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「あおいそら」 「しろいくも」


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:先田 英展(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
単純明快にしてとてもシンプルなその言葉に、当時の私は、とても胸が踊ったのを憶えています。今思えば、その有り余る行間の隙間に沸き起こる実際の、青い空に浮かぶ白い雲のイメージ。青い空はどこまでも澄み切った光り輝く世界で、白い雲はモクモクと湧き上がる入道雲で、自由で力強く、暖かく、優しさに溢れている。その雲と自分を照らし合わせて、これからの人生が、光り輝く世界で自由であって欲しいと願ったのかも知れない。
 
今も小学1年生の初めの国語の授業は、そこから始まっているのでしょうか。
 
小学生の頃の私は、山間部を開発した住宅街(といっても10軒ほど)のところに住んでいて、学校までは片道徒歩で1時間くらい掛かっていました。ですので小学校に通うようになるまでは、その、自分が住んでいた周辺と近所の子供たちとの関係が私の世界の総てでした。私が一人で遊びに行ける範囲が私の世界の総てでした。家の裏は山だったので、というか山間部にある町なので、もちろん自然はいっぱいでした。その中で充分に遊び尽くしました。さすがに山の中に子供たちだけで行くのは危険、迷子になったらどうしようと思ったので、そうそう山の中に行くことはありませんでしたが、近くで昆虫採集をしたり、泥だらけになったりもしました。
 
今思い出して感慨深いのは、田んぼも近くにはいっぱいあったからか、梅雨が始まると、夜に、カエルの合唱が始まりました。一匹が鳴き出すとそれにつられて他のカエルも鳴き出して、辺り一面でカエルが合唱するのです。夏には自分の見つけた蜜が湧き出ている秘密の木に、毎朝、カブトムシやクワガタが、その蜜を食べに来てないか確認するのが日課でした。そしてカブトムシやクワガタを捕まえて、どれが一番かと友達と競いあいました。秋には赤トンボが辺り一面にやって来るので、隣の家の白い壁にびっしりと赤トンボがとまっていて圧巻でした。そのトンボを一匹捕まえて、尻尾に糸を結び散歩させるのも楽しかったなぁ。冬は雪が積もります。その住宅街に麓から来るには、そこそこ急な坂があって、冬にはその坂も凍ってしまうので、車が登って来るのも大変でした。
 
そんな世界に居たのですが、冒険だと思ったのは、隣の町に行くことでした。犬や猫のようにテリートリーを感じていたわけでは無いけど、ロールプレイングゲームのマップのように、自分の行動した範囲は明るく地図が解るかのようになっているけど、その先は真っ黒で何が有るのかわからなかったのです。だから時々「今日はあそこまで行ってみるぞ!」と冒険して、心の中の地図を広げていったのです。
 
ですが小学4年生の時、親の仕事の転勤で東京へ引っ越すことになったのです。今まで住んでいた世界から離れることの悲しさより、新しい世界に行けることに心が躍りました。その当時は釣りも好きだったので、東京での釣り情報を本で買って調べました。多摩川や江戸川、東京湾のことなど何が釣れるか、竿は、道具は、と毎日そのことばかりを考えていたのを今でも憶えています。そして実際に引っ越して来た時思ったのは、マンション群の夜の照明の明るさに、「え?お祭りでも有るの?」とびっくりしていました。しかも毎日そうだなんて信じられなくて眩しかったのを憶えています。
 
その後、自分の地図はどうなったのでしょうか?
その引っ越した時に何処かに忘れて来たのでしょうか?
分からなくなったのは確かです。
何が見えて、何が見えてないのか。形が変わっているのか大きさはどうなのか。
そしてインターネットが普及して、スマホもみんな持っているし 、多次元的に繋がったり離れていたりして、地図も一枚の平面上ではなくて、もしかしたら立体かも知れないし、折れ曲がったりするのかも知れません。
確かめる必要があります。自分がどこに居るのか。
それをなおざりにした為、とても孤独を感じたこともありました。
 
中学生の時は、バレーボール部に所属し、身体が小さいながらも毎日練習に明け暮れました。その顧問の先生がとても厳しい方で、今で言う、体罰は日常茶飯事で、当時はそういう先生ばかりでしたが、その当時は、それが勿論、嫌なことではあったが、それで部活を諦めるのは、納得がいかないと踏ん張っていました。何であの時辞めなかったのだろうか?と今は思いますが、その時はそれが私の世界の総てだと思っていました。
 
それから恋をしたり、音楽を始めたり、バイトを色々やったり、就職したり。
さてさて自分の地図はどうなったのですか?
もう必要無いのですか?
そんな時に思い出したのです。
 
「あおいそら」 「しろいくも」
 
無心になって暑い夏の空を見上げるのです。
どこまでも純粋でシンプルで清浄な世界。
結局、自分が求めていたのは、そういう世界なんだなぁって。
自分の地図のその上に広がっている世界。
光り輝く自由な世界。
 
コロナが終息したら探しに行こう。
そこに経ち帰るのです。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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