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今日のライブはペパーミントのちラベンダー


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今日のライブはペパーミントのちラベンダー
記事:塚井綾(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
チケットを発券したときは、こんなことになると思っていなかった。
 
・sumika Arena Tour 2020
・LINDBERG 30th Anniversary Tour
・SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020
・SEKAI NO OWARI DOME TOUR 2020
 
タンスの引き出しには、今年行くはずだったライブのチケットが眠っている。
今のところ振替公演の予定は未定だ。
「SEKAI NO OWARI」に関しては、ついに公演中止の連絡が来てしまった。
2020年がこんな年になるとは思わなかった。
私にとって、ライブはアロマテラピーのようなものなのに。
 
中学2年生の夏。あのミュージシャンとの出会いは偶然だった。
なんとなくラジオをつけたら、透き通るような歌声が流れて、すっかり魅了されてしまったのだ。
最初はラジオやCDを聞くだけで満足だった。しかしだんだんと「いつの日かライブに行って直接声を聞いてみたい」と思うようになっていた。
 
高校生になった。ライブに行ってみたい気持ちはあるものの、部活動に明け暮れていた。
休みは水曜だけ。土日は試合や遠征もある。バイトどころではないし、ライブへいくお金なんて逆立ちしても出てこない。
頑張ったところで、VHSのライブビデオを中古で買うのがやっとだった。
 
大学生になった。合格した大学は、東京都八王子市の多摩自然丘陵公園の中にあった。
親に一人暮らしをさせて欲しいとお願いするも却下され、自宅から通うことになってしまった。片道2時間半もかかる。
1時間目に間に合うためには、朝6時台の電車に乗らなければならない。
大学の授業とバイトの毎日。今度はお金より時間がない。
買い集めたCDをウォークマンに入れて、通学時間に聞くくらいしかできなかった。
 
社会人になって数年たった頃、ようやくお金も時間も自由になった。満を持して念願のライブへ!
のはずが、今度は全くチケットがとれない。先行抽選販売は外れるし、一般販売は電話もネットもつながらない。
チケットを手に入れるのは、こんなにも難しいことなのか……
ライブに行くことは半ば諦めかけていた。
 
そして結婚し、子どももできた。
「そういえば昔から大好きなミュージシャンがいるんだけど、ライブに行ったことはないんだよね。どうせチケットとれないし、CD聞くだけでいいかなって思って」
そうつぶやいた時、背中を押してくれたのは夫である。
「そんなに好きなら行ったほうがいい。諦めないでチケット狙ってみなよ」
 
そして再び、チケット探しに奮闘する日々。
何事も諦めずにやってみるもので、くじ運の強い夫の協力もあり、なんとかチケットを手に入れることができた。
会場はNHKホール、三階席の端っこだった。インターネットで座席の位置を調べると、ステージからかなり離れている。
それでも初めてのライブだ。当日までドキドキがとまらない。
 
ライブ当日。照明がおち、幕があがった。
肉眼でやっと見えるか見えないか、米粒くらいの大きさ。確かにそこから発せられた声は、空気を揺らし、私の身体を震わせた。
自然と涙がこぼれた。
あのときラジオで流れたのと同じ、透き通るようなハイトーンボイス。なんとも言えぬ爽快感。
 
それからしばしば、そのミュージシャンのライブへ行くようになった。
その時はスタンディングライブで、ミュージシャンの表情が肉眼で分かるくらい、近い場所にいた。
ファンクラブ限定ライブではプレゼント抽選会がある。ミュージシャンがステージで、箱から会員番号と氏名が書かれたカードを引くのだ。
 
そこで奇跡が起こる。
SPITZのボーカル、草野正宗さんが私の名前を呼んだのだ。
 
「会員番号xxxx 塚井綾さん」
「は、はいっ!!」
「元気がいいね〜、おめでとう!」
きっとステージからも、こちらが見えているはず。頭がしびれて体の熱が一気に上がる。
プレゼントはメンバー全員のサイン入りピック。
中学2年生のときから考えると、それはまるで夢のような時間だった。
 
あるビジネス誌で、今後は「リアル」の価値が上がっていくという記事があった。本当にその通りだと思う。
例えば遠距離恋愛をしていたとして、電話で声を聞いたり、パソコンで画面越しに会ったりするだけで満たされるだろうか。
そんなことはない。直接会って触れ合いたいと思うはずだ。
 
ライブも同じだと思っている。
場所や時間から開放されるデジタル配信は、確かに便利だ。
それでもリアルなライブはなくならないし、価値は変わらない、いやむしろコロナ禍によって価値が高まっていくのではないかと思っている。
 
そう、私にとってリアルなライブはアロマテラピーと同じなのだ。
アロマテラピーとは、「エッセンシャルオイルの香り」で心と体のリラックスやリフレッシュを促す自然療法。
リアルなライブは、「生の音と空間の共有」で心と体を震わせ感動を呼ぶ。
両方ともデジタルでは再現が不可能だ。
 
いまはコロナの影響で、ミュージシャン、イベント事業者やスタッフにとって、非常に厳しい状態が続いている。
だから、たとえ手元のチケットが公演中止になったとしても、払い戻しはしないつもりだ。
いつかまた、あなた達の創るリアルなライブ空間で、たくさん元気をもらいたい。
そのような日常が戻ってくることを心から願っている。
≪終わり≫
 
 
 
 
***
 
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2020-08-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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