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「海の家」がない、2020年の夏模様


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記事:中村 光昭(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今夏、鵠沼海岸には「海の家」がない。広い砂浜に海遊びの人達がパラパラといる状況。
 
例年、7、8月の海水浴シーズン、江ノ島を望む鵠沼海岸は個性的な「海の家」が建ち並び、若者、家族連れで賑わっていた。近年はテレビ局、アパレル企業、ネット企業など大口スポンサーの豪華な「海の家」の出店もあり、お洒落な人気スポットとなっていた。
 
朝、ビーチに到着すると呼び込みのお姉さん、お兄さんに声をかけられる。「そこの綺麗なお姉さん、ロッカーあるよ、何時間でも休憩できるよ」年々減少する海水浴客争奪戦の風景である。元気なイケメンや美女の呼び込みバイトを雇って集客する。短期勝負の「海の家」戦略。真っ黒な輩が吸い込まれることを言葉は悪いが「ゴキブリホイホイ」と勝手に呼んでいた。
 
夕方になると、飲んで騒いでの飲み屋街さながらの風景に一変する。その時間になると出没してくるパリピーも多く、「海の家」はエネルギーに満ち溢れていた。音楽に合わせ体を揺らし、水着でシャンパンをラッパ飲みできるのは「海の家」ならではである。
 
夜になると盛り上がりもピークになり、大騒ぎ。飲み疲れた酔っ払いが男女問わずその辺に転がって寝ていることもある。夏なので外で寝ても風邪はひかないし、車に轢かれることもない。気持ち良く寝むれる。目が覚めるとそこには星空が広がっている。これこそ自然体である。
 
近隣の住民は治安が悪いとか、騒音がうるさいとか苦情を言う人達もいるが、私は許容範囲だと感じている。最近、ネットに引きこもり、誹謗中傷している人達が問題になっているが、外で騒いでいる彼らの方が目に見えているので安心である。度が過ぎれば制止することができる。警察は常駐しているし、マッチョな自衛団もいる。
 
今年はコロナの影響で全国的に海水浴場を閉鎖している自治体が目立つ。藤沢市もその一つだ。オープンスペースの「海の家」の閉鎖はウィルス感染防止にどれほど効果があるのか疑問ではあるが、リスクは最小限に抑えたい行政の対応だから仕方がない。
 
海水浴場閉鎖ニュースがでた時は「今年は寂しい夏の風景になるな」と思っていた。
 
そんな様変わりした2020年のビーチは「砂浜と海」自然からの提供物のみで楽しむ海遊びの場となっている。だがこれが一味違ってシンプルで良い面もある。「海の家」という構造物がないから、砂浜が広い。どこからでもビーチ全体を見渡すことができるようになった。訪れる人もなんとなく開放的にみえる。
 
例年だと「海の家」滞在を目的にして、海で泳がない人達も多いが、今年は違う。「海の家」がないからビーチに放り出される。砂の上で過ごすしか選択肢はないが、暑いので海に入らないと長時間じっとしていられない。みんなが海に入る。海水浴という本来の目的に回帰した。
 
もう一つ例年と違った光景がある。強い日差しの下、海岸の広いエリアでサーファーがのんびりと波待ちをしている。毎年、夏シーズンはサーフィンエリアがビーチの端に追いやられていた。それが今年は限定エリアが解除。広々とサーフィンを楽しむことが可能となった。サーファー天国と化したのだ。サーフィン教室も海岸正面エリアで開催されている。鵠沼海岸は初心者からプロレベルまでが混在してサーフィンを楽しめる特徴がある。混沌として危ない状況だが、案外衝突しないもんだと感心する。
 
鵠沼海岸にはビーチ以外にも芝生エリアがある。「海の家」がないため、視界を遮るものがなく砂浜と海が見渡せる。海風もダイレクトに吹き込むため心地よい。芝生の上なので砂浜に比べ多少地面の温度が低い。ビールを持ち込んでのんびりと波の音と風の音を堪能できる。注意しなければいけないのは急降下でおつまみを持ち逃げするトンビぐらいだ。
 
特に夕暮れの時間はそこにいるだけで心が休まる。イヤホンを外し、日が暮れていくのを何も考えることなくボーッと眺める。自然とマインドフルネス状態になる。そして訪れるマジックタアワー。日の入りとともに空の色がオレンジ、赤、青、紫などとても文字では表現できない複雑な配色となる。
 
1人で夕日を眺めている人は他人を寄せ付けないオーラを放っている。誰にも邪魔されず自分の時間を楽しむ。そんな人達が一定の距離を保ち座っている。それぞれの人にそれぞれの時間、それぞれの人にそれぞれの人生。抱えているものは違う。この時間は抱えているものから解放してくれる。特に複雑化した社会で息苦しく生きている人は海からくる綺麗な空気を肺に思いっきり吸い込んでみてはと思える。
 
人工的な建造物やサービスがなくなった事で、今夏の鵠沼海岸は俗化されることなく自然回帰した。世の中は経済活動、行動が制限されている状況となっている。良い機会なので、ありのままの自然体でいるシンプルな生活を受け入れてみてはどうか。無理に何かしようとしなくて良い。
 
「自然に還れ」ジャン=ジャック・ルソー
 
海からの風、空気は混じりっ気なし澄んでいる。五感を研ぎ澄ましてみる。肌から、鼻から自然エネルギーが吸収され新しい力が宿るだろう。
 
「今日も富士山が綺麗だ」
 
 
 
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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