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調達先分散、その先に潜む罠


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記事:やまぐちりょう(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
ここ半年ほど、コロナのニュースが中心で、取り上げられる時間は少ないものの、
貿易問題が深刻だ。
経営コンサルタントとして働く身としては、少し不安を覚えるほどだ。
 
特に今年の初頭から続く米中貿易摩擦は、企業のサプライチェーンに大きな影響を与えている。
今回は企業のサプライチェーンが抱える課題についてみてみたい。
 
皆さんもご存じの通り、原材料の調達から販売まで、すべてを自社で完結できるような企業は稀だ。
ほとんどの企業が、別の企業との取引関係の上で、自社のビジネスを行っている。
 
トヨタ、日産といった自動車メーカーであれば、
多くの部品メーカーから部品を納入してもらう必要がある。
これらの取引先がなければ、自動車メーカーは自動車を製造できない。
 
では、ある部品メーカーの工場が地震などで被災し、部品の納入をできなくなった場合、どうだろう。
その部品は、被災した工場でしか作れないとすれば、
一つの部品が作れないだけで自動車の製造がストップしてしまう事態に陥る。
 
こういった事態に備えて、自動車メーカーは調達先を分散する取り組みを行っている。
複数のメーカーから同じ部品を調達する、あるいは同じメーカーから調達する場合でも複数の工場で生産してもらう、といった具合だ。
 
特に、東日本大震災を契機に、事業継続計画の策定が進み、
調達先を分散する取り組みが加速したように思う。
 
実際に、近年も地震や豪雨災害などである地域の工場が操業できなくなってしまうケースもあるが、
大企業のサプライチェーンに甚大な影響を及ぼすケースは稀になってきている。
 
しかし、近年発生している貿易摩擦は、”調達先の分散”だけでは対応できないサプライチェーンの課題を浮き彫りにしているように思える。
 
この課題を具体的に見ていく前に、身近な”連絡手段”を例に考えてみたい。
もし、今あなたが離れた場所にいる友人に連絡を取るとすれば、どんな手段があるだろう。
 
年代や使用している端末にもよるだろうが、LINEのようなコミュニケーションアプリ、FacebookのようなSNS、そしてメール、電話などが一般的だろう。
 
連絡手段の多様化は、ここ10年ほどで急速に進んだ。
一つのきっかけは東日本大震災だ。
 
東日本大震災の発生直後、携帯電話会社の回線がパンク状態となり、
電話はおろか、メールも十分に通じない状況だった。
 
この状況を受けて、急速に広まったのがLINEだ。
インターネット回線を使うため、非常時にも連絡が取れなくなる心配が少ない。
東日本大震災をきっかけに、連絡手段の分散、多様化が進んだのだ。
 
また、FacebookのようなSNS、Gmailなどが浸透したことで、
仮にスマートフォンをなくした場合でも、パソコンからログインすれば、連絡を取ることもできるようになった。
 
では、本当に我々は緊急時にも問題なく誰かと連絡を取ることができるだろうか。
 
……
 
よく考えてみると、どんな連絡手段も、”電力”に依存している。
つまり、非常時に電力の供給が滞ってしまえば、連絡手段が断たれる可能性がある。
(もちろん、スマートフォンやパソコンの充電がもつ限り、連絡は取れるが)
 
このように、実は分散、多様化して冗長性が確保されているように見えても、
実際にはその分散や多様化を無効化する要素が潜んでいることがある。
 
これは企業のサプライチェーンにおいても同様だ。
先ほど述べたように調達先を分散しているつもりでも、
実際には一つの企業などに依存してしまっているケースがある。
 
こういった、全体に影響を及ぼすポイントのことを、チョークポイント(要衝)と呼ぶ。
もともとは地政学上で戦略的に重要となる場所を指す専門用語だ。
簡単に解説しておくと、戦略目的を達成する上で兵力などがどうしても通過しなければならず、その通行路が狭いなどの理由で、わずかな兵力や妨害によって容易に通過が阻止されてしまう場所のことだ。
 
具体的に言えば、重要な輸送路、運河や交通経路上の渓谷、橋梁などがあたる。
 
さて、話をサプライチェーンに戻そう。
例えば、自動車メーカーが部品の調達先を分散していても、
部品の原材料がある特定の国で産出される資源に依存していたとする。
 
仮に貿易摩擦などの影響で、その国が原材料の輸出を止めてしまえば、
途端に部品の供給がストップしてしまうことになる。
 
このように単純な例であれば、自動車メーカーはリスクを特定し、対策を打つことができる。
しかし、現実の取引関係は複雑化しており、自社のサプライチェーンをすべてさかのぼってリスクを特定するのは困難を極める。
 
その中で、貿易摩擦によって輸出入の停止などが起こった場合、
サプライチェーン上で想像もしない影響が出てしまうのだ。
 
実際に、アメリカがロシアの金属大手に対して制裁を発表したが、
その制裁を行うと欧州の自動車産業をマヒさせるものであった、というケースもあった。
(制裁発表後、そのリスクが指摘されたために制裁の内容は修正された)
 
先ほど述べたように、サプライチェーンに潜むリスクを完全に把握するのは困難を極める。
しかし、自社の事業にとって甚大な影響を及ぼす部分については、
表面的な調達先の分散に留まらず、サプライチェーンをさかのぼってリスクを特定し、
対処する取り組みが求められるだろう。
 
コロナだけに気を取られず、自社のサプライチェーンのリスクにも改めて目を向けるきっかけとなれば幸いだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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