強になることばかりだった。
1番の学びは、Iさんは本気で面白いことを仕掛けよう、世の中を変えてやろうと思って、
全力で仕事をされているという事だった。
 
面白い仕事がそこに存在しているという訳ではなくて、
熱意ある人が意欲的に仕事に取り組んだ結果、
面白い仕事になるということなんだな。
おぼろげながら、自分なりにそう解釈した。
 
それから少し、自分のアルバイト時間中の過ごし方が変わった。
 
言われたことだけやるのではなくて、自分ができることで社員さんの役に立てることはないだろうか。
「何か僕に出来ることはありませんか?」と周囲に聞いて回るようになった。
 
そうすると、少しずつ独自の頼まれごとが増えていった。
「この本のこのページを資料にまとめてくれる?」
「ちょっと社内のAさんとBさんにこの項目ヒアリングしてきて」
他の多くのアルバイトの同僚がやっている就職情報誌の校閲チェックの仕事が徐々に減っていった。
 
他の人にではなく、自分が指名されることが嬉しかった。
当時のリクルートには「仕事の報酬は仕事」という言葉があって、
それを少しだけでも体感できたことが、誇らしかった。
 
一生懸命話をすると、ちゃんと聞いてくれる。
そして、ダメな仕事にはちゃんと、ダメ出しをしてくれた。
今考えたら仕事とは言えないレベルのアウトプットばかりだったに違いない。
にもかかわらず、リクルートの大人たちは親身になって、アドバイスをしてくれた。
時に、僕が実施したいと提案した調査の実現に、
社員のMさんが付き合ってくれて、社内の色んな人を紹介してくれることさえあった。
 
毎日出社していたある日、自分が就職活動直前の学生でもあるということに気づいた。
周囲の大学の知人達に、これから就職活動を迎える学生の悩みや困りごとをインタビューして簡単な資料にまとめ、朝会で数分、時間をもらって発表させてもらった。
 
今考えるとものすごくチープな資料だったに違いない。
けれど、社員の皆さんは「学生のリアルな生の声で面白い」と言って褒めてくださり、
毎週の朝会で3分、発表させてもらえることもあった。
 
そうこうしているうちにあっという間にリクルートでのアルバイトが終わった。
就職情報誌を作るために必要な繁忙期が、終わったのだった。
正直最後の方は就職情報誌の仕事はほとんどしていなかったけど、
また来年も頼むな!と言ってもらえて嬉しかった。
 
リクルートでは、退職時に「卒業」といって色紙にメッセージを書いて送り出すことが慣習だった。
これから就職活動を迎える僕に書いてくれたのが、「自分らしく、やりたいように生きろ!」
という力強いIさんのメッセージだった。
 
リクルートのかっこいい大人達が、学生時代の僕に
「活き活きと働くかっこいいオトナのスタンダード」をまざまざと見せてくれたことは、
僕の仕事人生の生涯の宝物となった、本当にありがたい経験だった。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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