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人生の一時停止ボタンの押し時


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森真由子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
しまった……。どうしてこうなってしまったのだろう。
いつから自分の人生の生き方すらも、分からなくなってしまったのだろうか。
いや、人生の生き方自体を意識したことが、今までそもそもなかったのかもしれない。
社会人になって数年、積もりに積もった不安が改めて形となって自分にのし掛かってきた。
 
自分の人生をどのように生きたいのか、ちゃんと考えた上で生きている人はどれくらいいるのだろうか。
将来像や理想像ががっちりと固まっていなくても、何かしらのイメージを持っている人を尊敬する。そういう人たちの考え方、生き方をよく観察して、自分も触発されてほしかった。何も考えていなかった過去の自分に対してそう思ってしまう。
 
私が勤めている会社は、若手の育成制度として、数年で違う部署の業務をいくつか経験しなければいけないというルールがある。
だから一つの部署やグループで業務を始めてから2〜3年経ったあたりから、次はどこの配属に任命されるのだろうか、と若手従業員は構え始める。加えて、半年に1回ある直属の上司との面談では次はどこの部署やグループに行きたいか、という要望を話す必要がある。
そこで、私は前述していた問題に直面していた。
 
入社当初から希望通りの業務に配属されていたことから、最初の数年は今の場所でそれを極めたいと上司に伝えていた。
けれど、いよいよ異動しなければいけない年次が迫ってきたため、今までと同じような話では済まされない。今の業務以外で自分がやりたいことを上司には明確に伝えなければいけない。
ここ2年ほどは考えているのだけれど、その他に何をしたいのか、自分のことなのに正直全く分からなかった。
 
何をやりたいのかを考えているときに、回り回って最終的にはどういう生き方をしたいのかという問いに辿り着いてしまった。
恥ずかしながら、社会人になった後に何をしたいのか、ちゃんと考えたことがなかった。
学生のときは高校と大学に入るために受験をし、大学生活をそれなりに過ごして卒業をすれば会社へ入る。そこまでできればあとは定年までに働き、老後は淡々と過ごしていく。人生に対して、そんなイメージしか持っていなかった。
だから就職先が決まり、大学を卒業したら、人生のほとんどはそれで完成したようなものだと知らず知らずのうちにそういう価値観を持っていた。
 
だからここにきて、やりたいことを考えなさい、と言われて戸惑った。
進学や部活に入るなどという選択はいくつかしてきたが、それを欲して選択してきたかというと、そうでもなかった。それ以外の選択肢がなかったように感じていたから、そうしてきただけだった。
今の業務も固執しているというわけではなく、ある程度興味があってその会社の中でできそうだと思い付いたものがそれくらいだっただけだった。
 
「自分は何も考えずに生きてきたのだと、社会に出てからよく分かったよ」
仲のいい友人たちにはついついこう漏らしてしまっていた。
こんなことを言っても仕方がない、と言った直後に反省したが、意外にも同じことを彼女たちは感じていたのだとその後の話で分かった。
大学へ進学して、企業に就職するという人生のルートが当たり前になっている友人が多かったからかもしれない。自分が何をしたいのかに基づくのではなく、無意識のうちに就職することがゴールになっていた。
 
某有名男性アイドルグループが活動休止をする予定と宣言したニュースが2年ほど前にあった。
メンバーの一人が、自由な時間がほしいと切り出したからだった。
当時このニュースを見たとき、実力もあって、名声も獲得しているのに休止するなんてもったいない、と思っていた。もちろん本人が背負っているプレッシャーや責任の重さは、一般人からすると想像を絶するものに違いない。それでも彼らが見ているたくさんのファンの笑顔ほど景色のいいものはないのではないか、と思っていた。
 
だけど、今ならなんとなく分かるような気がする。
自分と向き合って、何を求めているのか、何をやりたいのかを整理しないといけない、と私のような未熟者でも感じている。だから、そのアイドルこそ多忙で目まぐるしく過ぎていく生活の中で、立ち止まることを強烈に欲するようになったと想像している。
 
アイドルである彼と違って私は何も成果を残していない。こういう人にも立ち止まることが必要なのか。
何をしたいのか分からないなら、くよくよせずにまずは行動しよう。そして行動していろいろなものに触れていたら、そのうちやりたいことが出てくる。私はこう言われてきた。
だけどここに来て、やはり立ち止まろうと考えている。
なぜなら、私の場合は、あまりにも考えなさ過ぎたからだ。目の前のことばかりに一生懸命になってしまい、気持ちの奥底にしまっていたやりたいことに対して、どういうことをしないといけないのかをちゃんと考えたことがなかった。
 
周りと同じように生きていれば、きっと何かしらの答えに行き着くと思っていたけれども、一向に行き着く気配はなかった。
同じような悩みに直面している人は、もしかすると自分の人生の一時停止ボタンを押さないといけない時期に差し掛かっているのかもしれない。
勇気を振り絞って自らそのボタンを発動した男性アイドルのように、タイミングを見つけて、自分自信でその一時停止ボタンを押す準備を進めていきたい。今は、こう考えている。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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