まゆげ君からアイメッセージ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:福見大地(ライティング・ゼミ特講)
言葉が足らない、と感じる事の多い日々である。
組織、チームで共同作業をするとき、人数が増えれば増えただけ行き違い、齟齬が多くなる。
まゆげ君は、学生時代に失敗した。
中学からの親友のまこちゃんははやい男だった。
まず、登校時間が早い。
昭和50年代、月曜日といえば少年ジャンプの発売日。彼は毎週登校前には読み終わり、気前よく、1時限前にさっさと友達に回してしまう。漫画を読むのも早かった。
勉強もよくできた。ノートを取るのも内容を理解するのも早かった。
加えて、早口で喋る量も半端ない。
走るのも速く、クラスで一番。いつも無駄に廊下を走っていた。
それで喧嘩っぱやいとくるから、いつも賑やかな奴だった。
まゆげ君を始め、みんなまこちゃんが大好きだった。
まゆげ君は彼と方向が同じでよく一緒に東横線で寄り道しながら帰った。
まこちゃんは母に学校での一部始終を報告するのも早かった。
一人っ子の彼は、どこか寂しさを感じていたのかも知れない。
当時流行りの六本木のダンスクラブのチケット販売を手伝っている同級生のことを悪気はなかったと思うのだが、母親に一部始終話してしまい、それが学校に知れる事になった。寛容な学校ではあったが、販売に関与した者には厳重注意と禁止令が言い渡された。
その後、まこちゃんはその仲間から反感を買い、集団無視を受ける事になった。
まゆげ君は販売に関与していなかったので、気づくまで少し時間がかかったが、まこちゃんが一人でいることが多いのに気づき、声をかけると
「大丈夫、大丈夫。全然気にしてないから」
と彼は明るく答えていた。部活に勤しんでいたまゆげ君には、帰宅部まこちゃんを慮ることが全くできなかった。
6月のある朝、朝礼にきた沈痛な面持ちの担任の先生の雰囲気に教室がざわついた。
「大変残念なお知らせがあります。昨日、亡くなりました。」
まこちゃんは絶命するのも早かった。
後日先生から肺炎で亡くなったと伝えられたが、とても受け入れ難い話だった。
まこちゃんが自殺したと正式に教えられたのはそれから2年後、まゆげ君が高校を卒業する時だった。
彼は、救いの言葉をかけれなかった自分を責めた。
そしてこれからは自分の周りに自殺する仲間を絶対に見殺しにしないと心に誓った。
まゆげ君は高校を卒業後、
1 グループの全員に目を配ること
2 声かけしにくい時ほど声をかける
を実践することにした。
まゆげ君は常に暗中模索の中、彼は自分から声掛けすることは厭わなかったが、自分側にも相手側にも壁を感じていた。
自分側にぶつかる壁は「偽善」と「博愛主義」だった。
万人と同調していくことは難しい。多少は寛容に受け止め、相手の自己肯定感を尊重することが必要である。しかし、それを「偽善」と指摘され、まゆげ君は苦しんだ。また、身近な二人の意見が食い違うと、「博愛主義」で両者を立てることは絶対できず、苦しんだ。次第に自分の軸が定まらず、周囲を振り回してしまうことに気付き、まゆげ君は古えの言葉に救いを求めた。
相手側に感じる壁は、自己主張の強い人に対する「閉塞感」と、自分の意見を伝えようとしない人の「欺瞞」だった。それでも、自己主張の強い人はむしろ扱いやすいと感じていたが、自分の意見を伝えない人の多い組織には辟易とした。まゆげ君は断固改善を訴えた。特に議論と口論の区別ができず、発言を躊躇するのはよろしくない。繰り返し繰り返しチームに改革を求めた。まゆげ君は言葉を駆使して訴えるが、行動変容を起こすのは簡単なことではない。
それから30年を経て、まゆげ君は、教育に造詣が深いわけではないが行動変容のためにもアイメッセージが必要だと考えている。
言霊文化が伝統の日本ではその力は絶大だと信じている。配慮に欠けた一言で相手の気持ちが萎えてしまう恐れはあるかも知れないが、それでも伝えなくてはいけない時は勇気を持って伝えようとまゆげ君は思う。
言いづらくても言わなくてはいけない時が必ずある。
仲間が上手く仕事ができなかった時、先輩、上司は黙って見過ごしてはいけない。そっと自分で片付けて、何事もなかったように振る舞うのは大人の流儀なんかではない。
そんな時はまゆげ君はアイメッセージを送ることにしている。
携帯電話でピコピコ送るメールの類ではもちろんない。
直接、私はを主語にして相手にしっかりと伝える。
愛のある言葉を伝える。
アイメッセージが仲間の心の重荷を軽くしてくれたら
とまゆげ君は思うのである。
***
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