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銭湯は最高の社交場


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記事:おち ゆか(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
私は、銭湯が好きだ。特に旅行に行くと必ずその土地の銭湯を探して行くことにしている。最近は、スマホであっという間に検索できるようになったので、とても便利だ。
昨年は、大学のスクーリングで数回上京した。東京に疎い私は、大都会東京にこんなにも銭湯があることにびっくりした。泊まった先で『銭湯』と検索すると、数軒出てくることが多かった。仕事でもないので、だいたい、ゲストハウスに泊まることが多かった。最初は、抵抗があったのだが、泊まってみると、水回りもきれいだし、スタッフも親切で、何より一人旅だと経費も安くつくことがわかった。そして、シャワーより銭湯に入ると疲れもとれるような気がした。
東京で銭湯に通いはじめてから、東京のイメージが変わった。東京には縁がなかったこともあり、東京というと、新宿に代表されるようなビルの街というイメージで、人が住んでいる街という印象がなかった。
しかし、銭湯に行くと、おばあちゃんがいて、子どもがいて、おばさんがいる。みんな顔見知りなのか「旅行? どこから来たの?」と聞いてくれる。そして、この辺にはこんなお店がある、とか、夏にはこんなお祭りがある、と教えてもらったりもした。ビジネスホテルに泊まって、そこにずっといたら、地域を意識することはなかったと思う。
そして、若い人たちが、銭湯めぐりをしたり、銭湯で働いていることも知った。たしかに、銭湯って、ちょっとした社交場になっている。地域の人たちの居場所とも言える。お風呂からあがって、瓶に入ったコーヒー牛乳を飲みながら談笑している人たち。「今日は、◯◯さんが来てないねえ」と常連さんを気遣う人たち。
昭和20年代くらいは、まだ家にお風呂がない人が多かったと聞く。もっと多くの家族が銭湯に通っていたんだろうなあと思いを巡らす。この中で、マナーを学び、近所付き合いを学んでいたんだろうな。お年寄りの背中も流し、高齢者を大切にすることも学んでいたのかもしれない。
初めて一人暮らしをした京都で、隣の人すら知らないという暮らしを初めて体験した。
私の田舎では、個人情報の保護という概念などなかった。だから、とても新鮮で、都会っていいなあと思ったものだ。雨が降ったら勝手に洗濯物をいれてくれる、普通に冷蔵庫におすそ分けを入れて行く。そう、その当時、田舎では鍵をかける習慣もなかったのだ。最近は、近所に大きなショッピングモールができ、時々、空き巣が起こるようになったらしく、施錠するようになった。しかし、どこにでもいる噂好きのおばさんがいて、余計なことを言いふらしていたので、ここから早く出たいと思っていた。
少し古いがOECDが実施した2005年の調査で、日本は、「友人、同僚、その他の人との交流が全くない、ほとんどない」と回答した人が、15.3%で、20カ国中1位となっている。そして、私の実家がある中規模な街の校外も、以前のように近所付き合いは行われていない。
「さあ、みんなで集まって交流しましょう」
「みなさーん、困ったことは教えて下さいね」
「困ったときはお互い様です。助け合いましょうね」
こんなふうに声をかけても誰も手を挙げないだろう。
小さな子供の虐待、配偶者への暴力、高齢者や社会的弱者の孤独死。今の日本が抱えている社会的課題である。尊い命が失われている。もし、周りに人が気づいていれば違っていたかもしれない。
銭湯文化が今もあったらどうだろう。服を脱ぐことで開放的な気持ちで周りの人と接することができるかもしれない。
今まで、地元で銭湯に行ったことはなかったが、覗いて見たいと思った。
「銭湯」と検索してみた。何軒か、休業中で営業を辞めていた。そうだよな、仕事が終わるのも遅いし、それから銭湯に行く時間があったら、家で寝たいよなあ。と思った。
もう営業してない銭湯を見せてもらった。あ、銭湯やってみたいな、と思い、家族に相談した、が、予想通り、反対された。確かに、銭湯の経営は一人じゃできない。
私も年を取ったのだろうな。あんなに嫌いだった近所付き合いがあったらいいなと思うようになったのだ。年齢も職業もバラバラの人たちが、1日の疲れを癒やすために、銭湯に来て、お互い、世間話をする。大人が雑談をしている間、子どもたちは、牛乳を飲みながら遊んでいる。古いけど、新しい感じがする。いいなあ、と自分では思う。
友達に話すと、「その良さがわからないわ」そう、人はいろいろな価値観を持っている。私がいいと思っても、そう思わない人もたくさんいる。
でも、銭湯で集まるのって、素敵だなあと、今日も妄想する。
 
 
 
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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