メディアグランプリ

憧れの高級住宅街から家族愛を学ぶ


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記事:松本旺子(ライティング・ゼミ 夏季集中コース)
 
 
わたしは、5年前から、とある高級住宅街に住んでいます。いつか住んでみたいと憧れを持っていた街でありましたが、大学を卒業して、偶然その街で働くことになり、母の友人に職場から適度に離れた距離にあるマンションを紹介していただいたことから、その街に住むことになりました。
大きな住宅が立ち並び、車に疎いわたしでも知っているようなメルセデス・ベンツやBMW、アルファロメオ、ポルシェ、ランボルギーニといった高級車にも日常的に出会う街です。そして、その街の中でも南側に住む人より北側に住む人の方がヒエラルキーが上、というような暗黙の了解も存在しています。住む場所でレッテルを貼るという考え方が息苦しくて、憧れて住み始めたはずなのに、なんだか少し嫌な感じだと感じたこともありました。
ですが、住みはじめてしばらくしてから、わたしの住む街は、本当に家族愛に溢れた街であると気がつくことができました。
そのことに気づいたのは、天気予報を見ずに家を出て、歩いている途中で雨が降り始めた時のことです。傘を買うかどうか迷ったものの、不精をして濡れて歩いていると、後ろから歩いてきた60代くらいの男性が、「これ、あげるよ。風邪ひいちゃうよ」と、ビニール傘を差し出してくださったのです。わたしが驚いていると、「折り畳み傘を持っているから、大丈夫。じゃあね」と言って、颯爽と去っていかれました。そのとき限りのご縁であるわたしに対して、さながら家族のような愛情を与えてくださったのです。そのことがあってから、わたしは、自分が住む街のことをお高くとまった人たちが住む街だと思っていたことを反省しました。
そして、そうしたことは、一度限りではありませんでした。うっかり傘を忘れて外出してしまった時は、必ず、声をかけ、手を差しのべてくださる方がいらっしゃるのです。どこまで行くのかを訪ねられ、行き先を告げたとき、行き先が同じであったり、途中まで同じであったりすると、通りすがりの見ず知らずの方が、一緒に傘に入れてくださるのです。
そもそも、うっかり傘を忘れないように気を付けなくてはいけないのですが、この街に暮らす人たちの心の温かさには毎度感動して、きちんとお返しをしたいという思いに駆り立てられました。それでも、お名前も、住んでいる場所も、連絡先も、何も分からないので、どうにもお返しの仕様がありません。どうしたらいいんだろうと、考えに考えて出した答えは、親切にしてくださったその方でなくても、困っている方がいたら、自分から手を差し伸べたら良いということでした。例えば、自分自身がしていただいたように、濡れて歩いている方がいらっしゃったら傘を差しのべてみたり、物を落としたのに気がついたら声をかけたり、電車で席を譲ったり、といったことです。
それまでは恥ずかしながらあまりそういったことはしてきませんでした。意地悪な気持ちを持っていたというわけではなく、知らない方に突然声をかける事が恥ずかしかったのです。ですが、恥ずかしさを捨てて、自分のできることをして思いを循環させていくことが、親切にしてくださった方たちへの恩返しだと信じています。
わたしが親切を受け取ってお返しをしたいと思って思いを循環させる行動を始めたのと同じように、親切を受けて心と行動が変わった方が、この街にはたくさんいるのでしょう。ひとりひとりが変わることによって、街が変わっていきます。だからこそ、この街には豊かさが溢れているのだと思います。お金という物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさと愛を循環させることで、ますます豊かになっていくように感じています。
この街に存在している北側と南側のヒエラルキーに違和感を感じていたと書きましたが、そもそも自分自身がこの街に住むことにステータスを感じていて住み始めたというのに、ヒエラルキーに違和感を感じるということ自体が矛盾していました。例えヒエラルキーが存在しているとしても、北側には北側の、南側には南側の良さがあります。どちらにもそれぞれの良さがあるのだから、ヒエラルキーというものは、私自身の思いが形作っていたものだったと気づきました。
そして、わたしが最後に気がついたこと、それは、今までたくさんお世話になって甘えてきた家族にも、出来る限りのことをするということでした。この街に住むことがなければ、気がつくのが更に遅くなってしまったことでしょう。義務感からではなく、自然に動いた気持ちから行動をすること、愛を循環させることを、この街に住む人たちから教えていただきました。それまでは、家族の親切を当たり前のように受け取って、好意に甘えてしまっていたのです。気づく順番は、本来反対だったかもしれません。ですが、わたしは、紛れもなくこの街から、家族愛を学びました。愛する街の素敵な部分を、これからも探していきたいです。
 
 
 
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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