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「爪」で動かす心


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:三好香菜美(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「かわいいね〜!」
 
1ヶ月に一度は必ず言われるこの言葉。これは私に対しての言葉ではない。私の「爪」に対する言葉だ。「1ヶ月に一度は」と言ったわけは、私はネイルサロンでネイルをしてもらうのが好きで、月に1度のペースでネイルサロンに通っているからだ。
 
以前は、趣味として、たまに自分でネイルを施していた。プロの資格を持っているわけでも、道具を持っているわけでもなかったので、完成度は素人レベルであったのだが。
 
けれども、私にはネイルを施す理由がいくつかあった。あった、というか、ある。今、私がネイルに凝る理由がある。
 
小さい頃から、私には、ストレスがあると爪を噛むという癖があった。人前で爪を噛むのはさすがにダメだ、と幼いながらにも分かっていたので、人前で噛むということこそしなかったものの、家ではやはり噛んでしまった。ひどい時には寝ている間に無意識に噛んでしまっていて、朝には爪が短くなっている……なんてこともあった。高校生の頃までそれは続いたが、大学生になり、ネイルをすることを覚えてからは、その癖はなくなった。
 
でも、ネイルをする一番の理由はこれではない。「自分に対する自信の無さを、なかったことにするため」これが最大の理由だ。
 
私はとにかく自分のルックスに自信がない。目は一重だし、見た目も標準的な女子より太っている。身長も150センチないし、髪もくせ毛だ。自分の嫌いなところを挙げ始めたらキリがない。
 
高校生までなんて、最悪だった。学校に通う時に着るあの制服とはとても厄介なもので、周りの女子との差をつける要素といえば、本人そのものしかない。背が高めでスリムな子の、制服姿がまあ似合うこと。似合うこと。それに比べて自分はどうか。まるでセーラー服を着た豚だった。鏡に映る自分の姿を見て泣いた夜も、幾度もあった。
 
特に、私には爪に対するコンプレックスがあった。噛み癖も相まって、深爪でないと落ち着かなかった私の爪は、ピンクの部分がかなり短くなってしまっている。爪を伸ばしたとしても、周りの女子のようにすらっと綺麗な爪先にはならず、それが物心ついた時からの悩みだった。
 
しかしまた、そんな私の曇った心を晴らしてくれたのが「爪」だ。
 
やっと制服の呪縛から解放された大学生。私はファッションに興味を持った。他人に認められたい、そんな承認欲求から始まった興味であった。他人に評価されるには、一番最初に目につくファッションを変えるのが手っ取り早い。そう思い、洋服に髪型にと、次々に個性的なものに変えていった。
 
その変化の中で、ファッションの一環として、もちろんネイルにも興味を持った。大学生になったばかりでお金もあまりなかったので、まずは100円均一で道具を揃えた。ただ単に一色を乗せるのではなく、ネットで見つけたかわいいデザインを真似て、ひと癖あるものにした。
 
すると、手元は人の目につきやすいのか、周りから「かわいい!自分でやったの?」とたくさん聞かれるようになった。洋服はいくら組み合わせを自分で考えたとしても、洋服自体は既製品だ。しかし、自分で施したネイルが褒められるというのはとても心地が良かった。コンプレックスだったものが気にならなくなる、そんな魔法を発見した瞬間だった。
 
それを続けていると、不思議なことに、自分のルックスに対して悩むことがあまりなくなった。他人よりルックスが劣っていようが、自分にもできること、いや、自分にしかできないことがあって、それが自分の強みだと素直に感じられるようになったからだ。
 
「爪」が私の自信の無さを、なかったことにしてくれた。
 
社会人になりお金にある程度余裕ができてからは、自分でネイルを施すということはなくなった。しかし、その代わりに月1でネイルサロンに通っている。それでも毎回、デザインは事前に自分で考え、それを再現してもらっている。
 
それはもちろん、自信の無さをかき消してくれる。でも今では、それだけではない。仕事が辛くても、「明日仕事を頑張ったらネイルデザインを変えに行ける!」そんな活力にもなっている。
 
コンプレックスだった「爪」が私の心を動かしている。
 
もし今あなたが何かにコンプレックスを感じて自信を無くしているとしたら、なんでもいい。一つ、自分の手で何かを施してみてほしい。もしかしたらそのコンプレックスが、あなたの心を動かすモーターになり得るかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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