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過去へのミステリートレイン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田澤恭平(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
僕はコーチングやカウンセリングをしている。
仮に精神状態が良い状態をプラスとする。良くない状態をマイナスとする。その境界線が0である。
カウンセリングというのは、マイナスを0にすることを目的としている。
コーチングはプラスを更にプラスにしていくことが主である。
クライアント(お客さん)が明確にどちらのセッションをして欲しいと分かっていることもあるが、話を進めていくとおもっていなかった方向へ進むことがある。
コーチングのつもりで申し込んできていても、カウンセリングの中身をやることがあるのだ。
カウンセリングといっても精神科の医師ではないので、通院が必要なものに関してはやらない。
ただ、前に進もうとしているのに進めない時はカウンセリング領域を取り扱うことが少なくない。

以前、上司と上手く関係を結びたいというテーマでコーチングを受けた方がいた。
上司と意見を交わしあえて成果を出していきたい。そして評価されたい。そういった内容だった。
しかし、話を聞いていくと、
「上司が話を聞いてくれない」
「上司が評価してくれない」
そういう話が何度も出てきた。
口では良い関係を築きたいと言っているが、漏れてくるものは愚痴や不満だった。
一言で片付けるのであれば承認欲求だ。
ただ、人の気持は「承認されたいんですね」と言われてスッキリするものではない。
今クライアントさんが上司との関係で感じていることは過去に起因することが多い。
「過去に戻って、同じような気持ちになった時のことを思い出してみませんか?」
僕は提案した。
賛同してくれたクライアントさんと過去へタイムトラベルを始める。
この旅はどこまで遡るのか分からないミステリーツアーである。
ミステリーツアーと違うのは、クライアントとコーチ、つまり乗客とスタッフのどちらも終点を知らないことだ。
 
不思議なことに、この過去へのミステリーツアーは「現在というスタート地点」と「過去同じような気持ちになった最初の時という終点」だけではなく、途中停車の駅もちゃんと出てくるのだ。この時も、
「この時も同じようなことあったな。あぁ、この会社の時もあった。あー学生の時……」
のようにいくつも自分の人生に同じ路線の駅があったことに気付く。
自分が望んで乗っている路線の電車なら良いのだ。しかし、上手く行っていない時は、乗りたい電車に乗っていないことにすら気付いていない。
過去に途中駅があったことに気付くことで、電車に乗り間違えていたことを発見するのだ。
 
そして、いつしか終点にたどり着く。
この終点が20歳なのか学生の時なのか幼少時なのかはその時にならないと分からない。
この時は胎児の時が終点だった。
 
胎児って、その時の記憶があるものなの?
そう思う人もいるだろう。
世の中には胎児の時の記憶がある人もいるという。
目の前のクライアントさんが胎児の時の記憶を持っているか持っていないのか?
その真偽はどちらでも良いのだ。
クライアントさんが「胎児の時に同じようなきもちになった」と感じているのであれば、それを第三者があーだこーだ判断分析評価する必要はない。
クライアントにとっての真実がそこにはあるだけなのだ。
 
「お腹の中にいるときに、両親が、出来ちゃったけどどうしようかって話していた。自分は望んでここにいる訳ではないのに、なんでそんなことを言うのだろうと悲しかった」
クライアントの頬に涙がつたった。
 
別なクライアントの話をしようともう。
彼女は以前流産をしたことがあったという。
その後再び妊娠をし、出産までいけた。子育てはしっかりやっているが、子どもに愛情を100%注げていない気がする。
話を進めていくと、流産した時の子どものことが気になっているのが分かった。
そこで流産で亡くなったお子さんとお話をしてもらうことにした。
こう書くとスピリチュアルだとか怪しい何かかとおもうかもしれないが、そんなことはない。人間の持つイメージ力を使うのだ。
イメージ誘導をし、彼女目の前に亡くなったお子さんが目の前に天から降りてきてもらう。
 
「生んであげられなくてごめんね」
亡くなったお子さんに伝えたい思いを伝える。
「お母さん、あなたのこと生んであげられなくて後悔しているの。あの時病院に行けばよかったのかもしれない。あの時、夫とけんかしちゃったからストレスになっちゃったのかな。ごめんね」
後悔はいくらでもでてくるのかもしれない。
「でもね、生んであげられなかったけど、あなたがお腹にいた時すごく幸せだった。私のところに来てくれてありがとう」
涙がこぼれていた目もとに笑みが浮かぶ。
「恭平さん」
彼女が僕に話しかけてきた。
「わたし、この子がいなくなってしまったとずっとおもっていたけど、傍にいたって気付きました。ずっとこの子と繋がっていました」
そう彼女は言うと、僕に安心したような表情を向けた。
 
人には、自分だけでは進めない時がある。
それがどんな理由かは分からない。
やり方を変えれば出来ることかもしれない。考え方を変えれば済むことかもしれない。根性で乗り切れる場合もあるだろう。
でも、世の中には過去の自分を癒やさないと進めないこともある。
他人から見たら大したことに感じることもあるかもしれない。
それでも、その人にとっては真実なのだ。
そして、真実は人の数だけある。
僕らは未来へのミステリートレインに乗っている。未来がどうなるか正確に分かっている人はいないだろう。
このことは多くの人が理解し、希望を持ち、諦めている。
ただただ未来へのミステリートレインに乗車している。
しかし、そのまま乗っていくことがあなたにとって正しいかは分からない。
時には下車をし、過去へのミステリートレインに乗ってみてはいかがだろうか?
過去の停車駅に戻ることで、自分が本当に乗るべき未来への列車が見つかるかもしれない。 
 
 
 
***
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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